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王国のド田舎出身の魔術学院生は魔法使い?  作者: 甘野 三景
序章 ド田舎から王都へ
1/6

出発の朝

前作から始まり方等色々と変更し、なんとか形になったと思いますので、また読んでいただけるとありがたいです。

今後、今回のようなことが起きないよう、きっちり執筆していきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。


※固有属性に関しての記述漏れがあったため修正しました。


 ここはアルファリア王国の南方、魔の森の近くにある総人口三十人程度の小さな村だ。

 四百年程前、当時の国王によって、異世界の"地球"というところから召喚された勇者"桜ノ宮雪花"を中心とした、異世界からの転移者たちによって作られた村である。

 この村の名は、中心人物だった勇者の名前から"雪花村"と名付けられている。




 今は"春"。

 俺たちのご先祖様の故郷にもあり、王国の象徴にもなっている花……"桜"が咲き誇る季節だ。

 この春の象徴とも言える桜の花弁が散る中、俺こと"桜咲郁斗"は、幼馴染の"雪白桜"の家の前で、桜の母"雪白紗奈恵"と共に、桜が出てくるのを待っていた。



「おーい! サクラーっ! 早くしないと列車に遅れちまうぞ!」

「わーっ! 待って待って! もうちょっとだから!」

「ほんと早くしろって! マジで時間ヤバイんだって! ここからだと、列車の駅のある"ルーレティア"まで遠いんだからさ!」


 気持ち大きめに声張ったけど……近所迷惑だったな。 反省だ反省。 うん。


「ごめんなさいね、イクトくん。 うちの娘のせいで待たせちゃって……」


 と、申し訳なさそうな表情をしながら紗奈恵さんが謝ってくる。


 お、おう。 謝らせて申し訳ないわ。

 ちょーっと学院が楽しみだったから予定より早めに起きただけなのっ! ごめんなさい!

 まぁ、そんなことちょいと恥ずかしいから言えないんですけどね? ホントごめんよ。


「い、いや、サナエさんが謝ることじゃないですよ。 それに時間がないとはいえ、まだなんとかなりますから気にしないでください」

「ごめんね、イクトくん。 ありがとう」


 そんな風に紗奈恵さんと話しながら桜を待っていると、俺と同じく黒を基調とした真新しい制服に身を包んだ桜が、髪を激しく揺らしながら慌てて出てくるのが見えた。


 うーん、流石は桜さん! 何着ても可愛いよねっ!


「ふぅーっ! よしっ! 完璧! ごめん、おまたせっ」


 そう言って軽くウインクしながら、顔の前で手を合わせて謝ってきた。


 あーやばい、マジ可愛い。

 何そのウィンク、実は精神に作用する魔術なんです?

 俺の心が揺さぶられちゃうわっ!


「全くこの子は……ほんと待たせすぎよ?」

「うぅ……しょうがないじゃない。 女の子には色々あるの! お母さんだってわかるでしょ?!」

「まぁ、それはそうかもしれないけれど……」

「あはは……って、それより桜、早く出発するぞ。 流石に初日から遅刻とか嫌すぎるからな」


 さて、真面目な話をしとくか。

 今は桜華歴四百一年の四月七日、午前五時三十分過ぎ。


 つまり、入学式当日の朝なんだ。


 俺たちが乗る予定の列車……"魔道列車"が停まる駅はこの村にはなく、村から少し北に離れた"ルーレティア"という町にあり、徒歩だと約1時間半程度かかる。

 そして、乗る予定の列車が発車するのが、約一時間半後の七時。

 そう、その列車に乗ることができなければ、入学式に間に合わなくなってしまうんだ。

 そのため、俺たちは朝早く出発する予定になっていたんだが……桜が準備に手間取って今に至る。


「うん。 遅くなっちゃってごめんね……」


 心底申し訳ないと思っているのが伝わってくる程に、桜の顔はしょぼくれた雰囲気を纏っている。


 うぉ……言い過ぎたか? そんなにキツく言ったつもりはなかったんだが……

 でも、この表情もまた可愛くて……俺の幼馴染最強じゃね!?

