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タクシーの外
どれくらい時間が経っただろうか…。
暗闇を走るタクシーは、急に止まった。
つぐみの体は、前にガクンとつんのめる。
(このおじさん、案外運転あらいなぁ。)
つぐみがそう思ったところで、運転手は言う。
「さあ、お嬢さん。着いたよ。」
「…降りていいの?お金は?」
「君からお金をとろうなんて、思わない。」
中年の運転手は、そう言って笑った。
「ここで待機しているから、気がすんだら戻っておいで。」
タクシーのドアが開いた。
つぐみは恐る恐る、車の外に片足を出した。
外に出ようにも、真っ暗闇で何も見えない。
つぐみは、運転手に助けを求めるような顔をしたが、彼は笑ってうなづいているだけだった。
(えい!どうにでもなれ。)
そう思って、つぐみは車内からポンッと降りる。
(…あれ?)
そこは、暗闇じゃなかった。
場面転換でもしたかのように、昼間の人混みの中に、つぐみはいた。
たぶん、昼間の東京の街だ。
つぐみは、しばらくそこで立ち止まり、どうしようか考えていた。
すると、前からひとりの女性が歩いて来る。
なぜかつぐみには、それが20才の自分であることがわかった。