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感謝の年賀状

作者: 細井雪

なろうラジオ大賞7への応募です。1000文字。




 今年もあと僅かとなった、年の暮れ。


「おばあちゃん。年賀状買ってきたよ」

美空(みく)ちゃん、ありがとう」


 同居している中学生の孫の美空が、頼んでいた年賀状を持ってきてくれた。


「おばあちゃんマメだよね。書くの大変じゃない?」

「喜んで貰えたら嬉しいからねぇ」


 美空は年賀状をテーブルに置くと、友達と遊んでくると言って部屋を出ていった。

 買ってきて貰った年賀状を見る。

 昔は何十枚と書いていた年賀状も、段々と数が減り、いつからか年賀状じまいという言葉を見かけるようになった。

 私も最近では学生時代からの友人達や仲良くしてくださっている方々と、亡き夫との縁を結んでくださった仲人の方くらい。

 ……一枚、余ってしまった。

 残すのはもったいない。

 でも他に送るあても……。


「――あ」


 ふと、思い浮かぶ。

 今まで出したことはないけれど、もし出せるなら――。



*



 ――年明け。


「めっちゃ達筆な年賀状来たんだけど!?」


 楽屋に持ち込まれた一枚の年賀状に、その場は騒然とした。

 新春特別番組へ出演するために待機していた、セブンファーヴァーという七人組男性アイドルグループだ。

 平均年齢二十五歳の若者達は年賀状を囲んだ。


「え、ファンレターじゃなくて?」

「何で年賀状?」

「俺達のファン?」

「誰から?」

富岡幸子(とみおかさちこ)さんだって!」

「読んで、読んで!」


 うながされて一人が年賀状を読み上げる。


『謹賀新年


セブンファーヴァーの皆様には輝かしい新年をお迎えのことと

お喜び申し上げます

私は皆様のファンでございます


きっかけは夫に先立たれて気力をなくしていた私に

孫が推しの曲を聞かせてくれたことでした

それまで私は推しというのを知りませんでしたが

元気な歌声に勇気づけられ気付けば私の推しにもなっていました


それからというもの孫に連れられてカラオケで歌ったりもしました

また夏に骨折をして入院した際には一緒に歌を聞くお友達もできました

今は孫とライブに行くことを夢見てリハビリに励んでおります

皆様のご健康とご繁栄を心よりお祈り申し上げます


 令和八年元旦

 富岡幸子』


 ぎっしりと書かれた文字を七人は見つめた。


「年賀状、最高……」

「俺、仕事頑張る」

「幸子さんがリハビリ頑張ってくれるために俺も頑張る」

「世界中の頑張ってる皆のために頑張る」

「いつかライブに来てくれるかな!?」

「めっちゃ歌いたくなってきた!」

「よし、歌おうぜ!」


 賑やかな声が楽屋を出て行くのを、テーブルの中央に置かれた年賀状が見送っていた。




アイドルグループ名を考えるのが一番難しかったです……。

推し活は元気の源。

読んでいただきありがとうございました!

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