5-1
断章
周囲の話し声で目が覚める。重たい瞼を持ち上げると刺すような照明の明かりで視界が眩む。
「…ここ、は…?」
俺は確か、母さんに会うために太陽の光に焼かれながら叔父と塔へ向かって、母さんと会って、後ろから誰かに襲われて……母さん、母さんはどこに行った?起きようとするが体が動かない。身体が悲鳴をあげるように痛む。よく見ると手足は鎖で拘束され寝かされている。見知らぬ男が顔を覗き込んだ。
「これから12回目の実験を開始する」
白衣を着た集団が俺を見ている。ただならぬ雰囲気にさあっと血の気が引いていく。動悸が止まらない。何が起きているのだろう。
「あの、何を…」
男が手元で操作を始めたかと思うと頭上で機械の振動する音が響いた。細かい刃が回転しゆっくり俺の足へ向かって下降する。
……あれはノコギリ?
理解してしまった。
今から俺はあれで切り刻まれる。
「っ、いやだ、いやだ待って、そんなことしたら足、が、あ…っああッあぁぁぁッ!」
脳までビリビリと痺れる。血しぶきが上がる。いたい、痛いいたいいたい何が起きている、脳の処理が追いつかない俺の足、あしが……潰れている。
「止めろ!薬剤投与急げ!」
白衣の女が腕に赤い液体を注射器で流し込む。
「っかは、ァ!?」
ドクンと心臓が跳ねた、瞬間。切断面が潰されたはずの足が再生していた。おぉ…と周囲がどよめくのが聞こえた。ドクドクと身体中脈打つ。恐怖と混乱で震えが止まらない。指先まで冷たくなっていくのを感じた。
「実験成功。四肢の再生は問題なさそうだ。次は頭蓋と胴体へ移る」
男の言葉にゾッと背筋が凍る。
「…ッ嫌だ、まって、なん…ぐ、ッああアぁァッ!」
俺の言葉なんか誰にも届かないとでも言うように。
「腹部、成功」
潰されて
「頭蓋、時間はかかるもの成功」
切断されて
「眼球、神経に異常は残るものの95%再生可能、成功」
溶かされて。
悲鳴をあげる間もなく手、足、頭、胴体、あらゆる手段で切断、圧潰、燃焼、溶解が繰り返された。
その度に何かを流し込まれる。体が燃えるように熱い。心臓が破裂してしまいそうなほど体内の拍動が全身に響き渡る。恐怖と痛みで気が狂いそうになる。いっそ意識を手放せたなら楽なのに、殺してくれたら楽なのに、打ち込まれる薬剤が阻むように脳内に染み渡り溶けていく。
「やあ、鎌実くん。気分はどうかな?」
「……お、じさん、たすけ…」
張り付いた笑顔を見せながら叔父が再生したばかりの俺の顔を覗き込んだ。見知った顔に思わず安堵の息とともに眼球のあったであろう場所から涙が零れる。助けて、もうやめて、帰りたい、すがりつく俺の言葉を遮るように叔父の冷たい声が響く。
「助ける?誰をかな、まだ実験には付き合ってもらわないと」
一瞬で絶望の縁から突き落とされた。まるで足元に穴があいたように、俺はあなたを信じて母さんを…




