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僕だけが知っている、彼女たちのヒミツ  作者: すぎやま よういち
秘密の共有と信頼関係の構築
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ユウトの「探し物」と図書室への足

月城ユウトは、七瀬みことの秘密を目撃して以来、少しだけ日常が非日常に侵食されているのを感じていた。いや、正確には、彼自身の観察眼が、今まで見過ごしていた「秘密の気配」を、より敏感に捉えるようになっていたのかもしれない。しかし、彼が特別変わったわけではない。彼は相変わらず、地味で目立たない存在だった。

その日、ユウトが図書室に向かったのは、全くの偶然、いや、必然的な「探し物」があったからだ。 彼のクラスで、先日の数学の小テストの採点が返却された。結果は平均点。悪くはないが、もっと上を目指したいユウトは、特に苦手だった「場合の数と確率」の分野でいくつか間違えていた。

放課後、クラスメイトの多くは部活動や友人との遊びに繰り出していたが、ユウトはそのまま教室に残っていた。彼は自分の答案を見つめながら、どうすればこの苦手分野を克服できるかを考えていた。 「確か、図書室に確率の分かりやすい参考書があったはずだ」 数学教師の山崎先生が、以前授業中にそう言っていたのを思い出した。山崎先生は、生徒一人ひとりの学習状況をよく把握しており、苦手分野の克服に熱心な教師だった。彼もまた、職員室で採点作業や進路相談を行っていることが多いが、この時間はまだ生徒対応で忙しいだろう。

ユウトは、放課後のざわめきが落ち着いた頃合いを見て、静かに教室を出た。 校内は、部活動の生徒たちが活発に動いている時間帯だ。体育館からはバスケットボールのドリブル音が響き、グラウンドからはサッカー部の声が聞こえる。文化部の棟からは、軽音部の演奏や美術部のカチャカチャとした音が微かに漏れてくる。ユウトは、そういった喧騒を背に、静かな図書室へと向かった。

図書室の入り口に立つと、彼はお馴染みの光景を目にした。試験前のせいか、いつもより多くの生徒が熱心に自習に励んでいる。奥の閲覧席には、集中して参考書を読んでいる生徒や、静かに話し合いながら問題を解いているグループが見えた。図書委員の生徒が、返却された本を棚に戻す作業をしている。

ユウトは、入り口のカウンターで図書委員に軽く会釈すると、お目当ての数学参考書があるはずの、奥の専門書コーナーへと進んだ。棚に並んだ分厚い参考書の中から、目的の「確率演習の基礎」という本を探し始めた。 その時だった。


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