同級生に振られ、つらい毎日。しかし、疎遠だった年下の幼馴染が俺に熱い想いを伝えてきた。同級生はその後、俺を好きになる。でも間に合わない。幼馴染とのデレデレ、甘々、ラブラブな青春が始まろうとしている。
俺は森夢康春。
「俺、冬沼さんのことが好きなんだ。付き合ってくれ!」
「そんなことを言われても困るんだけど……」
「困ることなんてないと思う。お願いだ。俺、冬沼さんと恋人どうしになりたいんだ!」
高校一年生の三月下旬、まもなく終業式。
そういった時に、俺はクラスメイトの冬沼さんに告白している。
場所は、校舎の奥の方。
冬沼さんは、ポニーテールの美少女。人と接することは、あまり得意な方ではない俺にも優しく接してくれた女の子。
俺は冬沼さんのことが好きになっていった。
しかし、高校二年生になるとクラスが違ってしまう。クラスが違えば、話す機会も大幅に減ってしまうだろう。
今告白して、恋人どうしになるしかない!
俺は冬沼さんに告白をすることにした。
しかし……。
「森夢くん、わたし、付き合っている人がいるの」
彼女の口から出て来たのは、思いもよらぬ言葉だった。
「つ、付き合っている人がいるって……」
「そうよ。森夢くんと違って、イケメンの人。隣のクラスの」
「隣のクラスのイケメン……」
そう言われればすぐに理解できるほどの人物。
「あなたとは大違い。わたしも彼が好きだけど、彼もわたしのことが好きなの」
うっとりとした冬沼さん。
「だから、あなたの告白は受け入れられないわ」
「そんなこと言わないで。俺、冬沼さんのことが好きなんだ。そのイケメンよりも冬沼さんが好きなんだ。イケメンじゃなくて、俺と付き合ってくれ!」
俺は彼女に頭を下げる。
「いくら言っても無駄よ」
「俺にもチャンスがほしい」
「そんなのあるわけないじゃない。第一、なんでチャンスがあると思ったの?」
「だって、冬沼さん、俺にいつも優しくしてくれたじゃない」
「普通の対応をしていただけよ。なんでそれで告白しようと思ったの? わたしは森夢くんのこと、今の今まで、ただのクラスメイトとしか思ったことはないわ」
俺はそれを聞いて、全身の力が抜けた。
ただのクラスメイトとしか思ったことがないなんて……。
「それなのに告白するなんて……。わたし、あなたとはもう口をきかないようにしなきゃいけないと思っている。おしゃべりをしたら、あなたに気があるって思われちゃうもんね」
「もう話もしてくれないんだ」
「だって、わたしにはイケメンの彼がいる。あなたとは住む世界の違う彼がいるのよ。彼とはこれからもクラスは違っちゃうけど、ラブラブな人生を歩んでいくのよ」
「冬沼さん、俺はそれでもあなたと付き合いたい……」
「いい加減にしてほしいわ!」
冬沼さんは、ついに怒り出した。
「あなたとは付き合えない、って言っているでしょう! もう帰るわ」
そう言い捨てると、冬沼さんは、そのまま校門に向かって歩いて行ってしまった。
俺はしばらくの間呆然とする。
「振られちゃった。これだけ想ってきたのに。どうしてこの想いが通じなかったんだろう……」
涙がとめどなく流れてきた。
「ああ、もう嫌だ。失恋するのってこんなにもつらいことだったんだ……」
寒くなってきた。このままでは雨も降ってきそうだ。つらくてたまらないが、とにかく家に帰るしかない。
俺は何とか気力を振り絞って家路についた。
春休みの間、俺は気力が湧いてこなかった。
振られたことを思い出す度に涙が出てくる。
好きなギャルゲーをしている時は、少し心が癒される。しかし、していない時は。また心が痛み出す。
俺は一人暮らし。両親は仕事の都合で地方にいる。
家事は全部一人でしなければならない。
食事はしなければいけないので、食材を買いに行かなければいけないし、自分で作らなければならない。
とはいっても気力がでてこない。
食欲もないので、なるべく手間のかからない料理でしのごうとしていた。
こういう時に、恋人がいるといいのに、と強く思う。
友人が俺を遊びに誘ってくれたりもしたのだが。それも断った。
今まで生きてきて、一番つらい春休み。
その春休みをなんとか乗り切り、迎えた始業式。
俺のことを好きな女の子が、これを機会に告白してくれたらいいなあ……。
そう思っていたのだが、そんなことはあるはずもない。
失意のまま家に帰った。
このままじゃ、今年も恋人を作るのは無理だなあ……。
ソファに座り、心が沈んでいた時。
ピンポーン!
