初任務~出発~
「どうにかして助けを呼ばないと…」
「このままじゃこの村は全滅だぞ…」
「誰か…誰か奴らを止めてくれ…」
「おい!こっちにきたぞ!」
「くそ…」
レン「えー…団員NO.7レン=オルグライト、ただいま出勤しました!」
サクマ「いや、それ別にいらねぇから。ほんとに」
レン「昨日はマルルやセツナとか、みんな言ってましたよ?」
サクマ「あとたぶんユーナだけだと思うが…」
レン「あれ…そうでしたっけ…。」
サクマ「まぁいい。さて、入団してすぐになんだが、初任務といってみるか?」
レン「お、マジですか?ありがとうございます!」
サクマ「といっても見学みたいなもんだけどな。」
レン「それでもうれしいです。主にお金的な意味で」
サクマ「正直だな」
レン「そらもう死活問題ですから。で、どんな任務なんですか?」
サクマ「配達だ」
レン「え?」
サクマ「だから配達だよ配達。荷物を運ぶの」
レン「なんすか…それ…」
サクマ「いやいや、一応仕事だからね?」
レン「そんなの郵便に任せればいいじゃないですか」
サクマ「ばっかお前。郵便に頼めるもんなら頼んでるだろうに。でも依頼主は郵便ではなくて俺たちマギルギルドを選んだんだよ。」
レン「何でですか?」
サクマ「知らねぇよ。あっちにはあっちの事情があるしな。まぁ予想できることと言えば、早く届けて欲しいとか、確実に届けて欲しいとか」
レン「確実に届けて欲しい?」
サクマ「あぁ。近くに届けるのであれば大丈夫なんだが、遠くに届けるとなると、郵便局員が襲撃されたりするんだよ」
レン「え、マジですか?」
サクマ「マジもマジだよ。山賊とか、その辺に」
レン「え、俺、その任務について行って大丈夫なんですか?」
サクマ「届け先を見る限り俺も知ってるところだし、多少は遠くなるけど、大丈夫だろ。治安も悪くないしな」
レン「へぇ…。じゃあなおさら何で俺らを使ったんですかね」
サクマ「んー。あと考えられるのは…公式に運ぶのはまずいものとか…」
レン「密輸じゃないすか!」
サクマ「ま…まぁ、そうともいう…」
レン「結構危なくないですか?配達」
サクマ「大丈夫だって。これまでも数々の配達をしてきたけど、そんなことに巻き込まれたことはないしな。実は、マギルギルドにはかなり配達の依頼が多かったりする」
レン「何でですか!?」
サクマ「それはな、配達のプロが二人ほどいるからだよ」
レン「誰っすか?それ」
サクマ「えーっとだな、お、そろそろ帰ってくるんじゃねーか?」
マルル「団員NO.2マルル=ロータス、ただいま戻ったでしゅ!」
サクマ「ほら、一人目の登場だ」
マルル「何でしゅか?」
サクマ「マルル、お前に依頼がある。」
マルル「なんでしゅか?配達以外でお願いしましゅよ?」
サクマ「残念配達だ…。あと、リリィ、隠れてるんだろ、出てこい」
リリィ「…やっぱり俺もっすか…。」
サクマ「そりゃそうだろ。神速のリリィ」
リリィ「ちょっと足が速いだけですよ。変な名前つけないでください。ほんとに」
サクマ「いいじゃねぇかよ二つ名、なぁレン、かっこいいよな?」
レン「まぁ…いいんじゃないすかね」
リリィ「ぜってぇ思ってねぇだろ…」
マルル「で、いつから配達でしゅか?」
サクマ「今からだ」
マルル「え」
リリィ「ちょ、待ってください!それって今日中に終わるんですよね?ね?」
サクマ「心配するな、途中に寝泊まりするための宿は予約してある」ニッコリ
リリィ「いやだああああああああああああああ」
レン「何か予定でもあったのか?」
リリィ「いや、まぁ、別に、そんなに重大なことでは…」
マルル「またユーナでしゅか?」
リリィ「おま、まだレンには言ってないだろ」
レン「え、なんだよ、教えろよー」
マルル「えーっとでしゅね、リリィはでしゅね、ユーナのことが」
ユーナ「私のことがどうかした?」
3人「!?」
ユーナ「今私のこと話してたよね!聞かせて聞かせて!」
マルル「えーっとでしゅね」
リリィ「おいマルル、しばくぞ」
マルル「ひぇ」
リリィ「ユーナ、別に問題はない。ただ一つだけ伝えないといけないことがある」
ユーナ「なにー?」
リリィ「明日…一緒に買い物に行けなくなった」
ユーナ「えぇ!?うそでしょ!?楽しみにしてたのに!」
リリィ「いや、依頼がきたんだって、しょうがないだろ…」
ユーナ「えー!えー!えー!リリィのばか!」
リリィ「サクマさん。助けてください。俺はどうしたらいいですか」
サクマ「仕事は仕事。仕事と妻なら、お前は仕事を選ぶ人間だと俺は信じているぞ」
リリィ「うわあああああああああああああ」
ユーナ「妻って…照れるなぁ////////」
レン(なんだこの空間)
マルル「レン…こいつらおいていくでしゅよ…」
レン「いや…だめだろ…」
リリィ「さて、今から荷物の配達にいくわけなんだが、マルル、いつものを頼む」
マルル「しょうがないでしゅねぇ…」
レン「リリィ、マルルに何させてんだ?」
リリィ「えっとだな、こいつの得意としてる魔術は魔獣使役だ。魔獣といってもおとぎ話に出てくるようなえげつないやつじゃないけどな。この魔術は簡単に言えば、術者が動かしたい魔獣を具現化し、それを動かすだけにすぎない。ただ、具現化魔術っていうのはすげー難しいし、一から作るのは大変なんだ。なんで大変なのかはまた今度サクマさんに聞くといい。でだ、具現化の部分は魔本に頼って、マルルは使役のみを担当する。」
レン「なるほど、だから魔獣使役なんだな」
リリィ「そうだ。ただ、魔獣の動作すべてを管理するなんて相当えぐい。命のない人形を魔力のみで動かすなんて、相当神経のいるものだからな。そこで生まれたのが、人工知能というシステムだ。要は、魔獣にあらかじめある程度の知能を埋め込んで、動く・走る・止まるなどの動作をインプットしておくんだ。そして、術者の言うことに従うように調教する。やってることはサーカス団と変わらん」
マルル「最後ひどくないでしゅか!?これでも僕頑張ってるんでしゅよ!?」
レン「なんつーか、理論は全然わからなかったけど、最後の一言でだいたいマルルのしてることがわかった」
リリィ「うん、ならそれでいい。で今回も馬か?」
マルル「今回もってなんでしゅか…ケルーを召喚して噛み殺してもらいましゅか?」
リリィ「犬はまじでやめろ、ごめん。」
マルル「まぁ今回もユニに頼むんでしゅけど、いきましゅよー!えい!」
ユニ「コォォォォォォォォォォォォォン」
レン「おぉ!?」
リリィ「いやぁ、さすが伝説上のユニコーンをモチーフにしてるだけある。正直かっこいい」
マルル「ユニ!今日はいつもより一人多いでしゅが、大丈夫でしゅか?」
ユニ「コォン」
マルル「大丈夫っぽいでしゅ。さぁ二人とも、ユニの後ろに乗るでしゅ」
レン「おう」
リリィ「りょーかい」
マルル「では、いきましゅよー!」
ユニ「コォォォォォォォォォォォォォン」