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第6話 適性試験2

ゴムボールの検査の後、耐久力や跳躍力など様々な検査を受け、身体能力検査が終了した。


「はいはぁ~い、みんな注目ぉ~く!」


検査官達が、壇上へ上がり中央の検査官が声を上げた。

深くかぶっていた帽子を脱ぐと白金のさらさらとした長い髪が靡いた。


「皆さんお疲れ様でしたぁ!これで、身体能力検査は終了で~す。

みんな中々の好成績だったわよぉ、それじゃあ、私達はこれで撤収しま~す。

検査を担当したのは、風紀副委員長のカミナちゃんとその他大勢でした~。」


Vサインでウインクして見せるカミナ。

壇上を下りて行く検査官達と入れ替わりに生徒会副会長のセシリア=バーミントンが上がって来た。


「皆さん、お疲れ様でした。

それでは、次に『潜在能力』と『能力値測定』の検査を行います。

この検査で入学した後の初期配属クラスが決まります。

会場を変えますので、彼の後に付いて行ってください。」


最初に入って来たドアを指さした。

入学希望者達は、指さされた方へ振り向くと手を振るギルバートが立っていた。


「それでは移動してください。」




レイン達入学希望者は、修道院の洗礼所の様な場所へ来ていた。

中央に置かれた3つのオブジェ。


台座に刺さった剣

水の入った大皿

紫色の水晶玉


その先に装飾の施された、まるでミニチュアの凱旋門(がいせんもん)の様なモノがある。


生徒会執行部のギルバート=セノスが声を上げた。


「みなさん、御揃いですね。

それでは、潜在能力検査の説明をさせてもらいますね。

最初に中央に置かれているオブジェの前に立ち、手を翳してください。

皆さんの潜在能力のタイプによって3つのオブジェのどれかかが反応します。」


3人の検査員が、オブジェの前に立ち手を翳すとそれぞれのオブジェが反応する。


台座に刺さった剣は小刻みに動き、大皿の水は揺らめき、紫の水晶は淡い光を発した。


「ありがとう。」


ギルバートが検査員に礼を言うと検査員達は後ろに下がって行った。


「見た通り、オブジェが反応します。

肉体や道具を使う事に特化していれば剣のオブジェが反応し、精神や頭脳を使う事に特化した潜在能力なら大皿の水が反応します。

そして、他の2つに当てはまらない特殊な能力を持つ者は水晶が反応するでしょう。」


「質問して良いか?」


ダグラスが手を上げた。


「どうぞ、なんでも質問してください。」


ギルバートがダグラスへ向き直り、そう答える。


「じゃあ、訊きたいんだが…2つのオブジェが反応する事もあるのか?」


「良い質問ですね。

仰る通り、2つ反応する人もいますよ。極稀ですが、3つとも反応する方がいます。

こういった方達は、ほぼ異世界からの『転生者』ですね。

この学園にも多数在籍されていますよ。」


にっこり微笑むギルバートに


「じゃあよ、3つとも反応しないこともあんのかよ?」


更に質問するダグラス。


「それはありませんね。

潜在能力…それは、必ず誰しもが持って生れる『才能』なんです。

『至高なる意思』によって、全ての生命に与えられる贈り物…

僕等は、その才能を開花させ『職業』とする、それが『世界の理』ですからね。」


ギルバートは、ダグラスの質問に即答し、説明した。


「他に質問のある方はいますか?

…いないようですので、検査を始めたいと思います。

検査員は配置についてね、それでは、みなさん一人づつオブジェの方へ進んでください。」


レイン達は言われた通り、一列に並びオブジェの前に歩いて行く。

ギルバートは、そこでもう一つ言い忘れていたことを思い出す。


「あ、すみません、もう一つ言い忘れてました。

オブジェで潜在能力のタイプが分かった方は、その先にある測定ゲートを通ってください。

現在の才能の測定値が出ます。」


一人目は、剣が動き、測定値は89だった。

バルジモアの付き人?手下の二人の番が回った来た。

二人共剣が動き、測定値は『125』と『134』と判定が出た。


「おっしゃあ!」


「流石は、エビルの兄貴っす!」


「お前もやるじゃねぇか、ガバジ。」


「そんな、俺なんてまだまだっすよ…其れより次はバルジモアさんの番です。」


「ああ、きっとスッゲー数字が出るぜ。」


バルジモアが、剣の前で手を翳す。

台座に刺さった剣が、動き出したと思ったら刀身の半分まで抜け上がったのだ。

またしても会場中からどよめきが上がった。


「これは凄いね、あそこ迄剣が持ち上がったのは、副会長以来じゃないかな?」


ギルバートが呟いていた。


大皿には、反応が無く紫水晶は黄色い光を放った。

またしてもどよめきが起こった。


「2つ反応したぞ…」

「アイツ『転生者』だったのか…」

「そんな話は聞いた事が無いぜ?転生者でもないのに2つ反応してんだよ…」

「マジかよ…」


会場の反応にエビルが、気を良くする。


「お前等ぁ!これがバルジモアさんの実力だぜ、もっと驚け!」


「黙れ、エビル。」


バルジモアに(にら)まれ、身を(すく)めるエビル。


「す、すんません…」


バルジモアが測定値ゲートを通ち抜けた。

またしてもどよめきが上がった。測定値『187』を叩きだしていたのだ。


「うおぉ!!バルジモアさん、流石っす!!世界一ですよ!!」


また睨まれ静かにするエビルとガバジだった。

ギルバートが、近付いて来た。


「君が、あのバルジモア君か…どうだい、入学したら生徒会に入らないか?