誰だろう、と思い、玄関へ行く。
そして扉を開けると……。
「おにいちゃん。会いにきましたよ」
俺の前に美少女が立っている。
ストレートヘア。柔らかそうな肌。いい匂い。優しそうな表情。
俺の理想の人だ。
俺の学校の制服を着て、かばんとバッグを持っている。
こんな知り合い、俺にいたのだろうか。
しかも。おにいちゃんと呼んでいる。
どこかで会った気はするんだけど……。
俺は一生懸命思い出そうとする。
「おにいちゃん、もしかして、わたしのことを忘れていません?」
「うーん。昔、会っている気はするんだけど」
「もう。おにいちゃんたら」
少し口を尖がらせる少女。
「紗祐里ですよ。紗祐里」
「紗祐里ちゃん?」
俺はとても驚いた。
水島紗祐里ちゃんは、俺の幼馴染。一歳下。
幼稚園からの付き合いで、小学校二年生まではよく遊んだ。
仲が良かった。
俺は彼女に好意を持っていた。初恋だったと思う。
このままの仲が続いて、結婚できたらいいなあ、ということも幼いながらに思ったこともあった。
しかし、小学校三年生の時に、彼女は引っ越してしまう。
まだルインやメールではやり取りをしていなかった年頃。
お互いの家の電話ぐらいしか連絡を取る手段はなかったが、恥ずかしさがあり、俺には敷居が高かった。
紗祐里ちゃんの方も多分同じ気持ちだったのだと思う。
そのまま連絡を取り合うことはなく、紗祐里ちゃんのことは次第に思い出に変わっていった。
会うこともできず、連絡もしないのでは、仲を進めるどころか維持するのも難しいと思う。
今再会するまでは、紗祐里ちゃんは遠い存在になっていた。
今思うと、毎日電話をするべきだったのだろう。
幼い頃のことなので、難しかったとは思うが、それが出来ていれば、中学校の頃には恋人どうしになれたかもしれない。
当時の彼女もかわいかった。
しかし、今の彼女は、当時をはるかに上回るかわいらしさ。
こんな子を恋人に出来たらいいなあ……。
そう思うが、今は再会したところ。そんなことは夢のまた夢だろう。
それにしても彼女は、何をしにきたのだろう。
俺に会いにきた? 俺に恋をして、告白をしにきた?
いや、それはないだろう。もう疎遠になって長い年月が経っている。
その間、やり取りも全くしていない。
とはいっても期待はしたいなあ……。
そう思っていると、
「わたし、会いたかったです。今までずっと会えなかったですから」
と、紗祐里ちゃんは少し涙声で言う。
「わたし、寂しく思っていたんですよ」
「紗祐里ちゃん……」
「おにいちゃんに会えなくて、寂しくてつらくて。でもこうして会うことができた。おにいちゃん、好き」
紗祐里ちゃんはそう言うと、俺に抱きついてくる。
俺は紗祐里ちゃんのからだの温かさと柔らかさを感じて、一気に心が沸き立ち始めた。
そして、幼い頃の楽しい思い出が俺の心の中で浮かんでくる。
初恋の人、紗祐里ちゃん。
なぜこんなにかわいい子のことを思い出の存在にしてしまったのだろう。
紗祐里ちゃんは俺のことを、好きだと言っている。
俺はこの子の想いに応えなければいけないのでは……。
しばらくの間、紗祐里ちゃんは俺にそのまま抱きついていたが、やがて、
「わたし、おにいちゃんのお嫁さんになる為、この家に来ました。今日からわたしはおにいちゃんの家に住みます」
と甘い声で言った。
紗祐里ちゃんの温かさ、柔らかさ、そして甘い声。
俺の心は彼女に傾き始めるが……。
俺のお嫁さんになる?
お嫁さんという言葉。
俺には刺激が強すぎる言葉だ。
それはもちろんこういうかわいい子がお嫁さんになってくれたら、ものすごくうれしい。
でも俺達は再会して間もない。
それに、まず紗祐里ちゃんの両親が許してくれないだろう。
「紗祐里ちゃんの両親は、一緒に住むことをOKしてくれているの?」
許してくれていなかったら、どう対応していこうか、と思っていると、
紗祐里ちゃんは、
「わたしたちは、まず一緒に住んで、それから婚約して結婚します。わたしの両親は、そのことについて、最初は反対していましたが、今はOKしています。おにいちゃんの両親とわたしの両親の間でも話をして、おにいちゃんの両親からもOKをもらっています」
と微笑みながらも強い調子で言った。
「OKしてくれたんだ……」
俺の知らないところで話は進んでいたようだ。
こういうかわいい子と一緒に住むだけでなく、婚約、結婚への道が続いているということは、とてもうれしい。
「そうです。それより今はおにいちゃんと一緒にいたい。わたし、おにいちゃんのことが好きでたまらないんです」
紗祐里ちゃんはうっとりした表情で、その熱い心を俺に伝えてくる。
俺も紗祐里ちゃんのことが好きになってきている。
こんなにかわいい子と一緒に住めて、ラブラブな生活をこれからおくることができる。
幸せだ。
でもこれは現実のことなのだろうか?
