お別れ
「おじぃちゃん、ありがと」
もう一度カステラが大きく叫ぶと、傘が、われる風船の様にパッと消えると、おじいさんもすーっと消えていきました。にっこり手を振っていました。
思いを遂げてか、カステラの力もすーっと抜けて、くるくると地面に向かって落ちていきます。
「カステラー!カステラー!」
トンビのライトが叫んで、飛んできます。凄い勢いで落ちて行きます。時折吹く風にもみくしゃにされながら。
「カステラー!しっかりしろ」
ライトはクルクルとカステラの周りを旋回しながら叫んでいます。それでもカステラは勢い増して落ちていきます。仕方ないとライトは鋭い爪でカステラをなるべく傷つけない様に捕まえる事にしました。一度カステラから距離をとり、翼を閉じて一気に距離を近づけます。微妙に翼を広げ方向を合わせながら、カステラの横を過ぎた瞬間翼を一瞬広げそれでもカステラを傷つけまいと、鋭い爪で優しく包み込むように捕まえました。
「ライト、ありがとう。あたい疲れたから、下まで連れてってくれたら、ありがたいんよ」
カステラは目を覚まして言いました。
「お安い御用だよ、カステラ!それより怪我はないか」
「大丈夫なんよ」
ライトはカステラを気遣ってか、それは大きく螺旋を描いてゆっくり降下して行きます。公園の池、時計台と街並みも徐々にカステラの目にもぼんやりと分かってきました。おじいさんとの別れを受け止めた、カステラでしたが、ぽっかり空いた穴はどうしようもなく、ただぼんやりと広がる景色を見つめていました。
「とりあえずどうする?俺と森で暮らすか?」
とライトが言いました。
「うんどうしよう?あたいは野生で暮らしたことないんよ」
「そっかぁ でも大丈夫だと、思うぞ」
「すこしの間、おじぃちゃんと暮らした街でやっていこうと思うんよ」
「分かった、いつでも俺をたよってくれよ」
「ありがと、もう大丈夫なんよ、飛べるんよ」
ライトが力を抜くとクルリと体を一回転してカステラは翼を広げました。




