第2話 山雨
梅雨が終わりじめっとしたあの感覚を残した
高校2年の夏の日
私は特に友人などはできなかったが
知り合い程度の同級生はできた
部活はどこにも所属することなく帰宅部だ。
今日の授業も終わり
教室のみんな何処に遊びに行こうとか
今日バイトだるいわぁ等
各々放課後何するかを話していた
時間になり担任が来てみんなは話を中断し、
帰りのHRが始まった
帰りのHRの終盤担任からの話になり
「最近【喪失者】関係の事件が増えてるから
帰り道に気をつけて夜もあまり出歩かないように...以上です...。」
【喪失者】とは
他人に大切なモノを奪われたと叫び
他人を襲う姿が異形な人達
凄く凶暴で警察でも抑えるのが難しいという
その【喪失者】関係の事件が増えたせいで
塾やバイトしてる生徒は
時短・リモート・休みなどになっている
「ほんっと勘弁してほしいよね」
「これのせいでどこも行けないのまじつら...」
「物騒だからうちの塾はリモートだってー」
「うらやま...こっちは時短になったけど
教室まで来いだってさ」
「うちのバ先閉店時間早くなったから
早く帰れるわ」
「まじ!?じゃバイト終わったら遊び行こ!」
「皆さん静かに...。」
(まぁ学校の日以外あまり外に出ない私には
関係ない話だな。
それにしてもうちの担任相変わらず声に覇気がないな)
なんて色々考えてるうちに帰りのHRと挨拶も終わり
みんなそれぞれこれから何をするか話しながら
教室を出ていく
私には一緒に帰るほどの友人など居ないので1人で帰路に着く。
今日もいつも通る近道から帰宅する
その道は学校の裏門から出てすぐの山道で、
学校からどの道より早く住宅街へ行ける山道だ。
学校からはその山道は暗く崖になっている場所があるため危ないので立ち入らない様にと、
帰りのHRの時や長期休みの前などによく忠告される。
大半の生徒はその忠告を聞かず
私の様に住宅街住みで少しでも早く家に帰りたい
生徒はここを通って帰宅している。
住宅街はちょっとした山を挟んですぐにあり
しかし表門から帰ると山を迂回する道を通るので遠回りになって帰るのが遅くなってしまう。
時間にしたら20分くらいだが学生にとっては大切な20分。
たかが20分、されど20分、なのだ。
みんな早く家に帰りゲームや塾・バイトの準備、勉強などしたいのだ。
だが流石に梅雨の時期は危ないと思ったのか
梅雨の時期はみんな表門の遠回りルートから
帰宅していた。
今は梅雨も終わり
みんなは嬉々として山道から帰宅している。
しかし今日は梅雨が戻ってきたのかと思うほど曇りジメジメしていた。
今にも雨が降りそうだが、
今日は親から晩御飯の準備を頼まれており
早めに帰宅したかった。
晩御飯の献立を考えながら帰り道を歩いていたら
ポツ... ポツ... ポツ... ポツ...
ポツ... ポツ... ポツ...
「まずい雨降ってきた...」
生憎私は傘も折りたたみ傘も持ってきておらず、
既に少し濡れてしまった
(これ以上雨がひどくなったらカバンの中の物も
びしょ濡れになってしまう...)
そうなるとやばいので
足元に気をつけながら小走りで山道を進んでいく。