いや、それはもうどうでもいい。
この紗祐里ちゃんのからだの温かさと柔らかさ。これがあればいい。
俺達はリビングに行き、ソファに座る。
紗祐里ちゃんは、俺の手を握る。彼女の温かさが流れ込んでくるようだ。
「わたしはもうおにいちゃんのものです」
「紗祐里ちゃん……」
「おにいちゃん、好きです。お嫁さんにしてください」
そう言うと、紗祐里ちゃんは、俺に肩を寄せてくる。
まだ信じられない。夢じゃないだろうか。こんなかわいい子が俺のそばにいるなんて。
いや、俺のとなりにいるんだ。俺の理想の人、紗祐里ちゃんは、俺のそばにきてその想いを伝えていきている。
俺はますます紗祐里ちゃんの魅力に染まってきていた。
ああ、キスしたい。
俺の胸のドキドキは大きくなってきていた。
「おにいちゃん、好き」
紗祐里ちゃんの甘い声。熱い想い。
その想いに応えなければならない。
「俺も紗祐里ちゃんが好きだ」
俺は紗祐里ちゃんを抱きしめる。
柔らかくて温かいからだ。
「うれしい」
うっとりとした表情の紗祐里ちゃん。
紗祐里ちゃんが唇を近づけていく。
俺はその唇に唇を重ねていく。
俺と紗祐里ちゃんのファーストキス。
紗祐里ちゃんのことがどんどん好きになっていく……。
俺はこのままずっとキスしていたかったが、一旦唇を離した。
キスよりも先の段階。
俺は二人だけの世界に入りたくなった。
でもキス以上のことをすることを想定してくれているのだろうか。
想定していないとすれば、今日はあきらめなければならない。
しかし、せっかくキスをしたのに、それ以上のことができないというのはつらい。
そう思っていると、
「わたしはおにいちゃんのもの。キス以上のことをしたいです」
と、紗祐里ちゃんが、恥ずかしそうに言ってくる。
「いいの?」
このまま進んでいいのだろうか。
俺達は幼馴染とはいえ、疎遠になっていた。電話などでの連絡もとっていなかった。
再会して間もない俺達。
紗祐里ちゃんのような素敵な女の子と、その先のことをしていいのだろうか、という気持ちはどうしても残っていた。
しかし……。
「わたし、おにいちゃんにすべてを捧げたいんです。恥ずかしいです。同じことを言わせないでください」
「ごめん」
「わたし、おにいちゃんのことが好きです」
「紗祐里ちゃん……」
「おにいちゃんへの熱い想い、キス以上のことをして伝えたいです」
紗祐里ちゃんの甘い声に、俺の胸のドキドキはますます大きくなっていく。
「紗祐里ちゃん、俺の部屋にきてもらっていい?」
恥ずかしい気持ちが大きくなりながらも、なんとか俺はそう言った。
それだけ、どんどん俺は紗祐里ちゃんが好きになってきている。
まだまだ再会した後、それほど時間は経っていないが、紗祐里ちゃんの魅力に俺は一気に染まったのだ。
「もちろんいいです」
「じゃあ、行こう」
俺は恥ずかしがっている紗祐里ちゃんと手をつなぎながら、俺の部屋に行く。
そして、ベッドの上に座った。
「紗祐里ちゃん、好きだ。大好きだ」
「おにいちゃん、この時を待っていたんです」
俺と紗祐里ちゃんの唇と唇が重なり合う。
幸せだ。これからはもっと幸せになっていきたい。
俺は、もう紗祐里ちゃんのことを想って生きていく!
