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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
5の章 ~海乙女と波乱の貿易都市~
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出会いと別れを繰り返す



  ◇



 ……翌日。


「クレーノ家の方々は全員捕らえました。これで、事態は完全に収束したとみていいでしょう」

 ミレーナ侯爵邸にて。グラたちは事件の顛末を聞いていた。事後処理についてはミレーナ侯爵に丸投げしていたのだ。

「シアナさんについては、完全な被害者ということで話を通しておきました。彼女が咎められることもないでしょう」

「当然よね」

 無論、シアナのフォローも完璧だった。彼女のことを案じていたエーテルも、これで一安心だ。

「それと……グラさんの妹君も探しました」

「ちょっと待て……俺はあんたに、ナッタの名前を教えた覚えはないんだが」

 続けられた報告に、グラは困惑した。ミレーナ侯爵には、妹を探していることは言ったが、名前は伝えていないのだ。探せるはずがない。

「シアナさんから伺いました」

「探してくれるって言ってたから~」

 彼に情報を流したのはシアナだった。彼女には妹の名前を教えていたし、善意からの行動だろう。そう言われれば、グラとしては引き下がるしかない。

「ですが……結論から言って、ナタリーアクトという名前の女性はドコサにいません。滞在したという記録も見つかりませんでした」

「そうか……助かった、礼を言う」

「いえ、今回は私も助けられました。そのお礼も兼ねています」

 結果を聞いて、グラはミレーナ侯爵に感謝した。……今回も空振りではあったが、落胆の色は薄い。寧ろ、探す手間が省けたことを喜ぼうとさえしていた。

「それで、これからどうされるんですか?」

「そうだな……暫くゆっくりしてから、ドコサを発つつもりだ」

 ミレーナ侯爵に今後のことを尋ねられて、グラはそう答えた。……妹がここにいないとはっきりとした以上、本当ならば今すぐにでも出発したいはずだ。それをしないのは、エーテルに配慮したからなのか。彼女が、シアナと一緒の時間を過ごすため、予定を遅らせたのだろう。無論、そんなことは全く匂わせないが。

「そうですか。では、また何か困ったことがあれば遠慮なく相談してください」

「そうさせて頂きます」

 そうして、彼らはミレーナ邸を辞したのだった。



  ◇



「……ふぅ」

 夕方。彼らは温泉に来ていた。一連の事件での疲労を、湯に浸かって癒す。

「今回も、なんとかなったわね……」

「はい。無事にシアナ様を助け出せて、本当に良かったです」

「だな。あんなに魔法を使ったのは生まれて初めてだぜ」

「みんな~、本当にありがと~」

 湯船には水着姿の女子四名。ここは混浴だが、グラは遠慮して男湯に入っている。そんなわけで、少女たちは和気藹々と温泉を楽しんでいる。

「ですが……これで、シアナ様ともお別れになってしまうのは、寂しいです」

「あっ……」

 だが、ハイドラの一言で、その場に重苦しい雰囲気が漂ってしまった。……グラの妹探しも終わり、シアナの事件も解決した今、彼らは次の町に移動するのだ。故に、シアナとはここで別れることとなる。

「大丈夫よ~」

 だが、そんな空気を打ち破ったのは、シアナだった。

「そうね……別に今生の別れってわけじゃないし、生きていればまた会えるわよね」

「そうよ~。ここでさよならしても~、また会えるわ~」

 すると、エーテルも顔を上げて、微笑むようにそう言った。……彼女にとって、シアナは特別な存在といってもいい。この数日間で、そう思えるくらいには親密になれた。だが、そんな彼女との別れも、何一つ悲観する必要はないのだ。生きていれば必ず会える―――もしグラがこの場にいれば、彼は激しく同意しただろう。彼だって、妹と再会するために旅をしているのだから。それを、彼女たちもよく分かっていた。

「そうですね……申し訳ありません。余計なことを言ってしまって」

「気にすんなよ。ハイドラが言わなきゃ、あたしが口走ってたかも知れねぇし」

「そうそう。気を取り直して、今夜は遊び通すわよ!」

「「「お~!」」」

 寂しさを吹き飛ばすように、彼女たちは声を張り上げるのだった。



  ◇



 ……翌日。


「じゃあ、また会いましょう」

「どうかお元気で」

「風邪引くんじゃねぇぞ」

「みんなも元気でね~」

 そして、別れのときがやって来た。関所の前まで、シアナが見送りに来ている。

「あんたまで来てるんだな」

「皆さんにはお世話になりましたから、当然です」

 更には、ミレーナ侯爵までもがこの場にいた。彼も見送りだ。

「次にドコサに来るときは、もっとゆっくり観光するつもりよ。そのときは、色々と案内してもらっていいかしら?」

「勿論よ~」

 再会したときのことを話しながら、エーテルとシアナは握手を交わした。

「じゃあね~!」

「ばいば~い!」

 互いに手を振り合いながら、少女たちは別れるのだった。



「よろしいんですか?」

「何の話かしら~?」

 エーテルたちが去って。残されたシアナとミレーナ侯爵は、彼らが入った関所を、未だに眺め続けていた。

「彼らについて行くという選択肢もあったはずです」

「いいの~。私はどんくさいから~、みんなの迷惑になっちゃうわ~」

 ミレーナ侯爵の言葉を、シアナは首を振って否定した。彼女自身、自分が旅に向いていないことは分かっているのだ。彼らに迷惑を掛けてまで、ついて行くべきではないと判断したのだった。

「それにしても……まさか、海神伝説を曲解しているとは思いませんでした」

「曲解って~……?」

 ふとしたミレーナ侯爵の呟きに、シアナは首を傾げた。ミレーナ侯爵は、彼女に説明を始めた。

「クレーノ家の女子が生贄になるというのは、海神の怒りを静めるためではないんです。乙女の家系から、乙女を消し去る―――海乙女の抹消を目的とした儀式です」

「海乙女って~、何のこと~?」

 話を聞いて、シアナはそんな疑問を漏らす。……今までにも度々出てきた、乙女という単語。しかし、シアナには聞き覚えがなかったようだ。

「魔神の花嫁という存在を生み出すための鍵です。オガーニ王国には六人の乙女が存在していて、クレーノ家が輩出しているのが海乙女です。……乙女は町の支配者の資格であり、手に入れれば町を支配できます。その代わり、魔神の花嫁を復活させてしまうリスクもはらんでいます。クレーノ家では、そのリスクをなくす方法を取りました。女子が生まれた場合は、海が荒れた時期を見計らって、生贄として海に沈めたのです」

 海神伝説はただの口実であると、ミレーナ侯爵は語った。……復活を阻止するために娘を殺し、或いは復活させるために国王が王都民を陵辱する。魔神の花嫁とは、一体どれほどの存在なのだろうか?

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