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「……藤城くん…?」




椅子に座った人を見たとき、時間が止まったような感覚ってこういう事なんだなって思った



目の前にいる人がこの世界にいると思わなかったから。



藤城糖夜ふじしろとうやくんは、大学で知り合った男の子

お菓子作りが趣味同士で仲良くなった人で、人の噂に興味がないのか、あることないこと流されている私の噂を聞いても変わらず、何かと相談も聞いてくれる人だった。

卒業したらそのまま祖母のお店を継ごうと思っていた時にも相談した人が彼だ。

「君はそれでいいの?」って聞かれた時は正直に言うと戸惑った。今までそうやって聞いてくることはなかったから。



卒業してから自然と会うこともなくなってしまった人とこんな形で出会うとは思わなかった。




「聖女様、陛下の事をご存知ですか?」


「陛下…?王様なんですか?藤城くんが?」


「えぇ。」


「でも、オペラさんは王子で…?血縁…じゃない、んでしたね。」


「左様でございます。」



果音はスフレと話している間もどこか混乱していろいろ聞きたいのに言葉にならず口をパクパクとさせる



「あ…このクッキーを藤代くんに」



持ってきていたクッキーを椅子に座ってる糖夜に渡すが、目は虚ろのまま食べようともしない

そのまま時間が経ち、果音はクッキーを小さく割り、糖夜の口の近くに差し出すが口を開けもせずに焦点の合わない目をしていた。



「…藤代くん…」


「果音…今日はこのぐらいで巡回を終わろう?」


「でも…」


「僕たちも治るようにいろいろしたんだ…一番最初に戻ればまた皆を救ってくれると思って…果音のこのクッキーでもだめなら、違う方法を一緒に探そうよ」


「そうです、聖女様私も考えますわ」


「わかりました…」


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「王が果音の知り合いだとは…」


「えぇ、私も驚きました」


「俺の女神は大丈夫だろうか…」


あの後頭の回らない果音を自室へ皆で送った後、一緒に隔離部屋を回った5人がお菓子作り部屋で集まっていた



「聖女様のクッキーにも見向きもされないとは…どうしたら良いのでしょうか」


「そうですわね…」



ふぅ…とため息を誰かが付いたときやけにドアの外が騒がしい音がした



「聖女様に何があったのです!!!!!」



バーンと音を立てて扉を開けたトルテの後ろにはオペラが一緒に顔を覗かしている


「王と、果音が知り合いだったんだよ」


「まぁ!そうなのですか!」


「ほぉ…」



果音が持っていたクッキーを渡してみたが効果はなく焦っていた様子を二人へ説明した



「なるほど…」


「聖女様はまだ落ち込んでいるのです?」


「たぶんね…」


「一緒に打開策を考えるのは聖女が落ち着いてからのほうが良いな」


「そうですね…」


結局その日は打開策を考えるより果音にどう話しかけるのかを各自意見を出して話すことで一日が終わったのであった。


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