3-5
居残り組
「あった、これじゃない?」
ぴょこんとレナが机の下から顔を出す。念の為、と一度本家に寄り、ただいま会長の部屋を物色している真っ最中である。プライバシーなんてあったもんじゃないが日頃の彼の行動に被害を受けている者からしたら自業自得、とも言えるかもしれない。
「ナイスです、ハルのことだから下調べはしている予想は当たりましたね」
段ボール箱の中に入った分厚いファイルを取り出しペラペラとめくる。
「…げえ、こんなにあるの」
「いいんだよ、将吾は生徒会の仕事でもやってれば?」
「うるさいな、もうとっくに終わらせたよ。舐めないでくれない?」
床に寝転がる神々廻の頭上で直樹とレナがキャンキャンと言い合っている間、明臣は素早く資料に目を通していた。
「おいヒショ、何か収穫でもあったのかァ」
「…まあそうですね、なんとなくは」
一通り確認するとぱたん、とファイルを閉じる。
「…まず、今回ハルたちが行ったであろう屋敷は寺本の別荘のうちの一つで、かれこれ70年近く誰も住んでいない廃墟です。古い建物ですからね、歴史的価値もあったそうですが何度か建て壊しの話が出ていたみたいです。でも、できなかった」
「…できなかった?誰かが反対したとか?」
「その屋敷に入った人間の半数が精神に異常をきたし、自殺する者が後を立たなかったようです。不吉だからってそのままにしていたみたいですよ」
「心霊スポットらしい話になってきたね」
「ふふ、でしょう?それと気になる記載がありまして…自殺を図る前に何人かはこうも言っていたそうです。『ドッペルゲンガーに出くわした』って」
部屋の中にいる全員の顔が一瞬でこわばるのがわかった。先ほどの出来事を思い出し背中に冷たい汗が伝う。
「待って、それってさっきの会長…?」
「それで私もついさっき合点がいきました。実はハル、昔あの洋館に1度行ったことがあるんですよ。いや、正確には連れていかれて置いてかれた、なんでしょうけど…お祖父様も嫌なこと考えますよねえ」
明臣は渋い顔をしながら小さくため息を漏らす。指でトントンと机を叩く様子は苛立っているようにも見えた。
「まぁ三日ほど行方不明になってひとりで帰ってきたんですけどね、確か当時私含め6歳の頃の話で記憶も曖昧ですし、私はその時何も知らされていませんでしたし。どうやってこの山から帰ってきたのか誰も分かりませんでした。ただハルは酷く衰弱していて……何も覚えていないようだったと聞かされています。今回の件で私が引っかかったのはこれが原因です。"あそこ"には何かがある、それにハルがまた何か巻き込まれている」
ピリついた空気を纏いながら明臣は段ボールから家系図を取り出し机に広げた。
「その呪われた屋敷とやらに最後に住んでいたのは寺本鍬夫、とその妻と息子です。残念ながらこの家系図には鍬夫さんしか乗ってませんし、その鍬夫さんは早くに病死されたみたいです。そもそも彼の病気が元でここへ移住したみたいですし…奥さんもここで亡くられているようですね、死因は殺害されたと記載されています」
「……じゃあ息子は?どこかに引き取られたとか…?」
「…その息子に関する資料が一切ないんです。これだけ資料が山のようにあるのに不自然にそこだけ抜け落ちている、というより消されている方がしっくりくるような。彼は亡くなったのか、それともどこかに預けられたのか。分かったのは彼の名前と母親だけです。
───息子の名は鎌実、母親は常磐ゆり子」




