6-1
大広間
男が気を失った瞬間、ポルターガイスト現象は落ち着き辺りはしん、と静まり返った。
「ったく…よォ、これどーすんだァ」
静かに寝息を立てて眠る男の顔はやはり血の気がない。まだ体は乗っ取られたままなのだろうか。
「暴走が止まっただけだ、会長が戻ってきた確証もない…山田もまだ帰ってきてない、か」
事態が好転した訳でもない、完全に手詰まりだ。会長の体を乗っ取った男はこの家に取り憑いた地縛霊だと名乗っていた。会長の家の事情を鑑みてもそれなりの怨恨を持つものは多いだろう。
強い負の感情が攻撃性の高い強い現象として現れることはありえない話ではない、のだが。先程まで起こっていたポルターガイスト現象もそうだが、この家からかなり離れた距離に住んでいる会長を遠隔で操作するほどの力、そして何より会長を分裂させるほどの能力がただの地縛霊にできることだろうか。
「…あぁくそ、分かんねえ」
お手上げだ、と音を上げそうになったその時。
「コサキ!無事か!?」
「姉さん!!」
山田と源氏を担いだ鮫島、犬飼が同じタイミングで別の扉から入ってきた。山田は明臣や直樹も連れている。シンやレナとどうやら一緒に来ていたようだ。
「奇跡的に全員集合したな」
「よかった、みんな無事だったんだね。ひかちゃんは足大丈夫?」
「あああぁぁぁ姉さん、姉さん…!俺は元気ですよかった、よかった…!」
わらわらと集まり出す面々を見てほんの少しだけ緊張の糸が解ける。なんだか長いこと会っていなかったかのうな、久しぶりに会うような気分だ。
「会長は…静まったのだな」
「一時的に、だが。いつ起きるかまだ分からない。手がかりは見つかったのか?」
「ふむ…ならば今のうちに話してしまった方が良さそうだな、アキ」
「…そうですね」
険しい表情で明臣は寝転がる会長の顔を見下ろすと俺たちに向かって振り返った。
「今、ハルにはある地縛霊が取り付いています。奉日本家に強い恨みを持った寺本の関係者であり、奉日本家を滅ぼすためにハルの体を乗っ取ることに成功し私たちを屋敷に閉じ込めた…そこまではいいですか?」
「…あぁ、シンが今のところ鎮めてくれているが」
「肉体の気を失っているに過ぎない。きっとこのまま目が覚めてもハルは乗っ取られたままでしょう、現状は変わっていません」
「じゃあどうしたらいいの、会長の中にいるやつってもう追い出せないの?会長の魂はもう帰ってこないのかよ」
食い気味に犬飼が切り込む。
「…いえ、手はあります。とはいえ魂を分割させられて消されたのです。ハルの魂と意識が完全に帰ってくる保証はないですが、でも今の私たちにできる手がかりと手段はひとつしかありません」
地下で拾ったノートをテーブルの中央に置く。
「経緯も含めて説明しましょう。私の話を聞いてください」




