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#2 満州王張作霖

一夜が明けた。

「さぶッ」

季節は11月初旬とは言え中々冷え込んでいる。

時間は午前7時頃、普通の刑務所とは違い起床時間は緩いようだ。何時に起きなければならないと言う訳ではない。午前8時ごろまでに起床、それから刑務作業に入ったり人によっては勉学に勤しんだり……様々な過ごし方をしている。

彼の前世「パブロ・エスコバル」、稀代の麻薬王。

軽く肩を回し、彼は食堂に向かった。


「おー、おはようパブロくん! 良く眠れたかね?」

彼女の前世は「アドルフ・ヒトラー」昨日食堂であったここでの初めての知人。女性だ。

「おはようございます。アドラーさん」

彼女は悪目立ちを避けて普段は“アドラー“と名乗っていた。確かに前世に問題があるどころの騒ぎでは無い前世ではあるだろう。

「朝食はパン派? それともご飯派かい?」

「あ、大丈夫です。自分で取りに行くんで」

朝食は食パンとサラダ、ソーセージとスクランブルエッグとかなりしっかりしている。

「そういえばパブロくんは今日1日どうするつもりだい? 働くも勉強するも基本自由だけど……」

「特に決めてないです」

アドラーはニッと笑みを浮かべた。この少女のような笑みを浮かべられると前世がアドルフ・ヒトラーであることを忘れてしまいそうだ。

「じゃ、今日は私に付き合いたまえ、悪いようにはしないさ」

彼女に逆らえない。彼女の独特のペースに抗える術をパブロは持たない。

「とりあえず当面の目標は昨日のあの子を味方にしたいな」

「あの子?」

「昨日キミと同じ風に1人で夕飯を取ってたラスプーチンくんだよ」


朝食を取ったパブロは個室に戻り、布団を畳む等の軽い片づけをした後中庭に向かった。

アドラーとそこで落ち合う予定である。昨日ここに到着してすぐは個室に引きこもっていたため施設の事を把握できていない。正直当初はそれすら億劫に感じていたがアドラーが「今後の為」

とラスプーチンと話すついでに施設を案内してくれるらしい。

中庭を目指す廊下に人だまりを見た。何を見ているのだろうか?

「あのねーちゃん強えな……」

「でもあいつらってカポネのとこのだよな」

喧嘩をしているらしい。ねーちゃん? カポネ?

パブロは新参故か話が見えない。

「しつこいねあんた達も……次は骨の一本持ってこうか?」

肌色の黒い女性が倒れている4人の男たちを睨みつけている。これをこの女性が1人でやったならば相当喧嘩が強いのだろう。男達を一蹴した女性は何事も無かったかのようにその場を立ち去って行った。

「俺らに逆らってられんのも今のうちだぞこのアマ!」

倒れている男たちの1人が叫んだ。しかしその様子は負け犬の遠吠えにしか見えない。

「いやー凄いねぇ彼女」

「そうですね……ってアドラーさん!?」

気付いたら後ろでアドラーが腕を組んで立っていた。

「彼女も相当凄い前世な気がするなぁ、そうは思わないかねパブロくん」

「まさかアドラーさん……」

「うむ、彼女に会いに行こう」

出来るだけ関わりたくない手合いなのだがきっと何を言っても止まらないだろう。

「ラスプーチンはどうするんです?」

「また今度」

「また今度って……」

計画性の欠片もない発言だ。

「私の前世もどうやら何かに熱中すると他の事が目に入らなくなる性格だったとの逸話が残っている。まぁその性格のおかげでナチ党を第一党まで持っていったのだ。大船に乗ったつもりでついてきたまえパブロくん!」


女子トイレからさっきの肌色の黒い女性が出てくるとそれを待ち構えていたかのようにアドラーが仁王立ちで待ちうけていた。パブロはその後ろに突っ立っている。

「やぁ、さっきは強かったね、何か習っていたのかね?」

「上から目線だね……誰だい?」

「私はアドラー、それでこの子がなんと超有名なパブロ・エスコバルだ!」

まるでパブロの方が偉いかのような紹介のされ方だ。

「パブロ……あぁ「メデジンカルテル」の」

「へぇ、知っているのかね?」

「そりゃまぁ前に歴史ドラマかなんかで見たからね、で、用事はなんだい? パブロ・エスコバル」

振られたパブロは即座にアドラーを指さす。

「俺じゃなくってこの人です」

「おぉい責任転嫁かね!?!?」

なんでこの人がおどおどしているんだろうか?

「グ、ゲフンゲフン、話って言うのはだね? 私たちの仲間になってくれないかっていうお誘いさ」

「嫌だ」

「なに!?」

それはそうだろう。いきなり仲間になれって胡散臭すぎる誘い方だ。

「話しは終わりかい? じゃ、もう行くとするよ」

「え、ちょっと待っ……」

アドラーが続ける前に彼女はパブロを見て何か思ったかのように口を開いた。

「あたしの前世は張作霖、一応言っておくよ、アンタの前世だけ知ってるってのも筋が通らんだろ?」

そう言い捨てて張は去って行った。

「満州王……張作霖! ジャンズオリン!!」

ふと隣を見るとアドラーが目を輝かせている。

「彼女は絶対味方につけるべきだと思うのだがどうかね!?」

「だったらなんであんないい加減な誘い方したんですか!?」


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