第2章-4
宴は2時間程続いたが荒太は移動する度に質問攻めにあった。ほとんどがバンドの事だ。なるほど荒太は確かに雪白村のホープであるみたいだ。
「ジャンルはどんなのやってんの?」
「基本はハードロックだな。でもいろいろやってるよ。バラードもポップも」
「曲は全部荒太が書いてるんだろ?」
「いや、圭一が作った曲もあるよ」
「どうでもいい話だけど『大津圭一』っていう名前、略すとOKだよね?」
「本当にどうでもいい話だな。でも本人それ言われるの結構不快らしいぞ」
そこでまた野菜スティックに手を伸ばす。今日、これとポテトしか食ってないぞ。なんだか食欲がない。また席を移動する事にした。ほとんど立食パーティーと化している。
「荒太君は2次会―いや、3次会か。カラオケは行くの?私、荒太君の生歌、久しぶりに聴いてみたいなあ」生歌聴きたきゃ東京に来い。荒太はそう思ったが口には出さなかった。
「お前、生歌聴きたきゃ東京行くこったな」敦也が割り込んできた。こいつは読心術を使えるのか!
「荒太はカラオケには行かないよ。明日は大事な用があるんだよな」敦也が代わりに答えた。
「なあに?大事な用って」
「玲奈ちゃんに会いに行くんだよ。なんか話したい事があるんだって」荒太は渋々答えた。
「玲奈ちゃん―ってああ、比奈ちゃんの妹の!」久しぶりに聞いた名前だったためかかなり驚いた様子だった。
比奈子には妹がいた。―蓮井玲奈―年は4つ下で今は高校2年生だ。荒太達と同じ雪白高校に通っている。もともと荒太が北海道に帰ってきたのは玲奈ちゃんから「大事な話がある」と電話があったからである。墓参りも同窓会も敦也が帰ってくると聞いて―誰から聞いたのかは謎だが―ついでに企画したものだったわけだ。
「というわけで―」敦也は「ウホン」と咳払いしてから声を張り上げた。「そろそろ時間でーす。みんな金寄越して外出なさーい。2次会は居酒屋『遊味亭』で行いまーす」
荒太は敦也にお金を渡すと早々に店を出た。雪はとっくに止んでいる。
「今日はどこ泊まるつもりなんだ?」
「いや、普通に実家帰るよ」
「あっそうか。お前んちって蓮井さんちの近くなんだよな」
「じゃあ、またどっかで会おうぜ。元気でな」
「イエーイ」
そしてハイタッチで終わる2人。