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――――…夢を見た。
目の前には、洋菓子店で働く私の父と母がいる。
小さな頃に両親とお菓子を作るのが楽しかった。二人は口を揃えてこんなに難しいお菓子を作れるなんて凄いわと言って、満面の笑みで私の頭を撫でてくれた。
私は二人が褒めてくれることが嬉しくて嬉しくて難しいとされているお菓子をどんどん作った
この生地にはこのクリームが合うのではないか、この飲み物を一緒に出すのはどうかと考えて考えて、両親に出してどんな反応をしてくれるのかを見るのが好きだった
そんな時、和菓子店を営んでいた母方の祖母が和菓子も少し覚えないか?と聞いてきた。
和菓子にも興味は人一倍あったため、祖母の提案を私は受けて、和菓子も作り始めた。
和菓子は器用さもさることながら自分の感覚との勝負だった。気温によって中の餡が柔らかくなったり、硬すぎたりするからである。その感覚は洋菓子を作ってきた私には難しいものであったが、楽しいものでもあった。
祖母が私の才能を見つけ、私が大学を卒業する前にこの和菓子店を継いでほしいと言われていた。
前までの私だったら、お菓子の世界そのものであるお店で働けるなんて夢みたいだと言って承諾しただろう、だが悩んでいた。
大学で仲良くなった友人に言われた言葉が心に残っていたからだ。
「君はそれでいいの?」そんなたった一言が、流されやすい私にとっては頭を悩ませる一言だった。
悩みに悩んだ私は、お菓子以外の事もしてみたくて、会社に就職をしてみたいと両親に言った。
両親、祖母はそれを了承してくれた。
「まだまだ私たちはお店の経営はできるから、なにかあったらその時にはもう一度貴女に相談するかもしれないことを許してね。」
祖母は少し困った顔をしながら微笑んだ
その顔は未だに忘れられない。
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会社に入ってから、新しいことを覚えることでだんだん忘れていた気持ちを思い出したような気がする
「ん……」
目が覚めたらいつもと違う景色で驚いた。そっか、私は今違う世界にいるんだった。
凄く懐かしい、優しい夢だったな…。
お菓子作りって、楽しかったな。違う、楽しいものだ。
そんなお菓子をこの世界では必要としてくれてる。頑張ろう。
「こんな時まで流されやすいなんて、やっぱり私学生のころから変わってないんだなぁ…。」
呟いたと同時に笑う果音
「ここの世界では何も考えずに大好きなお菓子が作れるんだ。よし!頑張ろう!」