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王国のド田舎出身の魔術学院生は魔法使い?  作者: 甘野 三景
序章 ド田舎から王都へ
2/6

魔物の群れ

遅くなりましたが、第2話です。

戦闘描写難しいですね……その辺が一番難儀しました。

とはいえ、うまく書けてるなんて全然思えないのですが……


本作品はまだまだ技量が足らず、稚拙な物となっているかもしれませんが、頑張って書いてみましたので、楽しんで読んでいただけると作者は大変嬉しいです。


※王女が郁斗に興味を持つ理由づけの部分を修正しました。


それでは本編へどうぞ。


 俺と桜の2人は、バイクに跨り、村から15分程の地点のルーレティアへと続く平原の上を走っていた。

 すると、遠くに砂埃が激しく舞う場所があり、その中にちらちらと魔物の群れと戦う騎士の恰好をした人たちと車輪が破損した竜車が見えた。


「――っ! おい桜っ! 向こうに見えるあれ、わかるか!?」

「うん! 魔物の群れと戦ってる人たちがいるよ!」

「くそっ! やっぱりそうか……悪い桜、とばすぞっ!」


 あーくそっ! なんでこんなとこに魔物の群れなんかが居やがるんだよっ!

 だだっ広い平原だぞ!?


「うんっ! イクトくん急いでっ!」

「わかってるっ!」


 そう言いながら、俺は大量の魔力を体から放ち、その全てをバイクへと注ぐ。

 供給された魔力によって徐々に加速し始めたバイクは、その黒い車体に薄っすらと魔力の淡い光を纏い、土煙を立ち上げながら平原を突き進む。

 体から大量に魔力が消費されていくが、そんなものは関係ないといった必死の形相でバイクを操り、全速力で移動しながら魔物の群れの方へと進路をとる。

 

「桜、悪いがこのまま突っ込むぞっ! しっかり掴まってろ!」

「えぇ!?」


 加速したままの勢いを保ちつつ、俺は問答無用と言った感じで魔物の群れへと突貫する。


「ぶっ飛べ魔物どもっっっ!!」

「いぃぃやぁぁぁあ!!」


 魔物を蹴散らさんと叫ぶ俺。

 突っ込む恐怖のあまり叫ぶ桜。

 

 そのあまりの絵面に、魔物も人も、時が止まったかの如く停止していた。

 ……その直後。



 ドゥゥゥゥゥンッ!!!!!!!



 バイクと魔物が衝突した音にしては、おかしな音を平原へと響かせながらバイクは役目を終え、淡い光と共に魔力へと還る。

 魔物は血飛沫をあげ宙へと浮かびながら、落ちるとともに幾つかの肉片となり、辺りへと散らばる。


 その衝突の直前、桜を抱えて飛び降りた俺は、トンッと軽い音を立て地面へと着地し、桜をそっとその場へと降ろした。


「そこの人たち、大丈夫か! 助けに来たぞっ!」

「うぅ……び、微力ながら助太刀します!」


 周りを警戒しつつ、戦っていた騎士たちに言葉を投げかける。

 桜は若干先程の突撃の恐怖心が抜けきっていない様子で、俺の傍で軽く縮こまっている。

 そんな俺たちに返事をするべく、唖然とした表情を見せ固まっていた騎士たちの内の一人が活動を再開する。


「――っ! 助かる! 申し訳ないが、そちら側の"オーク"を頼めるだろうか!? こちら側は我々で相手をする!」


 騎士の男は、自分たちとは逆の竜車の左側に群れを成すオークたちを指さした。


「あいよっ、 任せなっ! 終わったらそっちに加勢する!」

「すまない、助力感謝する!」


 軽く頭を下げた後、他の騎士と共に、彼は残りのオークの元へと向かう。


「それじゃいくぜ、桜」

「うん、援護は任せて!」


 そして俺は、持ってきていた長細い袋を開け、中身を取り出す。

 そこには、黒い鞘に桜の花弁を象った紋様が描かれた、一振りの……反りが入った刀があった。


 さーて、蹂躙してやるかっ!



「「「「「ガアァァァァアアアアア!!!!!!」」」」」



「おうおう、威勢がいいじゃねえか……桜、頼む」

「うん、いくよ! "我が魔力の本質は風。 我が魔力により、彼に風の加護を与えよ" <身体強化ヘイスト>」


 詠唱が終わるとともに、俺の体の周りに緑色の淡い魔力の光が立ち昇る。


「うし、さんきゅ桜。……さあ行くぜ、雑魚ども。 すぐ終わらせてやる。 ――"一の太刀 桜花おうか"」


 身体強化ヘイストの魔術により速度が上昇した俺は、吠えるオークの群れへと目にも止まらぬ速さで移動し、擦れ違いざまに一瞬で六度の斬撃を放つ。



「「「「「グギュアァァァァ・・・・・・・」」」」」



 と、オークたちの断末魔の叫びが平原へと響き渡った。

 

