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行く末

須佐すさが迎えに来るんだったら四人の事も伝えといてくれよ。アイツならまとめて消し飛ばしかねん」


『確かにやりかねんな』


『ちょっと……』


「しかし召喚された奴らも運が悪かったな。アイツ等はどうするんだ」


『かなり無理なやり方で世界を渡ってしまったからの、今また世界を渡れば魂が耐えられぬだろう。時間をかけて準備すればなんとかなるかもしれんが、その時間がない。気の毒だが……』


「そうか。気が短いからなぁ、須佐のやつは」


『ちょっと!』


 自分を無視して話しを進める無月と月読に焦って声を荒らげた。


「焦んなって、冗談だ」


 悪びれることもなくそう言った無月だが月読はそうではなかった。


『私は本気だ』


「月読?」


『イシスよ、お主も覚悟しておくことだ。世界の消滅などという失態、相当重い罰を受けることになるだろう』


『何でもう終わったように言うのよっ!術式は破棄するって言ってるじゃない!』


『世界が酷く歪んでいたとしても人の力で無月を召喚したというのは少し引っ掛かっていたが、合点がいった。無月の召喚で使われたのは世界そのものの力だ。おそらくはかなり深層まで呑み込まれてしまっているだろう、ほんの小さなのミスで破壊神が動く前に世界が消える。そうなった場合、無月を戻すことも出来なくなる』


『だから時間がかかるって言ってるのっ!』


『その時間が無いと言っている。失敗した時のリスクが大きすぎる、それでは須佐を押さえておくことが出来ん』


『たかだか魔物一匹じゃないっ!』


 イシスのこの言葉には無月も乾いた笑いを浮かべていた。


『イシス、無月がそこらの有象無象ではないことくらいは理解していよう。前にも言ったはずだ。要だと』


『ええ、でもそれは脅威にはなっても必死になって取り戻す必要はないじゃない。居なくなるなら脅威が一つ消える、それだけの話じゃないっ』


『妖力の性質は知っているな』


『それがどうしたのよ、万象を掴む力、そこに在るものを掌握する力でしょ。まぁホントに万象を掴むなんて力量のある者はいないでしょうけど』


『鬼はその力が他と比較しても飛び抜けておる。人が畏れ時には信仰の対象になるほどに。無月はその鬼の中でも別格だ。現世の厄介事の処理を一手に担えるほどにな、現状なんとか凌いではいるが所詮今だけの話だ。無月を欠いてはこちらの世界が立ち行かん』


『だからこそ、脅威なんじゃない!仕合いの時に放ってた殺気だって神の威光にも劣らない圧力をもっていたわっ、神でもない者がそれだけの力を持っているなんて!』


(そういう話は俺がいない時にして欲しいんだがなぁ……)


 月読とイシスの会話に無月は大層居心地の悪い思いをしていた。


『大体、神に喧嘩売るような奴にどうしてそこまで拘るのよ!』


『無月が友だからだっ!!』


『・・・・・・・』


 月読の怒声にイシスは黙り込んでしまった。

 いつかのそれとはその質が全く違ったために。


『確かに無月は神に拳を向けたっ、だがそれも友への弔いの為、友の誇りの為にだ。欲望に任せ暴れたわけではない!そして神、妖し、人の境界も無かった混沌の時代から今まで我らに助力を惜しまなかったっ、友が安らかに眠れるようにと。神となら、そんな世界も造れるだろうと。神からは悪しき者と疎まれ、妖しからは神に媚びる犬と蔑まれ、人からは異形の者と命を狙われてもだ!』


「月読」


『・・・・・あぁ、すまない。とにかく無月は、我らが友は、間違いなく返して貰う。お主の世界が消えようとも必ずっ』


『・・・・・・・・・・・・』


「月読、そう熱くなるな。いつも冷静なお前は何処いった」


『無月』


「イシス、時間があれば確実に破棄できるんだな?」


 そうイシスに問う無月の声はいつものような軽さは微塵も無かった。


『……えぇ、必ず』


「月読、須佐には俺からも話す。もう少し待ってくれ」


『無月!?お主が命を懸ける必要はっ!』


「天照大神も俺の友だ。イシスはお嬢のお気に入りだしな、何度かお嬢から話を聞いてたんだが、随分楽しそうに話してたぜ。イシスが罰を受ければお嬢が悲しむ。太陽には笑っていてもらわんとな」


『……すまぬ』


「お前が謝ることじゃねぇよ。と、言うわけだ、イシス。しっかりやれよ。あんま可愛がってくれてるお嬢に心配かけんなよ」


『……えぇ、わかったわ』


「とりあえず、術式を破棄するまでに召喚が使えないように手を打たないとな」


『それなら鍵を壊せばいいだけだから簡単よ。もう部下にやらせたわ』


「鍵?」


『人に渡したのは術式じゃないわ、術式に接続するための鍵よ。……ただ、人でも扱えるように造ったから直すことも出来るのよね。簡単ではないけど』


「本当に時間稼ぎの意味しかないわけか」


『……えぇ』


「なるほどな・・・ならその辺りのことで手が足りなくなったら言え、少しくらいは手伝ってやるよ」


『・・・・・・・いいの?』


『すまんな、無月』


「いいさ、どうせ暇つぶしで世界を旅して回るんだしな。ここまで来たらそれくらいはかまわんさ」


『ムツキ・・・・・・・・ごめん、それとありがとう』


「おう。じゃ月読、須佐とのこと頼むは」


『わかった。また連絡する』


 話し合いが終わり、指輪を脇に置いた無月は深く息を吐いた。


「さてさて、どうなるかね」


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