俺の心は、沸騰していく。
そして、二人だけの世界に入っていった。
四月下旬の休日。
朝ご飯を食べた後、俺達は近所の公園にきていた。
新緑の季節。青空。風が気持ちいい。
少し歩いた後、ベンチに二人で座る、
「今日もおいしかったよ」
「そう言ってくれるとうれしいです」
恥ずかしそうに微笑む紗祐里ちゃん。
紗祐里ちゃんと一緒に暮らし始めてもう三週間ほどになる。
朝昼晩のご飯を作ってもらえるようになり、これがまたおいしい。
これだけでもありがたいが、二人で食べる食事というものが、これほど楽しいものだとは思わなかった。
それも朝昼晩、一緒に食べることができる。
話題も尽きない。
そして、キスとそれ以上のこと。
幸せだ。
俺はもう紗祐里ちゃんに染まりきっていた。
俺達がおしゃべりを楽しんでいると、
「森夢くん!」
という声が聞こえてくる。
冬沼さんの声だ。
そう思っていると、冬沼さんは俺の前に立ち、
「森夢くん、わたしと付き合って!」
と言った。
この人はいきなり何を言っているのだろう?
俺のことをあれだけひどく振ったというのに……。
紗祐里ちゃんも驚いている。
「いいでしょう!」
自分と付き合うのはあたり前だと思っている。
「イケメンと付き合っているんじゃなかったの?」
「わたし、彼にあっけなく振られちゃったの。他に好きな子ができたから別れようって。わたし、彼のこと好きだったのに……。あっけなくわたしのことを捨てるなんて……」
いきなり涙を流し始める冬沼さん。
しばらくの間泣いた後、涙を拭き
「わたし、森夢くんと恋人になることを決めたの。森夢くん、わたしのこと好きでしょう。いい恋人どうしになれると思うの」
と笑顔になって言った。
「それはできない」
驚いた表情の冬沼さん。
「俺にはもう付き合っている人がいる。俺の恋人だ」
「付き合っている人、恋人ですって?」
「この隣にいる人だ」
「隣にいる人……」
「紗祐里です。よろしくお願いします」
紗祐里ちゃんは頭を下げる。
「そんなあ……。いったい何を言っているの……」
「冬沼さんとは付き合うことができない」
「冗談でしょう? だって、わたしが森夢くんを振ってからまだ一か月も経っていなかったじゃない」
まだ信じられないといった冬沼さん。
「冗談じゃないよ。俺は紗祐里ちゃんと再会して、恋人どうしになったんだ。もう俺は紗祐里ちゃんのことしか想わないんだ!」
俺は力強く言う。
恥ずかしがる紗祐里ちゃん。
「そんなこと言わないで。 わたし、森夢くんを恋人にしたいの」
一生懸命言う冬沼さん。
「わたし、森夢くんが好き」
冬沼さんは俺のことを好きだと言った。
でもそれは今だけのことだろう。
「俺は紗祐里ちゃんが好きだ。俺は紗祐里ちゃんのことを愛している」
俺はそう言うと、
「じゃあ、そろそろ行こう」
と言って立ち上がった。
そして、紗祐里ちゃんと手をつなぎ、家へと帰っていく。
「もう森夢くんの恋人になるのには間に合わない……」
冬沼さんは力なくつぶやいた。
家に帰り、俺の部屋のベッドに一緒に座る。
「あの人がおにいちゃんを振った人だったんだ」
「ごめんね。紗祐里ちゃん。紗祐里ちゃんと疎遠になっていなければ、冬沼さんに心が動いて失恋してつらい思いをすることもなかったんだ」
「それは仕方がないと思っています。でももう昔のことです。今はこうしておにいちゃんと恋人どうしになっています」
「そうだね」
「わたしのことだけを愛してくれればいいです」
「もちろんだよ。俺は紗祐里ちゃんのものだ」
「わたしもおにいちゃんのものです」
「紗祐里ちゃん、好きだ。大好きだ」
「おにいちゃん、好きです。大好きです」
抱きしめ合う二人。
そして、唇と唇を重ね合わせる二人。
唇を離した後、
「ゴールデンウイークも楽しく過ごしたいです」
と、紗祐里ちゃんが言うと、
「楽しく過ごしていこう!」
と俺もそれに応える。
「俺は紗祐里ちゃんを幸せにしていく。婚約して結婚しょう」
「ありがとう。おにいちゃん。婚約して結婚しましょう」
俺達は、唇を重ね合わせた後、二人だけの世界に入っていった。
読んでいただきまして、ありがとうございました。
「面白い」
と思っていただきましたら、
下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。
ブックマークもいただけるとうれしいです。
よろしくお願いいたします。
「同級生と後輩に振られた俺。でも、その後、疎遠になっていた幼馴染とラブラブになっていく。俺を振った同級生と後輩が付き合いたいと言ってきても、間に合わない。恋、甘々、デレデレでラブラブな青春。」
https://ncode.syosetu.com/n5481hu/
を投稿しています。