○脱出
エースはうまい具合に隠れられるようなスペースを見つけ、その場所に私たちは隠れて夜を過ごした。私は聞きたいことが沢山あるのだが、さすがにこの状況でわいわい旅行の時の様な就寝前の他愛もない話をする事など出来ない。大人しく休む事に徹した。
私は横になって休む一方、エースは片足を立てた状態で座りながら休んでおり何となく悪いような気がした。
そんな表情か雰囲気を読み取ってエースは気にしないでと言わんばかりに首を振った。真っ暗で表情は分からなかったが、きっと無表情なのだろう。
慣れ始めていたが夕方、立ちあがる時、やっぱり恥ずかしかったと思った。私妙に照れくさく、複雑な顔をしていたと思う。だが、エースは顔色一つ変えていなかった。年頃の私としてはもう少し照れてもいいのではないかと思う。エースも年頃の男の子なのだからもっと何かあるだろうが。まったく。
軽く睨んだが、その真意はエースには伝わってはいない。だって、首傾げていましたからね。
太陽の眩しさで目を開けると居た筈のエースの姿はなく、自分だけがぽつりと残されていた。敵じゃないと言った傍から、放置ですか。乙女心を分かっていないだけでなくさらに罪を重ねるエースに怒りを通り越して自分に呆れる。
見ず知らずの人間が都合よく自分を助けてくれるわけないか。気を取り直してここから出よう。
私は立ち上がった。
あくびをしながら伸びあがって振り返ると虚ろな目と目が合う。
「……!?」
さっそくピンチ到来。逃げ出そうと身構えるが、兵隊はゆっくりと自分の視界から消えていった。足元に視線を移すと居るのは倒れた兵隊。
普段ならしないが、傍にしゃがんで兵隊をつんつんと指でつついてみる。だが、反応は無し。
「気絶しているだけだから、あんまり刺激与えない方が良いと思いますよ」
手についた埃か何かを払う様にしている青年が立っている。
真っ白な髪の毛と銀色の瞳が朝日に照らされて眩しい。白いパーカーの中に着る黒いTシャツ以外は全体が白っぽい人だった。
一瞬誰だか思考が追い付かない。
「エース……?」
「はい、そうですよ? ……とりあえず。ピア、脱出しましょうか」
そうか、あの時オレンジ色に見えたのは光の色を映していただけか。
はっきり言ってどうでもいい事を私は考えていた。




