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フェルンダルの入れた紅茶を飲みながら、彼は昔話を始めたのだった。
フェルンダルとエスタニアの父ブラキア、そしてカジェロは親友だった。ドールについて毎日話をしていた。
約200年前、巨大な魔核が見つかり、世界中を賑わしした。しかし半年後、その魔核は無くなった。盗まれたらしいと言うだけで、国を上げ創作したもの見つけることができなかった。魔核がなくなり50年ほどして生まれたのがドールだった。制作者はリア。街の酒場で歌姫をしていた女だった。彼女がどこで学んだかもわかっていないが、二体のドールを作り三人の弟子にドールの作り方を教えると、姿を消した。
時代が進むにつれ、ドールの性能が増していった。
フェルンダルたち三人もそれに取り憑かれていたと言ってもいい。朝から晩までドールについて話し合い、制作をしあった。
だが、それも戦争が始まるまでだった。
戦争が始まり、バラバラになった。
フェルンダルは魔術技師の道へ、ブラキアは兵士に、カジェロは反戦メンバーとして活動したのだ。親友の誓いを立て別れた。
再び出会ったのは、戦争が終わった数年後。ブラキアの胸元には赤子が抱かれ、カジェロは再び人形師になっていた。
フェルンダルは、そんな彼らを見送った。分かれた道を戻すのは容易いことではなかったから。
唯一、手紙のやりとりをしていた。
ブラキアが病に倒れ、幼いエスタニアとカジェロの旅を知ったのも手紙だった。
そしてエスタニアが人形師になるために魔術学園に入ったのを知ったのも手紙。カジェロが実はドールだったことを知ったのも・・・。
「なんで、あいつは自分がドールだと言わなかったのか、今でも分からん。君はわかるかい?」
「・・・、人・・・、人間として生きたかったからじゃないですか?」
「人間か・・・、君はカジェロには?」
首を振った。
「正常な時には会っことは、ありません。師匠に扱い方を教えてもらって、管理はしていました。でも・・・どんな方でしたか?」
「明るくて、みんなを笑わせるのが好きだったよ。歌が好きで、よく歌ってたな」
懐かしそうに目を細める。昔を思い出しているのだろう。
「魔核がなくても止まらないのは本当かね?」
ふと、聞いてきた。
研究者としては気になるのだろう。
ターニャは隠そうとしなかった。それは、知られても問題ないから・・・。
「はい、そのドールの思いや、性能の違いでそうなるのだと思います。体内の魔核残量の量も影響があるのかもしれません。そこに魔力補充で魔力を流すので緩やかな降下に至るのだと思います」
「そうか・・・。それを使えば、もしかすると・・・」
「師匠?」
「いや、研究に役立つのではとな・・・。同郷の彼はどうするのかね?」
「関わるなと言っていたので、わたしは・・・研究するだけです」
フェルンダルはそうかと頷いただけであった。
冷たくなって紅茶は苦く感じた。