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3.旅の支度とナルニア武具店

蒼の双剣のクエストに同行することが決まったロンは、ヒューズと別れた後、旅の準備をするために店を回ることにした。


最初にやってきたのは「ナルニア武具店」。

カナンの父がエルトリア王国で工房を立ち上げており、その伝手で紹介してもらった武具店だ。

冒険者になった時から利用しており、実際にロンの武器のメンテナンスはナルニア武具店を経由して父カナンに依頼している。


エルトリア王国では武器、防具の作成、メンテナンスは各工房で行い、実際の売買やメンテナンスの依頼は武具店で行うことが多い。

これは各工房が北西エリア(手工業ギルドのあるエリア)に拠点を構えていることが多く、冒険者たちが普段生活している南西エリア(冒険者ギルドのあるエリア)で売買をするための仕組みだと言われている。


武器へのこだわりが強い冒険者は直接工房に出向いて依頼することもあるが、鍛治職人にはプライドが高い人間が多く、実力が伴っていないと直接の依頼は受けられないことが多い。その上、実力があったとしても鍛冶師に気に入られない限り直接の依頼を受けてもらえないため、仕組み云々の話は鍛冶師が直接工房に足を運ばせないようにするための建前ではないかと冒険者の間では噂されている。


ちなみにロンも父カナンに直接工房で依頼したいと伝えたことがあるが、「お前にはまだ早い」と一蹴されている。


獅子のマークが刻印された掛札にOPENと書かれていることを確認して店の中に入る。


カランコロン


扉に備え付けられた少し古びた鐘の音が響くのを聞き、黒髪をオールバックに整えたいかにも仕事の出来そうな店主がちらっとこちらを見て、ロンの存在に気づくとニコッと笑った。


「やぁロン君。いらっしゃい。つい先程まで君のお父さんがいらしていたんだがね。武器のメンテナンスかい?」


「こんにちはナバスさん。遅い時間にごめんなさい。明日の朝までにお願いしたいんだけど大丈夫かな?」


ロンは主武器である短剣をそっと取り出してカウンターに置く。


「愛息子の武器のメンテナンスならカナンさんも喜んで受けてくれるでしょう。ですが、つい先日預けて頂いたばかりでは?アイアンタートルの討伐クエストでも受けましたかな?」


ナバスは短剣を手に取り鞘から出すと、眼鏡の奥の目を細め、角度を変えながら短剣の状態を診ていった。


アイアンタートルは動きが鈍く、鉄素材が豊富にとれるため報酬が高いクエストになっている。

だが、文字通り鉄のように硬い甲羅で覆われているため、剣を主武器として使う冒険者にとっては相性が悪く、討伐に手こずると刃こぼれのメンテナンス料の方が高くつくこともあるため、剣士泣かせ(・・・・・)と呼ばれている。


「おや?剣の状態自体はまだまだ問題なさそうに見えますが。持ち手がフィットしないなど問題がありましたか?」


一通り確認を終えたナバスは訝しげな顔でロンへ問いかけた。


「違うんです。実は、、、」


ロンはギルドからの帰り道の一部始終をナバスへ伝え、蒼の双剣のクエストに同行することになった経緯をを説明した。


「そういうことでしたか。では、カナンさんへは私から直接伝えておきましょう。『愛息子の一大事なので迅速に質の高い対応(・・・・・・・・・)をお願いします。』とね」


「ありがとうございます。ただ、『俺の仕事の質が悪かったことが1度でもあるか?』って不機嫌になるだけだと思うので他の依頼と同じようにお願いします。」


「たしかに。カナンさんが渋い顔をして言っているのが目に浮かびますね。わかりました。いつも通り依頼しておきます。それはさておき、随分と面白いことになっていますね。蒼の双剣が低ランク冒険者を同行させるなど今まで聞いた事もありません。」


冒険者業界では次世代への投資として高ランク冒険者が低ランク冒険者を同行させて経験を積ませることは珍しいことではない。

冒険者ギルドが正式なクエストとして有望な低ランク冒険者の同行を依頼をする場合もあれば、パーティへの勧誘目的で高ランク冒険者から低ランク冒険者へ声を掛ける場合もある。

ギルド経由でない場合はほとんどが勧誘目的となるが、、、今回に限って言えばまずないだろう。


なぜなら蒼の双剣は4人パーティで前衛職2人に後衛職2人とバランスもよく、かつ全員がAランク。バランス的にも実力的にも他のメンバーが入る余地がないのだ。

パーティによっては年齢的に活動が厳しくなってきたメンバーの抜ける穴を埋めるために勧誘することもあるが、蒼の双剣は幼なじみ4人で結成されたパーティであり、全員歳も近く、なによりまだまだ若い。その上、怪我での脱退や不仲説などの噂も聞かない。


そのため、今回のクエスト同行の目的は?というと、、、純粋なロンへの教育ということになる。あの蒼の双剣がロンに対して何を思ってヒューズからのこの依頼を受けたのか。


「そうですよね。もちろんヒューズのおっちゃんが頼んでくれたからなんですけど、それだけで受けてもらえるものなのか、、、僕なんかにそこまでの価値を感じてもらえるはずもないですし。

・・・って色々考えてしまいましたが、どうせ分からないのでせっかくの機会を活かせるようにできることをやっていこうと思います。」


ロンはグッと両手を強く握りしめた。


「ふふっ。ロン君の切り替えの速さと前向きな思考は素晴らしいことです。頑張ってくださいね。」


「ありがとうございます。ではまだ準備があるので失礼します!」


カランコロン


ロンは入ってきたドアを開けて店の外へ出ていく。


目標に向かって頑張っていく姿を見て、密かにロンのことを応援している人間は少なくない。かくいうナバスもその1人である。


「ロン君。君の進む先に幸多からんことを。」


ロンが出ていったあと、掛札がCLOSEになるように反転させ、

ロンから受け取った短剣を手に取るとカナンへの説明のため、ナバス自ら工房へと向かう。


このくらいの修繕であればカナンの手にかかればすぐに終わることだろう。その後、ロン君のことについてあの不器用な父親と一緒に飲みに行くことにしよう。

1話、2話投稿から時間があいてしまいました。


もし少しでも続きが読みたいと思ってもらえたら、

イイネや感想を頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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