 

 ――っと、いかんいかん。


「いや、まぁ……せっかくの入学式、記念すべき登校初日だしな。 女なら特に見た目は気にするだろうし、構わないよ。 寧ろ急がせて悪い」

「ううん、遅くなった私が悪いもん。 ホントごめんね?」


 桜は潤んだ瞳で上目遣いをしながら、俺にそっと近づく。


 その潤んだ瞳は、吸い込まれそうだと錯覚しそうな黒い色で、髪は、日の光を浴びればキラキラと輝く宝石のように、美しく艶やかな黒髪している。

 そして顔立ちは、まるで神に愛されているかの如く端整で、その肉体は瑞々しく透き通るような白い肌をしていて、その姿に目を奪われる程だ。


「―っ! ちょ、近い近い! 謝罪は受け入れるし、お互い様ってことにしよう。 それからちょーっと離れよ? なっ? なっ?」


 あーもう、やばいやばい! 俺の幼馴染超絶可愛い! 何!? 天より舞い降りし天使様なの!? いや、女神か!!

 ドキがムネムネっ! じゃなくて、胸がドキドキしちゃうっ!


 と、内心とても動揺しながら後退る。


「う~ん……まぁ、イクトくんがそう言うならそれでいっか」

「お、おう。 ……って! やばい! このままじゃ乗り遅れるの確定だぞ!?」


 マジでもう時間に余裕ないじゃん!! やばい!


「えー!?」

「仕方ない。 ちょっと魔力使うが、念のため用意してた"あの手"でいくかぁ……」

「ん? イクトくん、あの手って何のこと? 何か方法があるの?」

「まー見てろって。 あ、一応少し離れてろよ?」


 そんな風に言いながら、俺は最も得意とする"創造"属性の魔法を使う。


 この創造という属性は、一般的な属性とは違い、とても珍しい固有属性と言われるものなんだ。

 固有属性っていうのは、一般的な属性である"火・水・風・土"と、その上位属性である"雷と氷"以外に存在する、個人が有する特別な属性の総称で、俺も自分以外で使っているやつは見たことがない。

 まぁ、見たことないだけで実はうちの村にもいるのかもだけど。


 っと、魔法についても言っておこうか。

 本来魔法っていうのは、人の手では実現不可能とされていることを実現させることができる、奇跡みたいなものだ。

 一般的には高難易度の技術とされていて、使える人間はほとんどいない。

 少なくとも、俺が知ってる限りじゃご先祖様の中でも勇者だった"桜ノ宮雪花"だけだ。

 とはいえ、村からそれ程出たことない村人Aな俺じゃ、世界にそこそこいるだろう凄腕の魔術師連中の事情はわからないから、もしかしたら他にも数人くらいはいるかもしれないが。

 そして、その勇者が使っていた魔法のことが、一般に広まった結果、"魔法とは魔力を何かしらの武具へと具現化させること、また、その武具を使った術が魔法だ"という風に認識されている。


 それと魔術についてだが、これは魔法とは逆に、人の手で実現可能なことを魔力を用いて実現させる術をいう。

 もう少し説明するなら、各属性の魔力を使い、火を出したり水を出したり……と言ったような、"結果"だけを見れば、他のやり方で同じようなことができることを魔術って言うんだ。

 そして、この高難度の技術を扱うことのできる存在を"魔法使い"といい、主に魔術を扱うものは"魔術師"と呼ばれる。


 ちなみに、俺たちが入学することになる魔術学院は、その名前から予想できるように、主に魔術師になるための教育機関となっている。

 ただ俺の場合、魔術師として基本となる、基本属性で構成される汎用魔術が一般人以下のレベルでしか扱えない為、魔術師になるために勉強をしたところでどれだけ頑張っても2流以下にしかなれない。

 でも、正直なところ、上位2属性と固有属性に関しては一流の魔術師以上のレベルで扱えるし、その辺りはあまり気にしていない上に、まあ合格したし魔術の知識が増えるだけでも良いかなぁなんて思ってる。


