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秘密の協力者たち:絆が織りなす連帯

最初に具体的な行動を起こしたのは、一ノ瀬すみれ自身だった。 「月城くん、待ってくれ。この投稿の目的は、私を特定することだけではない。私の小説の『筆致』を特定させ、そこから私の正体を暴こうとしているのだ」 彼女は、冷静さを取り戻すと、すぐにユウトに顔を向けた。 「であれば、この投稿への対抗策は、私自身の『筆致』を、敢えて曖昧にすることだ」 彼女はそう言うと、ユウトに目を向けた。ユウトは、その意図をすぐに理解した。

その時、七瀬みことが動いた。彼女は、ユウトとすみれの会話を聞き、そして自身の文化祭での経験を思い出した。彼女は、学内SNSで最も注目を集めることができる「学園の女王」だ。 (私も、協力する。月城くんのために、そしてすみれさんのために!) みことは、すぐに自分のスマホを取り出すと、学内SNSに投稿し始めた。 彼女は、投稿内容に、普段の優雅な言葉遣いを敢えて崩した、「ちょっとエッチ」な表現を交え、あえて「一ノ瀬すみれの筆致」に似せようとした。そして、その投稿の最後に、「私も最近、こんな小説を読んでドキドキしちゃってます♪誰か、オススメの作家さん教えてください♡」と付け加えた。 彼女の投稿は、瞬く間に「七瀬さんがこんな投稿!?」と話題になり、学内SNSのトレンドを席巻した。

続いて動いたのは、御影ことねだった。 彼女は、学内SNSでみことの投稿が話題になっているのを見て、そしてすみれがユウトと話しているのを見て、事態を把握した。 (匿名投稿の真犯人を特定することは難しいが、情報の拡散を止めることはできる!) ことねは、風紀委員長としての権限を最大限に活用した。彼女は、校内ネットワークの管理者に連絡を取り、学内SNSにおける特定のキーワード(例えば、「才女A」「エッチな小説」など)の検索を一時的に制限するよう要請した。さらに、クラス担任や生徒会役員にも連絡を取り、SNSでの過度な詮索や拡散を慎むよう、生徒たちに注意喚起を促す緊急放送を流させた。

そして、花園レイカが、意外な形で行動に出た。 彼女は、学内SNSでみことの投稿が話題になっているのを見て、そしてことねの行動を見て、ユウトがこの事態を収拾しようとしていることを理解した。 (私だって、月城くんに貢献できることがあるはずよ!) レイカは、自身の持つ情報収集能力と、これまで培ってきた社交性をフル活用した。彼女は、学内でも有数の情報通である生徒たちに接触し、今回の匿名投稿の「出所」を探り始めた。そして、校内で密かに流れている「才女Aの小説の作者は、とあるクラスの文学好きな男子生徒ではないか」という噂を、意図的に流し始めた。それは、ユウトを狙う第三者の目を欺くための、いわば「デコイ」だった。

最後に、桜井ゆづきが、静かに、しかし決定的な行動に出た。 彼女は、すみれの小説が特定されそうになっていること、そしてみことやことね、レイカがそれぞれ行動していることを、静かに見守っていた。そして、ユウトが、すみれの小説サイトの閲覧履歴を消そうとしていることに気づいた。 (これだけでは、足りない。本当に特定されないためには、もっと根本的な解決が必要だ) ゆづきは、誰も見ていないのを確認すると、自身の持つ「情報操作」のスキルを最大限に活用した。彼女は、かつて芸能界で培った、ネット上の情報を管理する知識と技術を持っていたのだ。彼女は、こっそりとオンライン小説サイトにアクセスし、すみれの作品のアクセスログと、IPアドレスの一部を、巧妙に偽装したデータで上書きした。さらに、学内SNSに投稿された「才女Aの告発」投稿のIPアドレスと、そこから遡れる情報についても、痕跡を辿れないように改竄を施した。まるで、見えない「情報工作」のように。


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