表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

3.

「見えるけど……それならそうと早く言ってよ! 行動する前に!」

「渚に言ったら部屋に入れてくれないだろう? 窓も開けなくなるし」

「開けないでしょ? そんなの聞いたら」

 いったいどれくらい慎一に見られてたの? 弟もいるし、さすがにそんなに薄着で家の中をウロウロはしてないけど……窓開けて着替えもしてるし……誘ってってことは……その、いろいろ見えてたってこと?

「プッ! 」

 私が窓から見えてた私の姿を想像していたら、突然慎一は噴き出して笑い声をあげる。え? ええ?

「見えないって、っていうか俺そんなに暇じゃないし」

「な、なに? なんなのもう!」

 わけがわからない。なんなのよ!? 暇じゃないって……なんか失礼!!

 あれ? そういえば……慎一って……

「今日はクラブないの?」

 慎一は軽音部だったはず。なんで今この時間に家にいるの?

「ああ、今日は途中で帰って来たんだ」

 慎一は元気そのものだ……人を襲えるくらいに……。用事があるならここにはいないだろうし……?

「なんでここにいるのよ?」

「だ・か・ら! 発情……」

「嘘ばっかり言ってないで答えて。なんでここにいるの? 」

 慎一は笑顔をやめて真顔になる。幼いと思っていた慎一の顔はずっと大人びて見える。

「放課後に、渚が教室から出てくるのを偶然に見たんだ。その渚の表情と中にいる二人もね」

「え?」

 あれを見られてたんだ……。あの場に慎一がいたなんて……あの二人の姿を見てしまったことですっかり周りが見えなくなっていた。

「教室に戻った後輩を帰りが遅いから探しに行ったんだよね」

 あ、そういえば倉田君も軽音部だった。倉田君を探しにうちのクラスに来たなら見られていても不思議ではない。というかあの場面を見たから慎一は言ってるんだよね。

「そ、それでなんでこんなこと……」

 そこが全くわからない。あれから私は足早に家に帰ってきた。部屋に入ると同時に慎一が窓をノックしている。私を追いかけて来たんだよね?

「それから、後輩に注意して、部室に帰ってカバンを持って帰って来た。やーもー久々にあんなに走ったよ」

 そういえば慎一の体は少し汗ばんでいた。走ったって……。なんで?

「なんで? なんでそんなことするの? こんなんことしたのよ!」

「渚が家に入るところが見えたから、少し渚と話をしようかと思ったんだけど」

「ど?」

 話が見えない。どうしてそこからこうなるの?

「ど、渚が全然普通だったんだよね。てっきり泣いてるのかと思ってたのに」

 私もそう思っていた。泣くんだと。なのに涙は一粒も流れてはこなかった。

「泣いてなかったら、どうしてこうなるのよ?」

「だから! はつ……」

 どうしてもそこに戻ってくるんだね。

「だから! が、わからない!」

「わからない?」

 とまた慎一は私の体に寄せて来る。腕を腰にまわされて顔がまた近くになる。ドキっとする。ええ、どうしよう。

「慎一……」

「また無抵抗だけど……いいの?」

「え? あ……」

 なぜだろう抵抗したくない私がいる。おかしいな。なんで? 倉田君が好きだったはずなのに……あの一瞬で倉田君への私の想いは消えてなくなったのかな? だからって、なんで慎一のことを拒めないの? 忘れたんじゃなかったの?

「渚……どうしたい? 」

 え? ええ? 私に聞くの? どうしよう。私はどうしたい?

「慎一……なんでこんな……どうしてするの?」

「そうだなあ。してみたらわかる?」

 そして目の前にあった慎一の顔が近づいてくる。ダメ! はっきりしない関係なんてやっぱり嫌だ。苦しくなるに決まっている。

 体をグッと後ろにそらして左手を後ろに出して体を支え、目の前に右手のひらをパーでひらいて、慎一の顔と私の間に入れる。

 少しずつ冷静になって今までの状況を頭の中でまとめて行く。

「慎一はあの時、私のことを見て家まで私を追っかけて、帰って来た。クラブも途中にして」

 そっと慎一は腕を離して後ろに下がった。さっきの位置まで。

「ああ」

 短い慎一の回答。これでは、まだ答えじゃないんだよね。

「慎一は私が家に入るところを見たんだよね? 」

「そうだよ」

 いつもの笑顔の慎一になった。

「じゃあ、鍵で家の中に入る私を見た。なのに、さっき家に人がいるかわざわざ聞いてきた。しかも押し倒してから。あれは私の返事を待ってたから。私が嫌がってるなら、家に人がいないなんて言わない。嘘でもいるって言って止めるから。慎一は誰もいないってわかっていたのに。あれが私の答えだった。慎一は強引に迫ったわけじゃない。だから、これは……その……慎一は……えっと……」

 この答えが合っているなんて自信なんてまるっきりない。慎一が自分に好意を持ってるなんて……考えられない。でも、家まで走って追いかけてくれた。クラブを途中から抜け出して。そして、何のかはわからないけれど話をするつもりだった。私が泣いていると思って。

「泣いてない私を見て、んー? 話は必要ないと思った。だから………」

 これ以上は出てこないよ。

「解答は終わった? 」

「それ以上はわからない……よ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