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抜き打ち検査の不穏な告知と疑惑の目

月城ユウトは、七瀬みことの文化祭での動画流出危機、そして一ノ瀬すみれの小説特定騒動を乗り越え、学園のヒロインたちとの絆を確固たるものにしていた。彼らの秘密を守るという使命は、もはやユウト自身の存在意義の一部となり、ヒロインたちもまた、彼を「秘密を共有するかけがえのない仲間」として深く信頼し始めていた。しかし、平穏な日常の裏には、常に新たな危険が潜んでいる。今度は、御影ことねの「秘密」が、学園関係者の目に触れる寸前まで迫っていた。

星見高校では、年に数回、教師による生徒指導の一環として、風紀委員を伴って特定の店舗への抜き打ち検査が行われることがあった。これは、生徒のアルバイトや喫煙、飲酒などの校則違反を未然に防ぐための措置で、生徒たちからは「生活指導の抜き打ち」として恐れられていた。御影ことねは、風紀委員長として、この抜き打ち検査にも同行し、常に厳正な態度で臨んでいた。

しかし、その「抜き打ち検査」が、ことね自身の秘密を脅かすものになろうとは、誰も予想していなかった。 ある日の放課後、ユウトが教室で日直の仕事を終えようとしていると、職員室からことねの声が聞こえてきた。 「先生、明日の抜き打ち検査の店舗リストに、メイドカフェ『メルティリボン』が含まれているのは、どういう意図でしょうか?」 ことねの声には、普段の冷静さとは異なる、わずかな動揺が混じっていた。

ユウトの心臓が、ドクンと大きく鳴った。 『メルティリボン』。それは、ことねが妹の学費のために秘密でアルバイトをしているメイドカフェの名前だ。なぜ、その店舗が抜き打ち検査のリストに? 「ああ、御影。最近、あのメイドカフェでうちの生徒を見かけたという情報が複数寄せられていてな。風紀委員長として、君にもその現場を見てもらう必要があるだろう」 教師の声には、ことねへの信頼と、事態の深刻さを伝える響きがあった。

ユウトの脳裏に、文化祭前夜に見た不審な男子生徒の姿が再びフラッシュバックした。生徒会室に忍び込み、何かを盗み出していたあの男。まさか、あの時盗まれた情報の中に、メイドカフェのアルバイトに関するものがあったのだろうか?あるいは、単なる偶然の情報提供なのか?どちらにしても、事態は最悪の方向へ向かっていた。

ことねがメイドカフェで働いていることが、学校関係者にバレる寸前だった。もしそうなれば、彼女は風紀委員長の座を追われるだけでなく、退学処分になる可能性すらある。何よりも、彼女が妹のために必死に働いているという献身が、下世話な噂の種にされてしまうだろう。



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