うちの生徒会レベル高いんだけど、君ならやっていけると思うんだよね。」


「入る気は無い…」


バルジモアは、ギルバートをチラッと見て立ち去っていく。


「そうかい…また気が変わったら連絡してね。

ああ、そうそう、検査終わった人は、向こうで待機しておいてね。

最後に検査結果と入学の手順説明があるからね。それじゃあ、続けようか。」


今回はレイン達が最後になった。

フェリスがオブジェの前に歩いて行く。

剣は動かず、大皿の水が勢いよく渦を巻く、そして紫水晶が蒼い光を輝かせた。

測定値は『486』

続いて、エミリアも同じだったが、紫水晶の光は透明だった。

測定値は『428』


会場が静まり返っていた。

それもそのはずだ、数値が異常なのだ…通常入学時はどんなに高くても200前後…普通は100を切っている筈なのだが…


「ほんじゃ、次は俺だな。」


ダグラスが、剣に手を翳すと剣が動くどころか吹き飛んで行った。


「?!」


会場中が目を剥く、ギルバートが、飲みかけていたジュースを噴出す。

ダグラスが、額に手を翳し飛んで行った剣を見送る。


「ありゃ?飛んで行っちまった…ま、いっか…」


大皿の水はピクリとも動かず、紫水晶は紅く光っていた。

測定値は『682』

再び会場にどよめきが広がって行った…ギルバートは、口を開いたまま目をぱちくりさせていた。


「まぁ、こんなもんかな?

おーい、由奈ぁ、早く来いよ、これただ通るだけだぞぉ。」


ダグラスが、由奈を呼んだ。


「は、はい!行きます。」


由奈が、床に落ちた剣を拾い上げ、もう一度台座に差し込んだ。

だが向きが変わっている…台座に対して横向きだった剣を立て向きで刺していた…


「うそ…剣を差し戻すなんて…然も逆向きに?…そんなのあり得ない?!」


ギルバートの声が漏れた。

由奈には聞こえず、隣の大皿の前に立つ。

大皿の水が勢いよく渦を巻き始め、中空にまで伸びあがり、四散してしまった。


「?!」


するとまだ由奈は移動していないにも関わらず、突然紫の水晶が、虹色に輝きだした。


「水晶も光ったし…えっと、これ通り過ぎちゃってもいいのかな…?」


由奈が、ゲートを通り過ぎる…測定値…『943』


会場中から驚愕の響きが生じた。

ギルバートが、由奈達の方へ駆け寄っていく。


「き、君達『転生者』…だよね…いや、それにしても測定値が異常過ぎだよね?

特に彼女…あの子は一体…」


「さぁな、俺等『転生者』だってのは間違いないんだが、あの子と俺は記憶がねぇんだわ。」


「そ、そうなんだ…

と、とにかく君達の潜在能力は桁外れだよ…」


「おい、レイっち、何やってんだよ、お前が最後だろう、さっさと終わらせろよ!」


ギルバートが何かを言おうとしていたのを無視して、ダグラスがレインに声を掛けた。

レインが、オブジェの前に進む…

何事も無く…全てのオブジェが何の反応も無く通り過ぎてしまった。


「え?」


ギルバートが更に目を剥く。


ゲートを通り過ぎたレインの数値は…『計測不能』と表示されていたのだ。


ダグラス達の処へ歩いてくるレインに声を掛けた。


「おい、また故障かよ?お前ついてねぇなぁ、レイっち。」


(壊れてるんじゃない…あのゲートは『9999』まで計測できるんだ…計測不能の表示は、

2通り…測定値『0』か『9999』以上かだ…0はあり得ないから後者…)


ギルバートが、内心舌を巻いていた。

こんな規格外の入学者がいるとは思ってもみなかったのだ…


「バルジモアさん、アイツ等一体何者なんでしょう?

