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ターニャの歌  作者: 彩華
9/9

9

 彼女の話をロードスは真剣に聞いた。

 メモをとり、事細かに記してゆく。


「じゃあ、君はそれからずっとここにいるの?」

「ええっ。ターニャはここで最期を迎えることを望んだの。ずっと帰りたがっていた。生みの親のカジェロのいる所、育てくれたエスタニアのいるところ。帰る場所だった。幸せだった場所だから」

「ずっと一人で寂しくなかったの?」

「寂しい・・・?・・・わからない・・・」


 一人が当たり前すぎたのだろう。成長するはずが記憶だけのものになっていた。



「いろいろ見たんでしょ?国の事とか?」

「見たわ。予想通り、魔核に頼り切っていた生活は破綻したわ。

 生きるのに必死になって、戦争も争いも・・・それどころじゃなくなった。助け合わなくてはいけなくなった。

 人形師は・・・いなくなった。いえ、ほとんどの人形師がドールだったの。わたしのように受け継がれた魔核。みんな解放を願っていた」

「それで一気に文化の衰退があったわけか・・・」

「謎が解けたかしら?」

「ああ、新発見だ。すごいよ。でも・・・」


 ロードスは言葉を濁した。


「証拠がないのが残念だね。君の話だけでは確証が得ないからね」

「そう、なら残念ね」


 優しく微笑んだ。


「笑うのはいつぶり?」

「えっ?」

「君の笑顔は寂しいね。でも、優しい。」

「優しい?」

「君は一人でずっといた。誰に会うでもなく、墓守として。もう解放されても構わないんじゃないかな?」

「解放?」

「そう、僕と世界を見よう。君がたとえドールだとしても、生きてる。なら外に出よう」

「でも、わたしは・・・」

「ほら、見て」


 指を刺す方をみれば、そこにはターニャがいた。

 光の中、幸せそうに微笑んでいる。


「彼女、幸せそうだよ」

「幸せそう?」

「うん、君の笑顔は彼女の笑顔だよ。彼女は君の幸せを願ってるんじゃないかな。君に笑っていて欲しいからあの笑顔なんだろうね」


 彼女はゆっくりターニャに近づいた。

 開くはずのない目が開き優しく見つめてくれたように感じた。


「ターニャ、わたし行ってもいい?」


『もちろんよ』


「ターニャ・・・?」


()()()()()。わたしは大丈夫。ゆっくり果てるわ。貴女は貴女の生き方を見つけてきなさい。わたしが見ることのなかった世界を見てきたらいいの』


 聞こえないはずの声が聞こえた。

 勢いねよく立ち上がる。

 その顔は希望に溢れていた。



「ターニャ、わたし行ってくる。世界を見てくるわ」

「じゃあ、僕と行こう。僕名前はロードス。君は?」

「わたしは()()()。遠い異国の古語で『祈り』と言う意味よ」


 



 二人は世界を駆けるため、手を取り合った。






 そんな二人をターニャは笑って見送った。




     『行ってらっしゃい。プレア』







                    ー完ー



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