06.時
「ねえ、ヒー君、昨日朝ごはん食べた時、私が言ったことこと覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ。忘れる筈がないだろ、あんな大事なこと。」
当然、忘れることはできない。
朝、いつも通りの朝を味わっていた俺。
その時、俺のいつも通りの朝は終わることが決まった。
その時、これまでの生活が否応なしに変わると悟った。
「で、どうするのよ?今週の土曜日、私のお父さんとお母さんに会ってくれるんでしょうね。」
そう。
俺の人生の分岐点がやって来た。これが、この時が俺の人生の分岐点。
こいつといっしょになるか、それとも……。
外堀が埋まっていく。
そのことに気づいた。
周りが俺たちを見る目がここ最近変わってきていることを感じる。
だから、この時、今、こいつ、ハーちゃんの両親に会うということは、外堀が無くなることを意味するだろう。
俺は二つを天秤にかける。
今決断しなくてはならない。
この時、今、決断しなくてはならない。
俺は、ハーちゃんを見つめる。少し不安そうな顔をしている。
それを見て、俺は悲しくなってきた。こんな顔をさせたくない。
時は待ってくれない。この時、今、決断した。
俺は―――
その週の土曜日、俺とハーちゃんは彼女の実家の門の前にいた。
扉に手を掛ける。
今日、ここでお願いしよう。彼女を、ハーちゃんをくださいと。
俺はこの時、決めた。




