自問自答の果てに
ユウトは、それぞれのヒロインとの関係性を反芻するたび、自分の心の中で芽生えている感情が、単なる「仲間意識」だけではないことを、明確に自覚し始めていた。
七瀬みことの無邪気な笑顔を見ていると、心が温かくなる。 一ノ瀬すみれの情熱的な瞳に触れると、胸が高鳴る。 御影ことねの優しい気遣いを感じると、安心する。 花園レイカの素直な照れ顔を見ると、愛おしくなる。 桜井ゆづきの孤独な魂に寄り添うと、守ってあげたいと強く思う。
彼らは皆、学園では「完璧」を演じている。だが、ユウトの前では、その仮面を脱ぎ捨て、人間らしい弱さや感情をさらけ出す。その「素顔」を知り、受け入れたことで、ユウトの心にも、彼女たちへの特別な感情が、知らず知らずのうちに育まれていったのだ。
「この関係は、秘密に支えられているだけなのだろうか？」
この問いは、もはやユウトにとって、答えのない問いではなかった。 確かに、彼と彼女たちの出会いは「秘密の目撃」という偶然によってもたらされた。秘密が絆を深めるきっかけになったのは事実だ。しかし、彼らがユウトに心を許し、素顔を見せるようになったのは、ユウト自身の「誠実さ」と、彼が「秘密を嘲笑うことなく真剣に受け止め、決して漏らさない」という「固い決意」があったからだ。そして、その過程で、ユウトは彼女たちの人間らしい魅力に触れ、惹かれていった。
彼らは、ユウトの目に映る「完璧ではない自分」を受け入れてくれた。そして、ユウトは、彼らの「完璧ではない自分」を愛おしいと感じるようになった。 それは、もう、ただの「秘密の仲間」では片付けられない、紛れもない「好意」であり、「恋心」だった。
ユウトの心は、複数のヒロインからの好意と、彼自身の内側で芽生えた特別な感情との間で、大きく揺れ動いていた。彼は、この複雑な関係性にどう向き合っていくべきなのか、まだ答えを見つけられずにいた。
学園のヒーローでも、完璧な王子様でもない、ごく普通の月城ユウト。 彼とヒロインたちの「秘密」が織りなす物語は、まだ始まったばかりだ。 この先の展開が、彼の心を、そして彼女たちの心を、どこへ導いていくのか。 ユウトの自問自答は、新たな物語の幕開けを告げていた。