 俺の放った斬撃により、オークたちは細かな肉片へとその姿を変え、辺り一面には、まるで散った桜の花弁の如くオークの血と肉片が撒き散らされていた。



 「ガァァアアアアア!!!!!!!!」



 討ち漏らしたオークが一体、血走った眼をしながら叫び声を上げ、手に持っている剣を俺に目掛けて振りかぶる。


 その瞬間、


 ――キィィィイイイン


 と、耳をつんざくような不快な金属音が鳴り響き、俺の振るった刀がオークの剣を断ち斬る。

 そして、手ごたえがないとわかったオークが自分の剣を見て唖然とする中、俺は即座に刀を振るいオークをただの肉塊へと変える。

 その様を見た他のオークたちは、"こいつには敵わない"とでも思ったのか、無防備に背中を見せ、無我夢中と言った様子で一心不乱に俺から距離を取るべく走り出す。


 もちろん、そんな奴らを俺が見逃すはずがない。

 一度刀を振り血糊を落とすと共に納刀し、抜刀の構えのまま奴らの後を追う。

 

「グギャ、グギャギャギャアアアアア!!!!!」


 そんな汚い叫び声を上げながら逃げ惑うオーク目掛け、俺は抜刀と共に技を放つ。


「いい加減死ね。 有象無象共がっ!!!!! ――"二の太刀 迅雷じんらい"」


 逃げ惑うオーク共の間を、高速で縫うように移動しながら抜刀納刀を繰り返し斬撃を放つ。

 雷鳴の如く激しい剣戟の音と共に、斬り刻まれたオークの体は宙を舞った。

 俺がオーク共の大半を斬り刻んだ時、当たり一面には肉塊となったオークが、そこらにある砂利の如く存在していた。


 そして、討ち漏らしがない事を確認すると、騎士の男たちの元へと駆ける。


「こっちは終わった! そっちに加勢するぞ!」

「――っ! すまないが、馬車の後方に近づくやつらを頼む!」

「了解だ。 ――"三の太刀 旋風(せんぷう"」


 抜刀と共に、まるで半円を描くように放たれた斬撃は、オークたちを斬り刻みながら物言わぬ肉塊へと変え、周囲へと吹き飛ばす。

 未だ生存しているオークは、先程逃げようとした奴らと同じく、俺に背を向け走り出そうとしていた。


「はぁ……めんどくせぇなあ!!! 逃がすわけ、ねぇだろうが!!! ――"創造デミウルゴス神器アームズ全開放リミットオフ一斉掃射ジャッチメント"」


 ――ズガガガガガガガガガガガッ!!!!!!!!!!!!!!!!


 そう言った俺の頭上には、創造した"神器"たちが各属性の魔力の光を纏い、轟音と共に、背を向けて一目散に逃げていたオークたちへと流星の如く降り注いだ。


 降り注ぐ神器の音が止み、戦闘によって荒れた平原が静けさを取り戻した頃、役目を終えた神器たちは光を失い魔力へと還り、その場には細かな肉片となったオークたちで埋め尽くされていた。


「うし、なんとか片付いたか」

「え、ええ……」


 先程の惨劇のせいで引かれてしまったのか、騎士の彼の表情からは困惑の色が見え隠れしていた。


「んん!! 申し訳ない。 君たちが加勢のおかげで助かりました。 我々だけでは、あの数のオーク共を退けるのは困難だった。 本当にありがとう」


 彼は咳払いと共に気持ちを切り替えたようで、心底安堵したような表情を見せながら、深々と頭を垂れる。


「いや、困ったときはお互い様ってやつだ。 気にしなくていいさ」


 そう言い、俺は軽く笑い返しながら言う。

 その直後、車輪が壊れた竜車の中から煌びやかな服を身に纏う、俺たちくらいの歳に見える綺麗な女性が出てきた。



「……シグルト。 剣戟の音が止みましたが、オークたちは倒せたのですか?」

「――っ! 申し訳ありません、姫様」


 そう言い恭しく頭を垂れ、シグルトと呼ばれた若い男は地面に膝をつき、臣下の礼を取った。


「報告が遅くなりましたが、オーク共は我々と、こちらにいらっしゃる彼らの助けにより、全て殲滅いたしました」

「そうですか、ご苦労様でした。 下がっていただいて構いませんよ」

「はっ! 失礼いたします」

「それで……あなた方が私の騎士たちに手を貸してくださったお方なのですね?」


 先程、シグルトが"姫様"と言っていたことから、郁斗たちも頭を垂れて臣下の礼を取る。

 そして、少し恐縮した様子で、郁斗は"姫様"と呼ばれた美しい女性へと返事をする。


「は、はい。 移動中、戦闘しているのが目に入った為、助太刀させていただきました」

「ふふ、そんなに畏まらなくても結構ですよ? 助けていただいたのです。 恩人にそのような真似をさせてしまっては、王族に名を連ねる者として、民に顔向けできませんからね。 シグルトたちも……わかりましたね? 」

