授業
サクマ「魔術を教えると言ってもなぁ…。何から教えたもんか」
レン「えっと…そもそも魔術ってなんでしたっけ?」
サクマ「え、そっから?」
レン「は…はい、小学生のころに知識入れたんですけど、いかんせん適正がなかったもんで…。中学は魔術のいらないとこに進みましたし。」
サクマ「なるほど…じゃあ初歩中の初歩。魔法と魔術の違いは何だ?」
レン「え、それって違うんですか?」
サクマ「全然違うぞー。魔法ってのは、文字通り魔の法律だ。つまるところ、魔を使う上で、絶対に守らなくてはいけない約束事って感じだな」
レン「魔ってなんですか?」
サクマ「魔っていうのは、エネルギーの一種だ。魔力って言った方がしっくりくるかもな。その魔力を使う上での約束事が魔法。魔法の中には、意識的に守らなきゃいけないものと、勝手に守られるものの二つがある。」
レン「なんですか?それ」
サクマ「意識的に守らなきゃいけないのは、要は人を殺してはいけないとかだな。んで、勝手に守られるものってのは、原則って感じ。例えば、魔力保存の法則とか。魔力は増幅もしないし、減少もしない。この世には一定量しか存在しないってわけだ。ほかにもいろいろあるけど、別に知らなくても全然魔術はつかえる。」
レン「なるほど。じゃあ、魔法を使うって言ったら、意味わかんないですね」
サクマ「そうだな。魔法は使うものではなく、守るものだからな。そして感づいているとは思うが、魔術というのは」
レン「魔力を用いて行うこと…ですか?」
サクマ「そゆこと。ただ、この世には魔術の使えない人間もいる。それはなぜだかわかるか?」
レン「えっと…魔力がないから…ですか?」
サクマ「いや、魔力が0って人は本当に少ない。少なくとも俺は人生で1人しか出会ったことがない。」
レン「1人って?」
サクマ「あぁ、今ここにいないが、ユーナっていうやつのことだ。マオの姉にあたる。ただ、魔力が0じゃない人でも魔術を使えない人なんてざらにいる」
レン「じゃあなんで使えないんですか」
サクマ「要は使い方を知らねーんだよ。魔術ってのは歴史的に見ても最近研究が進んでいる学問の一つだ。それまでは一握りの人間しか使えなかったし、オカルトの一種として見られてたんだ。多分そいつらは一子相伝で伝えてきたものだと思うが…。要は、人間が普通に生活してたら絶対に使い方なんてわかんねーんだよ。ただ、最近は比較的魔術が使いやすい環境になった。なぜだかわかるか?」
レン「学校で習うからですか?」
サクマ「いや、あんなもん一般常識にすぎない。その辺の絵本と一緒だ。答えは魔本の存在だ。」
レン「あー、ありますね。1冊何万もする、クソ高いやつ」
サクマ「あれは優れてるんだぞー。なんせ、本に術式が書かれてるから、術者が本に魔力を流し込むだけで魔術が使えるんだから。現在で魔術と呼ばれているものの大多数が、魔本によるものだからなぁ…」
レン「でも俺、魔本すら使えないんですよ」
サクマ「はぁ!?!?!?」
レン「いや、ほんとですって。先生には魔力を流し込んだり、そういう操作に向いていないって言われました。」
サクマ「えぇ…まじかよ。じゃあ教えようがないじゃん」
レン「確かに、どうしましょう」
サクマ「そうだなぁ…マオ、ちょっとこっちにこい」
マオ「ん、何?」
サクマ「ちょっとこいつのコアをみてくんねーかな」
マオ「別にいいけど」
レン「コアってなんですか?」
サクマ「コアってのは、魔力供給器官のことだ。心臓の反対側にあって、魔術師にとっては第二の心臓だな。ここをやられると魔力が供給できなくなる。ちなみにユーナにはこのコアの部分がぽっかり空いているんだ」
レン「なるほど…。で、この子は何をしようとしてるんですか?」
サクマ「あぁ、こいつの魔術は成分解析。手に触れたものが結合している1固体の成分を解析することができる。1固体ってのは、例えばお前の手に触れればお前の体全体のことを指す。細かい制限は色々あるんだが、とりあえずお前のコアの動きを見る。」
マオ「解析完了したわ。映し出せばいい?」
サクマ「あぁ。よろしく頼む」
マオ「はーい。よっと」
レン「おぉ!?なんか目の前に俺の体の画像が」
サクマ「マオの魔術のいいところは、解析した内容を映し出せるところにある。これによって俺たちにも伝えられるからな。依頼ではかなり役立つ」
マオ「ほめても何も出ないよ?」
サクマ「小学生に何を求めればいいんだよ俺はっと…って、なんだこれ」
レン「何かありましたか?」
サクマ「…いや、なんでもない。マオ、もういいぞ。後でその画像、俺のケータイに送っといてくれ」
マオ「ん、わかった。じゃね」トテトテトテ
サクマ「おう。レン、お前、今日は帰れ」
レン「えぇ!?」
サクマ「いいから、帰った帰った。今日はもう閉店だ。」
レン「わ…わかりましたよ。また明日来ますからね」
サクマ「あぁ、まぁお前に仕事はないけどな」
レン「俺にもできるような仕事をくださいよー」
サクマ「考えておいてやるよ。じゃあな」
レン「お疲れさまでーす」タタタタタ