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山田
ひとり大広間を抜け出し廊下を走る。古と有翔が男の注意を逸らし山田をひとり逃してくれたのだ。咄嗟の判断とはいえ古も中々リスキーな判断をするものだと感嘆する。抜け出す直前何やら空から人が降ってきたような気もするが。
来た道を戻るようにして書斎の暖炉の床を持ち上げ地下への通路へ潜り込む。走り読みをしていた日記の内容を信じて辿るのならばきっと打開策はここにあると踏んだからだ。ここまで来る途中階段を通り過ぎたが鮫島と犬飼の姿は見えなかった。まだ源氏の回収に手こずっているのか、不安で足が止まりそうになる。しかし古と有翔に託されたのだ、早く手がかりを見つけ出さないと──
……人の気配がする。真っ暗な階段を下った先にいるはずのない人の話し声が聞こえてくる。ぞわりと全身の毛が逆立つのが分かった。
ゆっくりと、見つからないように階段を降りた、つもりだったのに。残酷にもカツンッと蹴飛ばした小石が転がり落ちていく。
「だれ?」
階段の下の扉が開いた、あぁ我終わっ……
「あれ、ダーヤマ先輩?」
ひょこ、と扉から直樹と明臣が顔を出した。
「あ、ああああ良かったあああアキぃぃショーゴォ…」
緊張が一気に解けたのか情けない声と共に足の力が抜け座り込んでしまった。
「えっちょっと、大丈夫?」
慌てて駆け寄ってきた後輩に手を差し出されてヨロヨロと立ち上がる。いや本当、中々にこれは情けない。
「す、すまない…どうして2人ともここに……?」
ニコニコと明臣が答える。
「様子を見に来ちゃいました。仮にもうちの敷地ですし。玄関があかなくなっていたので裏口からお邪魔させていただいた次第です」
ふふん、と得意げな顔を見せる明臣に対し直樹は少しげっそりしたように見えるのは気のせいだろうか。
「ところで景國さんは1人なんですか?ハルはどこに?」
「そ、それが……」
〜〜〜かくかくしかじか。
「ふむ…ほら私の推理通りじゃないですかぁ!」
「会長が分裂して乗っ取られてるとかフツー信じるワケないでしょ!?」
「でも事実なんですよねえ」
頭を抱える直樹をよそに明臣は実験室の戸棚をゴソゴソと漁り始めた。
「ここに何か手がかりがありそうですよねえ、私の勘ですけど」
「我もそう思って降りてきたのだ」
「…なんですか?これ」
山田に手渡されたノートを受け取り訝しげにペラペラとめくる。
「日記、だと思われる。ここで拾った故、多分この研究室の主のものではないかと思って降りてきたのだ。アキにも読んでみて欲しい、我だけではとても」
どこか山田の表情は重苦しい。
「…分かりました。少し待っててください」




