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チーム1:1階の探索。
薄暗い廊下をズンズン進む有翔を鮫島が追いかける。鍵のかかった部屋以外は片っ端から扉を開け放ち部屋の中の棚やら箪笥を引き出している。これではまるで盗賊である。
「……ちったァ怖がるか警戒ぐらいしねえのか。つーかさっきからアンタずっと黙ってんな、もしかして怖いんじゃ……会長?」
呆れながら有翔の様子を見ていた鮫島が振り返ると、後ろにいたはずの会長がいつの間にか消えていた。
「あれ、ハルくんは?」
ベッドの下から埃まみれの有翔が顔を出す。
「いねえ、あの人ホラー苦手なんだろ?もしかしたら怖くなって帰っ……「私がなんだって?」いやすみませんなんでもないッス」
隣の部屋の物陰からヌッと驚かすように顔を出す。
「あー!ハルくんひとりで勝手に危ないよ!……あれ、それどしたの?」
「有翔に言われたくないなぁ、顔真っ黒じゃないか……ふふん聞いてくれたまえよ。電気は通ってないかと思って配電盤室探してたのさ、あんまり暗くて誰かが怪我するといけないしね。残念ながらもう古くて電気は通ってないみたいだったけど…これはその代わりの収穫さ」
埃で汚れた有翔の顔をハンカチで拭ってやりながら、反対の手で大量の鍵をドヤ顔で掲げる。いくつか錆びているようだが使えなくはなさそうだ。
「さすがハルくん!」
「でもアンタ、よく配電盤室なんて場所分かったな」
「……冴える私の勘というやつさ。さぁ褒めてくれ褒めてくれ!早速使おうじゃないか、はいあげる鮫島くん」
「なんで俺」
鍵を受け取った鮫島は”そうこ”と書かれた扉に差し込む。ガチャリと鍵穴が回る音が鳴る。
「……ん、開かねえ」
解錠されたはずの扉は鮫島が押しても引いても開く気配はない。
「クソ、開かねえっつーか重てえ。なんか引っかかってんのか?」
「なら3人で一緒に引いてみよっか!大きなカブみたいだね」
3人の手がドアノブを握り込む。
「じゃあいくよ?せーのっ」
僅かに開いた扉の隙間には無数の人間の手が開けさせまいと張り付いていた。