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秘密の協力者たち:絆が織りなす連帯

最初に動いたのは、一ノ瀬すみれだった。 彼女は、混乱する会場の中、ユウトがコントロールパネルを必死にいじっている姿を見て、ふと閃いた。 (あの映像は、恐らくPCからプロジェクターに接続されている。であれば、PCの電源を切るか、接続を物理的に断つしかない!) 彼女は、冷静さを取り戻すと、すぐに舞台裏に駆け込んだ。そこには、PCが設置されており、スクリーンへの映像出力がされているのが見えた。 「月城くん!プロジェクターの電源コードを抜け!」 すみれの声が、混乱する会場に響き渡る。ユウトは、その言葉にハッとし、すぐにプロジェクターへと駆け寄った。しかし、コードは奥深く、手が届かない。

その時、御影ことねが動いた。彼女は、風紀委員長としての行動力で、すぐに会場の電源ブレーカーの位置を把握した。 「月城くん、プロジェクターの電源が無理なら、会場全体の電源を落とすしかない!」 彼女は、そう叫ぶと、非常口の近くにあるブレーカーボックスへと走り出した。

すると、花園レイカが、そのことねの行動を見て、咄嗟に反応した。 「委員長!わたくしが手伝うわ!」 彼女は、普段の自分では考えられないような素早さで、ことねの元へと駆け寄った。レイカは、花園家がかつて事業を営んでいた関係で、意外にも電気設備の知識があったのだ。彼女は、ことねがブレーカーボックスの鍵を探している間に、隠されていた鍵を見つけ出し、素早く箱を開けた。

そして、最も衝撃的な行動に出たのは、桜井ゆづきだった。 彼女は、ステージ上で立ち尽くすみことの元へと歩み寄ると、その体をそっと抱きしめた。そして、会場のざわめきがピークに達した瞬間、突如として、ステージマイクを手に取った。 「皆さん、どうか落ち着いてください!」 彼女の声は、普段の弱々しさとは異なり、会場の奥まで響き渡る、明瞭で力強い声だった。 (これは……桜井さんの、あの時の……!) ユウトは、ゆづきの声が、かつての「天才子役アイドル」としての声であることを瞬時に理解した。

ゆづきは、マイクを握りしめ、静かに、しかしはっきりと語り始めた。 「今、スクリーンに映っているのは、七瀬みことさんの……いえ、彼女の『努力の結晶』です。彼女は、皆さんの知らないところで、こんなにも真剣に、夢を追いかけているのです」 彼女の言葉は、完璧な美少女の裏側にある「努力」という側面を強調し、嘲笑の雰囲気を少しずつ和らげていった。彼女は、観客の視線を自分に引きつけることで、みことから注意をそらそうとしていた。

その間に、すみれが指示した通り、ユウトがプロジェクターの電源コードを引き抜こうと奮闘し、ことねとレイカがブレーカーを落とそうと協力していた。 「ここよ、月城くん!もう少し!」 すみれが、プロジェクターの隙間を指し示す。 「いっせーのーで、で落とすわよ、委員長!」 レイカが、ことねに合図を送る。

そして、桜井ゆづきの言葉が会場に響き渡る中、ついにユウトがプロジェクターの電源コードを引き抜くことに成功した。 同時に、御影ことねと花園レイカが、ブレーカーを「オフ」にした。 会場は、一瞬にして静まり返り、真っ暗になった。


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