プロローグ
……。
私はXデーを前に興奮する動悸を必死で抑えていた。シアン化ナトリウムを見ていると心が落ち着いていくのがわかる。ネズミを使った動物実験は成功した。この化学式なら必ず人間でも成功するはずだ。私は念のためにもう一度机の上に置いてあるレポート用紙をまくり計算を始める。うん。問題ない。次に、もう一人の殺し方だ。
私の頭の中で、“その時”の状況をシミュレーションする。二人目を殺すのは時間との戦いだった。何かが狂えばそれだけで計画に支障をきたす恐れがある。一人目の殺害は多少、誤差が生じても計画に変更はない。だが、二人目となるとそうはいかない。あそこなら、あれを使えばあそこまで着くのに時間は十分かかる。あれを使って短縮すればおよそ二分だ。
大丈夫……いける。いける。
私は胸に手を置き、何度も深呼吸した。そして、カレンダーに今日の日付にばつ印を付ける。
待っていろ……。
私はお前らを絶対に許さない。
どんなことがあっても、お前らを殺す。
そして、その準備は整った。
あとは時が来るのを待つだけだ。
落ち着け……。まだ堪えるんだ。
私は地獄からお前らを裁くために来た死神。
必ず死の制裁を下す。情状酌量の余地などない!