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狩り

「ムツキさん、それって?!」


「慌てるなカイン。言っただろ、全て呑み込んでってな。後はお前ら次第ってことだ」


「どういうことっすか?」


 嬉しさのあまり飛びつくような勢いで駆け寄るカインを制しそう言葉をかけた無月。

 カインの表情は一転して困惑へと変わった。


「まっそれは狩りの時にでも教えてやるよ」


「ここで焦らすなんて趣味悪いよムツキ・・・」


「まぁそう言うな、それより早く行かねぇと日が暮れる」


「はぁ……で、どこに狩りに行くんだい?」


 ジト目で無月を見るミーアだが後は着いてからだと言わんばかりに歩き出す無月に諦めたようにため息をつきそのあとに続く。

 カインたちもミーアに倣ってあとに続くが、お預けを食らって若干不満そうな顔をしていた。


「この街道沿いの農耕地の東に森があるだろ、そこだ」


「あぁテグの森ね、あそこで狩ってたのかい?」


「あの規模の森なら獲物の取り合いもないだろうと思ってな」


「確かにあの森ならその心配は無いだろうけど距離があるよ、夜までに戻れるのかい。野営の用意なんてしてないよ」


「あぁだから走るぞ、移動系の魔法とかあるか?」


「まぁそれくらいなら。あたしとリーナ、カインは身体強化で行けるし、シアは飛べるからね」


「飛べるのか?!」


 ファンタジー恐るべしと驚く無月、その反応にシアは少し恥ずかしそうにしている。


「あの……はい」


「あーうん。じゃ行くか」


無月の言葉に四人は頷き、魔法を発動させた。


「「「我、疾風と成らん」」」


「風よ来たれ」


 ミーア、カイン、リーナは目に見える変化はないが、シアの変化にはさすがの無月も目を奪われた。


「生身で人が飛ぶか・・・」


 そうシアは地面から一メートルくらいの高さに浮いていた。


「ムツキさん、そんなに見られると恥ずかしいです・・・」


「おぉ、わりぃ。しかし魔法ってのはここまで出来るのか」


 シアの見せた魔法にしきりに感心している無月。


「いや、普通は10センチも浮けば上出来すよ。ここまで使える奴は滅多にいないっす、宮廷魔導師には何人か居るみたいすけど同世代で飛行を使いこなすなんてシアくらいっすよ」


「そうなのか、やるじゃねぇかシア」


 カインの説明を聞いた無月がシアに賞賛を送るとシアは耳まで真っ赤になっていた。


「ムツキ早く行かないと日が暮れるんじゃないかい」


「ん、あぁそうだな」


 浮いたまま真っ赤になって固まるシアを見かねてミーアが助け舟を出す。

 無月の関心が外れたことにシアは幾分落ち着いた表情に戻った。


「んじゃ、行くか」


 そう言うとドンッと地面を蹴る音ともに無月は駆け出した。


「「「「はぁっ?!」」」」


 有り得ない速度で走りどんどん小さくなっていく無月の背中を4人は慌てて追いかけた。



○●○



「ギィィィ、キィッ、ギッ」


グチッ


 無月に顔面を掴まれ宙吊りされていたゴブリンはそのまま顔面を握り潰され絶命した。


「キィィィィィッ」


バンッ


 ゴブリンの死体を放り投げた無月に棍棒を振り上げ飛びかかったゴブリンは振るわれた裏拳に上半身を粉微塵に消し飛ばされた。


「ギギッ・・・」

「キィ・・・」


 あっという間に仲間を殺されたゴブリン達は無月を警戒して距離を取る。


「ムツキ!」


「ムツキさん!」


「遅いぞ」


「ムツキさんが速すぎるんですよー」


「そうだよムツキさん、何で森の中を街道走るのと変わらないペースで走れるわけ? というかいきなり走り出すから何事かと思ったよ」


 普通に歩けば2時間は掛かる道のりを20分足らずで走破した無月たちは休憩を取ることなく森へ入った。

 このテグの森は王都周辺にある狩場の中ではかなり広い部類に入る。

 この森にいる魔物はゴブリンやコボルト、スライムといった所謂最下級の魔物が大半を占めており、それ以上の数の獣が生息している。

 実際のところこの森は冒険者にはあまり人気がない。

 魔物は弱いが経験の少ない者にはこの森は広すぎる、広い森の中を探し回っても居るのは最下級の魔物で中堅以上の冒険者には旨みがない。この為この森に入ってくるのは狩人が殆どで魔石を狙ってくる冒険者は無いに等しかった。

 この世界は魔力をその身に宿す者がほとんどだ、だが魔法の使用によって放出される魔力を感じ取ることはできても体内にある魔力を感じ取ることのできるの者は驚くほど少ない、だからこそ魔力を測る魔法なんてものがあるわけだが。

 身体強化などの魔法は熟練者になれば体外への魔力の放出を抑え周りに気取られず発動できてしまうほどだ。

 つまりこの森で魔物を狩ろうとする場合広い森の中を足跡などの魔物の残した痕跡だけを頼りに探し回らなければならないことになり、この上なく非効率なのである。

 しかし、無月に関してで言えばこれは当てはまらない。

 召喚の時に勇者たちの魔力を感じ取ったように無月には魔物の居場所など手に取るようにわかる、むしろ出来て当たり前、を察知することもできないようでは無月は遥か昔に屍を晒している。

 それに加え鬼の身体能力で即座に獲物へと向かうことができる無月とって森の広さなど問題にならない。

 つまり。


「獲物を見つけたから走った、それだけだ」


 である。


「どうやって見つけたのさ・・・」


「考えるな、感じろってやつだ。それより」


 警戒して距離を取っていっていたゴブリンに一瞬で間合いを詰める無月。


「「ギッ?!」」


ドスッ


 左右に並んでいたゴブリンの胸へと諸手突きを打ち込み二匹の胸を陥没させ振り返る。


「取るもん取ったら次行くぞ」


「「「「・・・・・」」」」


 最下級とは言え事も無げに素手でゴブリンを全滅させた無月を4人は呆れたように見つめていた。


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