「はっ! 承知いたしました!」


 胸を張り、右手を心臓の前辺りに当てながら、シグルトはそう答える。


「え……っと、ですが……」

「ふふふ、そんなことを言われてもすぐにはできませんよね。 申し訳ありません……あぁ、自己紹介をしていませんでしたね。 私は、アルファリア王国第3王女、"アリア・フォン・アルファリア"です。 あなた方のお名前を伺っても構いませんか?」

「は、はい! 私は桜咲郁斗といいます、王女様。 それから、こちらは……」

「雪白桜といいます、王女様」

「そうですか。 改めてお礼申し上げます。 イクトさん、桜さん、この度は我々の危機を救っていただきありがとうございました」


 たぶん、身分に関係なく真摯に向き合おうとする人柄なのだろう。

 そんなことがひしひしと伝わるような態度で、深々と頭を垂れるアリア王女。


「いえ、そんな、俺たちは当然のことをしたまでですから! 頭をお上げになってください!」

「そうです! 私たちに頭なんか下げなくて大丈夫ですから!」

「ですが……」

「「いえ、本当に大丈夫ですので!」」





「――あっ! やばい! 桜、もうそんなに時間がねぇぞ!」


 俺は列車の時間のことを思い出し、懐に忍ばせていた時計を見て顔を青くする。

 桜は時計を横から覗き込み、次第にその表情が焦りの色を帯び変化していく。


「え!? あ、ホントだ! ど、どうしよ!?」

「全力でカッ飛ばせばなんとかなる! いや、間に合わせてみせる! 行くぞ、桜!」

「う、うん! あ、あの、すみませんが先を急ぐのでこれで失礼します!」

「え? え? あ、あの!」


 突然の俺たちの変化に驚きと困惑の表情を見せる王女を置き去りにし、俺は詠唱を始める。


「"我が力の本質は創造。 我は魔力を用い全てを創り出す者。 我が魔力を糧に顕現せよ!" <異世界のバイク> よし! 準備できたぞ、桜! それじゃ、すみません王女様。 失礼します!」


 そうして、慌てた様子の俺たち2人を乗せたバイクは、逃げるようにしてその場を離れていく。





「もう……もう少しお話したかったのに」

「仕方ありませんよ、姫様。 彼らはどうやら急いでおられたようですし……」

「そうですね。 さすがに助けていただいた上、さらにご迷惑をおかけするのも気が引けるというものですから、今回は素直に諦めましょう。 ……そもそも、あれでは追いつけませんし」

「え、ええ。 そうですね……それにしても彼は何者だったのでしょう? あの若さであれほどの技量。 我々騎士の中にも、あれほどの手練れはそういません。 許されるなら、彼を騎士として迎え入れたい程でした」

「あなたがそれ程までに他人を褒めるなんて珍しいですね? ふふふっ、なんだか興味が湧いてきました! もしもう一度会う機会があったら、その戦いぶりを見てみたいものです! それに先程の黒い乗り物。 詠唱後に、具現化したということは、魔法を使ったということで間違いないでしょうし……ふふふっ。 なんだか、次に会うのが楽しみになる方ですね!」

「……これは私の勘ですが。 おそらく、彼とはまた近いうちに出会う気がします。 そう遠くない内に」

「ふふ、あなたの勘は当たると評判ですし、期待できそうですね。 それなら、今度お会いした時には、先程の乗り物やその他にも色々とお話したいものです! なんだか彼、気に入っちゃいましたので!」


 俺は、先程の王女と騎士がそんな話をしているのを、魔術で強化された耳で聞いてしまった。


 お、おい……なんで興味持ってんの?!

 いや、確かにちょっとやり過ぎた感はあっただろうけど、俺はそんな興味持たれるような人じゃないぞ?!

 くそっ、なんか嫌な予感しかしねぇ!!!


「ん? イクトくん? なんか体震えてるけど……大丈夫?」

「お、お? おう、だ、大丈夫だぜ?! ちょーっと面倒なことになったなって思ってただけだ!」

「ん~? あぁ、さっきの群れの話?」

「お、おう。 それだそれ。 後はまぁ、さっきの王女様だな」

「もう、そんなこと言っちゃダメだよ? 失礼じゃない」

「あはは、悪い悪い。 っと、悪いついでにもう少し速度上げるぞ」

「うん! もう慣れてきたから大丈夫だよ!」

「あいよ、しっかりつかまってろよ!」


 そうして、軽く砂埃を立てながらバイクは平原を北へと駆る。

 色々と気になることはあるが……とりあえず、駅のあるルーレティアまではもうひと踏ん張りだ。

 きっちり間に合わせてみせるぜっ!


本作をお読みくださりありがとうございます。


うーむ……前作よりはマシになったような気がしていますが、やはり、他の投稿者に比べれば天と地ほどさがあるなぁと実感しますね。

今後も精進しますので、何卒応援よろしくお願いします。


それではまた次回。

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