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スフレとシュトルーデルが材料を取りに行っている間に準備をすることにした
「あのあの、聖女様!」
「どうしました?」
「先程からずっと敬語ですね、何故なんです??」
ふと疑問に思ったのか悪気のない声でトルテが聞いてくる
「え?おかしいですか?」
「えっと、違和感です。前の聖女様たちは敬語しないで話してくれましたよ!」
「そ、そうなんですか?」
「えぇ、確かにそうですね…でも性格は人によって違うと言いますし…良いのでは?トルテ様」
「うーん…でも私壁を感じますぅ…」
うるうるとした瞳で見つめてくるトルテにどうしたらいいか固まっていると声がした
「じゃあ、慣れてきたら敬語やめるようにしたら?」
「マフィン様!」
「ノックしたのに誰もでないから入っちゃったーごめんね果音ー!」
「マフィン君…」
昨日の話を思い出して少し顔が強張った果音を見て察したマフィンが少し眉を垂らし困った顔をする
「聖女様!マフィンの事は マフィン君 なんですか!!!ずるいです!私もトルテと呼んでくださいな!」
不意なトルテの言葉に戸惑いながらもうるうるとした瞳をされたら断れるはずもなく情けない声を出すしかできなかった
「わ、わかりました。トルテちゃん…」
ちゃん付けにまだ不満はまだ持ちつつも、さん付けよりは嬉しいです!と喜んでいるトルテを見て
無性に頭を撫でたいとうずうずしていると材料を取りに行っていた二人が戻ってきた
「聖女様お持ちいたしました!」
「こ、この量を作られるのですか?」
何回目かになる質問を聞きやっぱりこっちの人には不思議なことなのだと感じる
「いつもこの量よりいっぱい作ってました…」
「さすが聖女様ですね!」
「すっごいです!聖女様!」
賞賛してくるトルテとシュトルーデルに少し戸惑って固まっていると見かねたマフィンが喋りだした
「…果音が固まっちゃってるよー?」
「え?」
「何故なのです?」
「当たり前にできる事を素晴らしいと言われる事に頭が追い付いてないって感じかな?」
「素晴らしいことに変わりはないのに聖女様は難しいお方なのですね」
「果音は果音の好きなようにしていいんだけど、まだ難しいみたいだねぇ…」
「うーん…」
「あの、作りませんか?」
タルトの一言で果音は我に返った
「今日は、ラングドシャ、サブレ、ドロップクッキーを作りたいと思ってるんですが…」
「はい、いいと思います!」
スフレが微笑みながら同意したことで、作ることが決まった
前回と同じようにスフレは洗い物を担当し、タルト、マフィン、トルテ、シュトルーデルの四人に指示を出しながらてきぱきと作り始めた
柔らかめの生地を作り、その生地をスプーンで掬い天板の上に置く
均等に置いていくとそれをそのまま焼き、ドロップクッキー
生地を混ぜ、丸い口金のついた絞り袋に入れ、それを天板に絞り出す
生地の乗った天板をトントンと机に落として少し生地を広げ、焼くとラングドシャ
硬めに作った生地を作り棒状に成形し、冷蔵庫で少し休ませる
休ませた生地を均等に包丁で切り、天板に並べると焼くとサブレが出来上がった
作っている途中でタルト、マフィン、シュトルーデルが疲れ椅子で休憩をしていたが、トルテだけ目を爛々と光らせながら次の指示を待っている
「私は体力だけはあるので!」と胸を張り果音の出す指示をどんどんと遂行していった
「ふぅー、聖女様、これで良いですか!」
「これで後は粗熱を取れば出来上がりかな」
「わーい!頑張りました!」
両手をあげて喜んでいるトルテを見ているとふと家族で作っていた時の子供だった自分を思い出した
私が喜んでいるとき確かお母さんが…とトルテの小さな頭を撫でる
無意識の果音の手にトルテが目を瞬かせているがそのまま身を任せた
「…えへへ」
嬉しそうに果音の目を見てトルテが喜ぶ
そうだ、こうやっていつも頭撫でてくれて、美味しいって言ってくれてすごくすごく嬉しくて、こんなに人に喜んでもらえるお菓子ってすごいっていつも思ってたんだっけ。
やっぱりお菓子作りってすごい。すごく楽しい。
「あの、私もっともっと皆にお菓子を作りたい…です!」




