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ブックマークありがとうございます
拙い作品ですが、まだまだ続きますので見ていただけるととても嬉しいです
これからもよろしくお願い致します。
「早速食べてよいか?」
上目使いで王子オペラが聞いてくる
キラキラして見える瞳に若干目を背けつつ頭を縦に振るとクスクスとオペラが笑う
「許可はもらったし、早速。全種類食べてよいか?」
「量が多いですが…」
「これくらいならすぐに食べれるぞ…おや?この紙に包まれたのは?」
「スティックタイプのチーズケーキです。食べやすいかと思って」
「なるほどな」
「さぁ、コーヒーも出来ましたので食べましょう」
「私もここで共に食べてもよいか?」
「おーい、殿下、それは…」
「いいじゃんいいじゃん!皆で食べよーよ」
サブレが苦い顔をしながらオペラに注意しようとしたが、マフィンがにこにことサブレの手を引っ張っている
「はぁ…知らねぇぞ…」
チーズケーキが並んだ机の周りに座ると、タルトが全員分のコーヒーを置いてくれる
「では、」
「「「「「「いただきます!」」」」」」
各々一口食べて果音以外全員が幸せそうな顔になる
「んー!!」
「うまい…」
「舌触りがよく、口の中でとろける…」
「鼻に抜けるさわやかなレモンの香り…」
各々がケーキの感想を言いながらモリモリ食べ始める
良かった…気に入ってくれて…こんなに手放しで喜んでくれるんだ…すごく心が満たされるなぁ。
幸せそうな顔で喜んでくれて、作った甲斐があるなぁ。
そんなことを思っていると果音を全員が凝視していた。顔を真っ赤にしながら
「?」
「か、果音。それは反則だよ…」
真っ赤な顔をしたマフィンが思わず声を出す
「びっくりしました…」
「そんな顔もできるんだな」
無意識に満面の笑顔になっていた果音のあまりにも綺麗な顔に惚けてしまった面々が顔を手で覆いながら俯いている。
「お菓子だけではなく、そんな芸当もできるとは…」
オペラでさえも顔が赤くなってしまっている
言われている意味が分からないまま頭に?を浮かべているとタルトが恐る恐るといった形で喋りだした
「あの、ショートブレットは?」
「あ。」
忘れていた。
オペラが扉の外で待っていたサブレに頼み、ショートブレットを調理部屋に運んでここで食べてもらう事にした
サブレが部屋から出たところで果音にオペラから声がかかる
「詳しいことは大体スフレ、マフィンに聞いただろうが、何か疑問に思っていることなどはないか?」
「疑問…ですか?」
うーん、と頭を捻りながら言葉をひねり出す
「そういえば!私をこちらの世界に連れてこれたってことは帰ることもできるんですか?」
「あぁ、出来るぞ」
「え、そうなんですか」
あっさりと返答をされて驚いて固まってしまう
「聖女の前にも何名か儀式を行ったことがある。そしてそのままこちらに留まるものもいれば帰っていく者もいたぞ」
「か、帰れるんですね…なら私よりも適任者はい…」
いるのではないかと続けようとした途端、マフィンが果音の口を手で覆う
「んん??」
「果音、それは思っても言っちゃだーめ」
「すまんな、それは答えられぬのだ」
「ぷはっ…そうなんですね、わかりました」
「聖女がどうしても帰りたいと思ったとき、また言ってくれ。…それでもいいか?」
伺うように目線を向けてくるオペラには王子の威厳などはなくどこか可愛らしい印象を受けた
そうしている間に、サブレがショートブレットらしき人物を肩に担いで戻ってきた
「ここに降ろしていいのか?」
「大丈夫ですよ」
タルトが席を立ち、空いた椅子に座らせる
前回のサブレのときのように人形のようにピクリとも動かずにいる人物にベイクドチーズケーキと、コーヒーを共に出すと不意に手が動き食べ始めた
がくりと後ろに倒れそうになる男の背中をサブレが支えた
「?!こ、ここは…?!僕は門の前にいたはずでは…!?はっ殿下?!」
混乱をしながら部屋の中をキョロキョロとみている青年は、一言で言うと素朴を絵にかいたようなそばかすのある顔だった。
青ざめている彼にとりあえず落ち着いて貰おうと各々声をかけることから始めたのであった。