「"我が力の本質は創造、我は魔力を用い全てを創り出す者、我が魔力を糧に顕現せよ!" <異世界の鉄馬>」


 詠唱を終えると、その傍には、黒い艶消しの車体に桜の花弁の模様が描かれた、異世界にあったとされる乗り物"バイク"が出現していた。


「あら……これは?」

「え、え!? な、なにこれ!? こんなの見たことないよ!?」


 当然の如く、見たことのない物体に驚く雪白親子。

 特に桜なんか、もともとぱっちりとしたその目をさらに広げ、目をまんまるにして俺が創造した<異世界の鉄馬バイク>―以降"バイク"と呼称―を見てるんだ。

 いやー、ホント良い反応だ。 驚かせようと今まで黙ってた甲斐があるってもんだ。


「そりゃそうだろ。 なんたってご先祖様たちのいた"地球"って世界の乗り物らしいからな」

「なんでそんなの作れるの!? イクトくんこの世界で生まれ育った人じゃない!」

「なんでって……ご先祖様の残した文献を見て、"あ、これ便利そう"って思ったから"創造"で再現したんだよ。 まぁ流石に、エンジン?とか燃料になるガソリン?とかいうのがよくわからなかったから、この世界にあるもの。 つまり"魔力"で代用して、俺自身が直接魔力操作で動かせるように調整したけどな」


 そう、このバイクという乗り物。

 このバイクに詳しい人物が残した文献を見て、固有属性の"創造"を使った魔法によって再現したものなんだ。

 ただ、燃料がよくわからないものだったこともあり、自分の魔力で代用したりして、自分が扱える物へと結構改造したんだが。


「えぇ……初めて創造魔法使ったの見た時から思ってたけど、イクトくんってなんていうか非常識だよね。 なんかもうその存在自体が。 魔術の基礎中の基礎の汎用魔術が碌に使えないくせに……」

「う、うるせー! 仕方ないだろ!? 使えないもんは使えねぇんだよ! てか、非常識とか失礼な!」


 落ち着きを無くし若干顔を赤らめながら、桜に文句を言う。


 いや、あれよ? 俺これでも頑張って使えるようになろうとはしたんだぞ?

 なのに全くこれぽっちも使えやしない。 ほんとなんでなん?


「はいはい。 わかったから行こ? それ使えば間に合うんでしょ?」

「あ、ああ。 ……なんか釈然としないが、時間もないし行くか。 俺の後ろに乗って、しっかりとつかまってろよ? あ、後。 このヘルメット?とかいう頭守るやつも念の為付けとけ。 もし落ちても怪我しないようにな」


 そう言って、頭を守るための道具"ヘルメット"を無詠唱で即座に創り出し、桜へ渡す。


「え、なんかすごく怖いんだけど……大丈夫なの?」


 そうやって不安げな表情で聞きながらも、桜はしっかりとヘルメットを頭に装着していた。


 この可愛い顔に傷でも付いたら……世界的損失だ。 必ず守らねば!


「問題ない。ちゃんと練習もやってたし、最初の内はゆっくり走らせるからよ」


 そう実は、村とルーレティアの間にある平原で、密かに練習を重ね、きっちり運転できるようにしていたんだ。

 あぁ……あの時は何度死にそうな目にあったことか……うぅ……生きててよかったよ、ホント。


「うん。 お願いね?」

「任せとけ。 それじゃ、サナエさん。 慌ただしくてすみませんが行ってきます」


 軽く頭を下げ、俺もヘルメットを着ける。


「ええ。 うちの娘をよろしくね? イクトくん」

「はい! 任せてください」


 ええ、かならず無事に送り届けますともっ!

 いざとなったら本気出す覚悟はあるねっ!


「それじゃ、行ってくるね! お母さん!」

「はいはい、行ってらっしゃい。 2人とも気を付けてね?」



「「行ってきます!」」



 

 そうして俺たちは、魔道列車の駅がある"小都市ルーレティア"へと鉄馬に跨り向かったのだった。




お読みくださりありがとうございました。

拙い文章だとは思いますが、読者の方々に少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。


また次話も読んでいただけると作者はとても喜びます。

これからもよろしくお願いします。それではまた次回。

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