顔を赤く
街の中央広場につくとロッタが言いました。
「ジャンさん、私一人で大丈夫だからここで待ってて、カステラは一緒に来てね」
と言って右肩をポンポンと叩きました。カステラはまるで人の言葉の意味が分かるかの様にロッタの肩へ飛んで行きます。一瞬ちくりとしロッタはビクっとしましたが、その後は少しこそばゆく、カステラの足のその感触にロッタは微笑みを浮かべました。そして麻で編まれて大きな手さげ袋を持って市場に向かいました。
沢山の人がいるからか、カステラは落ち着かずロッタの肩を左右に動き回ります。
「えっと、調理用の白ワインが二本とジャガイモが20個、赤いパプリカ4個ね」
とロッタの独り言が大きかったのか、賑わう人達が足を止めてロッタを見ています。違います、肩にとまる珍しい鳥を見ていたのです。そんな事はいざ知らず、ロッタはブツブツと独り言を言っています。
すると小さな女の子が近づいて来ると言いました。
「お姉ちゃん、そのきれいな鳥は、なんて名前なの」
「カステラって言うんだよ、カステラは人の言葉を話せるのよ」
少女は目をまるくしてカステラを見ました。すると、
「おはよう、おはよう」とカステラが言いました。少女はびっくりしましたが、すぐににんまりとして手を叩いて喜びました。それを見ていた大人達もロッタとカステラを囲むように集まってきました。
さすがのロッタも少し恥ずかしいのか顔を赤くしました。
「ロッタ、ロッタ」とカステラが言うと。
「ごめんなさい、急いでいるので」とロッタはその場を離れていきました。
「すごいね!カステラ、私あんなに人に注目されたの初めてよ」
とロッタはカステラにだけ聞こえる小さな声で言いました。そろそろ馴染みの八百屋さんが見えてきます。
「おはようございます、今日は結婚式の準備があるからおばちゃんもおじさんも来れないから、私一人で…カステラと二人で来ました。ジャガイモを20個と赤いパプリカ4個下さい」
ロッタはいつも一方的にしゃべるんよ、まるで話す前に会話を想像してるかのように、だけど沢山の言葉をあたいに教えてくれるんよ。




