2.A級との出逢い
クエスト報酬も入ったし、屋台で串でも買って帰ろっかな。
ギルドからの帰り道、屋台の明かりがぽつぽつと灯り始めたサンマルコ通りを歩く。
クエスト終わりの冒険者が集まり、活気がではじめる時間だ。
明るい顔で今日の成果を報告し合う冒険者たち。
その傍をそそくさと通り過ぎていつもの串屋へと向かう。
活動拠点にしているエトルリア王国では、魔物から取れる素材で作った装備や装飾品が名産となっており、素材を集めてくれる冒険者への待遇もとても良く、冒険者にとって居心地がいい場所となっている。
冒険者を育てるための投資もしており、若手の冒険者は宿や屋台の食事も安く済ませることが出来る仕組みになっている。
「おっちゃん、串2つちょーだい!」
ちょうど暖簾をかけようとしていた串屋の店主ヒューズに話しかける。
「おっ、ロンか。ちょっと待ってくれ。今焼いてるからもうすぐ出来る。開店作業手伝ってくれるならまけてやるぞ?」
「今日はクエスト報酬が入ったばっかりだから大丈夫。でも手伝うよ。」
いつも通り手際良く屋台の開店準備を手伝いながら周りの様子を伺っていると、どうもいつもと様子が違って見えた。
「ねぇ、おっちゃん。今日はなんだか騒がしくない?」
「ん?あぁ、蒼の双剣がフェンリルの討伐クエストから戻ってきたらしい。」
「え!?あのA級冒険者の!?」
A級冒険者は世界的に認められた数人しかなれない全冒険者の憧れの的。
特に蒼の双剣は最も若くしてA級冒険者まで登り詰めたことで
若手冒険者にとって憧れの存在だ。
「まぁギルドに報告に寄った後はそのまま国王への謁見があるだろうから会える機会はないだろうがな。」
「そっかぁ、少しでもいいから見てみたかったなぁ」
ここエルトリア王国は円形の城壁で囲まれた城塞都市となっており、東西南北にそれぞれ門が構えられている。
そして、各門を繋ぐように十字に大きな道が通っており、
その道によって大きく4つのエリアに別れている。
冒険者ギルドがあるのは南西。冒険者エリアと呼ばれている。
一方、エルトリア城があるのは北東。
主に貴族の住宅街となっているため、貴族エリアと呼ばれており、高ランク冒険者になるたこのエリアへの居住が許可されるため、貴族エリアへ家を構えることが冒険者の1つの目標のなっている。
高ランク冒険者はギルドへ報告へ来た後は、そのまま貴族エリアへ行ってしまうため、会う機会も少ないのだ。
がっかりしていると何やらサンマルコ通りがざわざわと今まで以上に騒がしくなってきた。
騒がしい方に目を向けると銀髪銀目の歩いてるだけで目を引くような美しい青年、蒼の双剣のリーダーが歩いてきていた。
どうやら他のメンバーは一緒ではないらしい。
高ランク冒険者の中でも頂点に君臨するA級冒険者がどうしてこんな所に?
疑問に思いながら吸い込まれるような美しい瞳から目を離せずにいると、その眼の持ち主がまっすぐこちらへ歩いてくる。
「やぁヒュー。久しぶりだね」
「ローレンス!今回も大活躍だったそうじゃないか!フェンリル討伐に行ってまさか仲間にして帰ってくるとはな。はっはっはっ」
「三日三晩戦っているうちに気が合ってね。話してみると人間に危害を及ぼしたいというわけでもなかったからそれを国王に説明するためにも一緒に来てもらったってわけさ。」
「相変わらずぶっとんだことしてるぜ」
あまりの出来事に唖然としていたロンはふと我に返り2人の会話を遮るようにまくしたてた。
「おっちゃん!蒼の双剣と知り合いなの!?元冒険者だって聞いてはいたけど、、、そんなに凄い人だったの!?」
「あぁ、たまたま大規模クエストで国にいる大半の冒険者が集められた時に一緒になる機会があっただけだ。俺が凄いわけじゃねぇよ。」
「ふふっ、A級冒険者への打診を断り続けた英雄が何をいっているんだか。まぁその話はいいとして、、、この子が例の子かい?」
「あぁ、少し見てやって欲しい。報酬はもちろん払う。」
「!?」
「わかった。ただし、報酬はいらない。この子が成長したら直接この子から貰うさ。君、名前は?」
「ろ、ロンです」
「ロンか。さっそく明日から行こうと思うがいいかい?」
「は、はい!?」
「よし、じゃあ明日の朝、冒険者ギルドで。では僕はまだギルドでやることがあるからお先に失礼するよ」
「・・・」
(いや、返事じゃなくて聞き返したかっただけなんだけど、、、え?何がどうなってるの?)
拙い文章ですが、少しでも続きが気になると思ったらいいねや感想を頂けると嬉しいです。
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