表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヨロスブ・繋  作者: 有氏ゆず
36/38

7-3




───しかし、いくら経ってもそんなものは巡ってくることはなく、腹部を抉られる衝撃も襲って来ない。ゆっくりと瞼を持ち上げる。


パックリと腹部の衣服だけが裂け、肌に触れるスレスレで手刀は止まっていた。




「……クソっまだこいつこんなもの残して…!どれだけ我が強いんだよ…ッ」


目の前の男はもどかしそうに表情を歪めている。よく見ると源氏の足元が光っていた。


「……あの時のハンカチ…?」


暗闇で襲われた際捻った足首を彼が処置してくれたことを思い出す。偶然ではあるが、わずかながらに残した彼の朧げな意識が男の動きをとどめてくれていた。


「これだから…!奉日本の血は生き汚いんだ!お前らはどこまで俺を……ッ」


きっとこれは男にとって計算外のことなのだろう、苦し紛れに吐く言葉には余裕がないように見えた。これは好機、逃せば次はないことを確信する。


先ほどのフラッシュバックで喉元でつっかえていた引っ掛かりのような記憶を思い出していた。あの暗闇に現れた、真っ黒な悲しそうな化け物、いや女性が残した自分だけが聞き取れた言葉。確証はない、それでも襲うことなく託すように残していったものであるのなら、それはきっと意味あることのはずなのだ。


「──、─ジ──────ナ…」

「……何?」


肺いっぱいに空気を取り込み、講堂に響き渡るよう、深層意識の奥深くで眠る彼に届くように叫ぶ。






「─────サミジナ……お前の名は、サミジナだ!!」






ミシ、と何かがひび割れる音とともに男は胸を抑えながら苦しみ出す。


「グ、ウウウアアアァァ!?クソ、どうしてお前がその名を、我が名を…!!」


低い獣のような呻き声を漏らし、身体からは瘴気のようなものを出しながら膝から崩れ落ちた。真名を看破された獣はみるみるうちに力を弱らせていく。


「クソ……!やられるか、ここで我が怨念潰えてなるものか……ッ」


往生際の悪いことに悶えのたうち回りながらも、男は源氏に手を伸ばす。会長の身体を捨てて源氏を食らおうと最後の力を振り絞っていた。


「ふざけるな、ふざけるな……ッ朽ちる前にお前の身体を……」

「させるか!!」


男の身体を駆け寄った有翔が押さえつけ、落とした麻酔銃を拾い上げた古が男の眉間に銃口を向ける。




「おしまいだ、サミジナ。会長の身体を返せ……!!」


トドメを刺すように思い切り引き金を引いた。ドス、という鈍い音と共に男は静かに倒れ込んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