『転生者』がどうのって聞こえましたが…」


「最後の奴は、また壊れてたみたいですね、ありゃあ、運だけでやってる()()()じゃねっすかね?」


「…」


バルジモアは、エビルとガバジに答えなかった。

放心状態になっていたギルバートが正気に戻ったようだ。

頭を振り、壇上へ走っていく。


「そ、それではみなさん、これですべての適性検査は終了いたします。

冒頭で説明した通り、検査結果によって、皆さんに適したクラスが決まりますので、此方の集計で確定したら数日後には通知します。」


セシリア副会長が、壇上へ上がって来た。


「皆さん、適性検査お疲れ様でした。

これですべての検査は終わりです。ギルバート君が説明してくれた通り、皆さんのクラスがこの検査で決まります。

学園は、全寮制です、生活品は全て揃っていますので、何も持参していただく必要はありません。

学生服は、学園から皆さんの方へ支給します。入学時の襟章は、皆さん銅の☆1(CS1)となります。

学園の校則については、事前に配信しますのでよく読んでおいてください。

それでは、本日の適性試験はこれで終了となります。

それと能力測定値が『100』以上だった方…と測定不能の方はこのままこちらに残っておいてください。

それ以外の方は、これで解散とします、入学式でまたお会いしましょう。」


そう言って、セシリア副会長が微笑みながら手を振った。

レイン達を残し、他の者達は建物から出て帰って行った。

後に残ったのは、レイン達5名、バルジモア達3名、彼等以外に8名居た。


セシリア副会長が彼等の方へ歩いてくる。

後ろには、ギルバートとカミナがついて来る。


「俺達はなんで残されたんだ?」


ダグラスが質問したがセシリアが手を上げ、それを制した。


「先ずは、私達の自己紹介させてもらうわね。

私はこの学園の生徒会副委員長をしているセシリア=バーミントンです。」


「僕は、生徒会執行部のギルバート=セノスです、よろしく。」


「私は、生徒会風紀委員副委員長のカミナ=ベルトナでぇ~す、よっろしくねぇ。」


セシリアが、一歩前に出る。


「貴方達は、適性試験で好成績だったので、この後学園長の試問を受けてもらいます。」


「試問?」


ダグラスが、訊き返す。


「この学園は、試験は無かったんじゃ…」


フェリスも疑問を口にした。


「並みの成績ならば、試問などありません。

ですが…あなた方は、類い稀な潜在能力の資質を持っている。

それは、学園にとってとても有益な生徒になる可能性があるのです。」


セシリアの言葉にはもう一つのニュアンスが在ったようだ。

レインが、口を挟んだ。


「成る程な…裏を返せば、学園にとって不利益となるかもしれない最重要要注意人物となる可能性もあるわけって事だろう?」


「…ええ、その通りです。

貴方達の考えや行動理念・人格を学園長が試問し、この学園に相応しいかどうかを判断します。」


セシリアがレインの質問に対し答えた。


「まぁ、当然だろうな…」


「おい、ふざけんなよ!

バルジモアさんが、この学園に相応しくないって言ってんのか?!」


エルムが、が鳴り声をセシリアに向けた。


「アンタ、少し黙ってなさいよ?がなり声が耳障りなのよねぇ。」


「なんだとぉ!」


背後から女の声が聞こえ、激高して振り返るエルム。

薄緑の長い髪を後ろで束ね、美しい顔立ちだが筋肉質の女性が立っていた。


「…お、おまえは、サーシャ=オベイロス…?!」


「あら、貴方みたいなおサルさんが、私の事を知ってるなんて意外だわ。」


「お、おサルさん?!

ば、バカにするなよ…『カームの武闘大会』で優勝したって噂は聞いてんだよ、女重戦士。」


エルムが、ムキになって噂を口走った。


「あぁねぇ、あのくっだらない大会かぁ、強い男が出るって聞いたから態々出場したのに、

どいつもこいつもあたしより弱い男ばっかりでさぁ、つまらなかったわ。

ま、あんたも、つまらない男みたいだけどねぇ、お・さ・る・さん。」


そう言って、サーシャは、エルムの隣を通り過ぎ、レインの前に立った。


「貴方はどうなのかしら、レインさん?」


「…」


「貴方も『転生者』なのよねぇ?

他の4人も桁違いなのはわかるけど、貴方は何かが違うって感じがするのよねぇ。

なんかこう私の中が疼くって言うかぁ、とても興味あるのよねぇ…

ねぇ、私と付き合わない?」


(ちょ、ちょっと、いきなり何なのよこの女は?!

あって早々付き合おうだなんて、頭おかしいんじゃないの?!)


フェリスが憤慨していた。

フェリスの感情など知る由もないレインが口を開く、


「悪いが…世俗には興味が無い。」


「あら、冷たいわねぇ。

そうねぇ…もっと貴方の事を知ってからでも遅くないわねぇ。」


レインの胸に手を添え頬を添えようとするサーシャを引き離す、フェリス。


「な、何なんですか?!サーシャさん、貴女馴れ馴れし過ぎますよ!

レインからもっと離れてください!」


レインの前に仁王立ちのフェリスに


「ハイハイ、分かりました。

今日の所は大人しく引き下がっておくわ。

また入学式でも会えるんだし、時間はいっぱいあるわ、此れから学園生活が楽しくなりそうね。」


サーシャは、レインへウィンクして見せたのを見て、

フェリスが、ふくれっ面になる。

話が終わるのを待っていたのか、セシリア副会長が声を掛けた。


「…話は済みましたか?

それでは、学園長室まで案内しますからついて来てください。」


レイン達は、セシリアに付いて行った。

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