1.ロンの現状
(2022/7/29)
テーマの大幅変更に伴い、内容を修正致しました。
2話目も変更予定です。
よろしくお願いします。
「お疲れ様でした。
こちらが今回のクエスト報酬100ギルになります。」
夕暮れ時の冒険者ギルドで
少年ロンが受付嬢サラからクエスト報酬を受け取っていた。
今回ロンが受けたのはEランククエスト「スライムの群れの討伐」。
群れが相手のため新人冒険者には少し難しく、
報酬が安いため中級冒険者にはメリットが小さく、
不人気なクエストとなっている。
「サラさん、ありがとう!」
そう言って100ギルを受け取って今日のクエストは終了。
冒険者ギルドを出て、活動拠点としている宿「泊まり木」への道のりを歩く。
小さい頃にたまたま手に取った絵本
そこに描かれていたのは英雄の数々の冒険譚
当然のように憧れを抱いたロンはA級冒険者を目指し、
なんとか冒険者資格を取ることができた。
それから2年。
同期の冒険者たちは、
有力なパーティに引き抜かれたり、
才能のあるメンバーでパーティを組んだりと、
それぞれに冒険者としての道を順調に歩んでいた。
そんな中、ロンは行き詰まっていた。
同期の冒険者達に対してセンスが足りないことは自覚していた。
このままではA級冒険者になることが夢のまた夢であることも。
自分に足りないものを補うために
固定パーティには所属せず、荷物持ちでもなんでも引き受けることで、
先輩冒険者パーティに同行することで知識や技術を身につけていた。
その結果、1人でもEランク程度であればクエストもこなせるようになり、それが認められてEランク冒険者になることもできた。
明確な規定はないが、Fランクは見習い、Eランクからようやく一人前というのが冒険者業界の暗黙の了解だ。
ロンには師匠と呼べる人がいなかった。
小さい頃に鍛冶師の父の伝で元冒険者に手ほどきを受けたことはあったが、それも基礎の基礎を数年学んだだけ。
それ以外はほとんど独学でここまできた。
おそらく才能のない自分が独学でくることができるのはここが限界だ。
ようやくここまでこれた。
ただ、ここから先のビジョンがない。
それでも、ロンは諦めることはしない。思考は止めない。
A級冒険者になるその日まで。
夕暮れの帰り道、いつもの様にロンはA級冒険者になるべく思案に暮れていた。
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ロンが去った後、冒険者ギルドでは2人の男女が話をしていた。
「どうだった?」
「うーん、相変わらずです。Eランククエストまでならなんなくこなしてますが、ソロでこれ以上は難しいでしょうね。技術的にも今のクエストをこなしているだけでは成長も難しいでしょう。」
「そうか」
「一般的に2年目にしてEランクまで上がれるだけでも凄いんですけどね。特殊スキルもなくて、しかもソロですよ。今までどれだけの努力をしてきたのか。」
「突出した能力はないが、あそこまで本気でA級冒険者を目指してる奴はなかなかいないからな。」
「ギルド内でも馬鹿にする声がたまに見かけられますが、あのひたむきさは応援したくなりますよね。」
「ギルド職員が特定の冒険者に肩入れすることは禁止している」
「わかってますよ。
でも、、、ギルド長も同じ気持ちじゃないんですか?」
「まぁな。立場上、表立っての協力はできないが、
諦めるなんてことにはなって欲しくない。
アイツが伸び悩み初めてからもうすぐ半年。
ただ、冒険者になってからはまだ2年だ。
もう少し見ていよう。
才能が全てと言われるこの冒険者の世界で、
恵まれた才能のない人間がどこまでやれるのか。」
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