学内SNSの波紋と不穏な影
月城ユウトの日常は、学園のヒロインたちの「秘密の守り手」として、ますます緊迫感を増していた。彼は、七瀬みことの文化祭での危機を乗り越え、ヒロインたちとの絆をより一層深めていた。しかし、秘密を共有する者たちの運命は、常に新たな試練と隣り合わせにある。今度は、一ノ瀬すみれの「秘密」が、予期せぬ形で露呈の危機に瀕していた。
星見高校には、生徒たちが自由に交流できる学内SNSが存在していた。匿名での投稿も可能で、生徒間の情報共有や噂話の拡散にも利用されていた。一ノ瀬すみれは、学年トップの才女として、その知的な仮面の下で、密かに甘く「ちょっとエッチ」な恋愛小説を執筆していた。彼女は、特定のオンライン小説サイトで匿名で作品を発表しており、学内SNSとは無縁だと思っていた。
しかし、その平穏は、ある日突然破られた。 放課後、ユウトが教室で勉強していると、何人かの生徒がスマホを囲んでざわついているのが聞こえた。 「これ、やばくない?」「まじで?あの才女がこんな小説書いてるってこと?」 ユウトは、嫌な予感がして、そっと彼らのスマホ画面を覗き込んだ。そこには、学内SNSの投稿が表示されており、あるオンライン小説サイトのリンクと共に、以下のような文章が書かれていた。
【衝撃告発】星見の才女A、まさかの裏の顔!? 甘くエッチな物語の筆者は、あの模範生徒だった!
その投稿には、すみれの小説の一部が引用されており、その繊細かつ情熱的な筆致は、間違いなく彼女のものであると、ユウトには確信できた。そして、「才女A」という表現は、学内で「才女」と称される一ノ瀬すみれを指しているのは明白だった。
ユウトの心臓が、ドクンと大きく鳴った。 「一ノ瀬さんの……!」 学内SNSは、匿名投稿が可能であるため、一度拡散され始めれば、止めることは非常に困難だ。生徒たちは、好奇の目に晒されることに何の躊躇もなく、あっという間に情報は拡散されていくだろう。すみれの築き上げてきた「知の女神」という完璧なイメージは、一瞬にして崩れ去る危機に瀕していた。
その時、ユウトの脳裏に、文化祭前夜に見た不審な男子生徒の姿が再びフラッシュバックした。生徒会室に忍び込み、何かを盗み出していたあの男。まさか、あの時盗まれたものが、今回の騒動と関係しているのだろうか?




