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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
5の章 ~海乙女と波乱の貿易都市~
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事態は収束し、発散する



  ◇



「分かりました。その場所に兵士を向かわせます」

 ミレーナ侯爵邸にて。グラとハイドラは、発見したギアの場所をミレーナ侯爵に伝えていた。

「情報提供はありがたいのですが……こちらとしては、危険な行動は控えて頂きたかったものです」

「申し訳ありません……ですが、私たちもシアナ様のために動きたかったんです」

 しかし、勝手な行動を咎められて、ハイドラはそう謝罪した。……元々危険は承知の上だったが、それでも、元クレーノ家の人間と鉢合わせる可能性はあったのだ。その場合のことを考えたら、ミレーナ侯爵が非難めいた口調になるのも無理ないだろう。

「……何故、そこまで彼女のためになれるのですか? こう言っては失礼ですが、あなた方と彼女はドコサで知り合ったばかりです。一宿一飯の恩だけで、そこまで出来るものなのですか?」

「うちの連れが、シアナのために出来ることをしたいって言ってるんだ」

 ミレーナ侯爵の問い掛けに答えたのは、グラだった。……そもそも、シアナを助けたいと言い出したのはエーテルだ。無論、その思いは仲間全員のものだったが、やはり動機はエーテルなのである。

「仲間思いなんですね」

「普段は俺の我侭に付き合わせてるんだ。こんなときくらい、あいつの我侭に付き合ったって罰は当たらないさ」

「我侭、ですか……?」

「妹を探しているんだ。生き別れのな」

 グラはそう言って、彼に背を向けた。

「行くぞハイドラ」

「はい。それでは、失礼致します」

 そうして、ハイドラと共にミレーナ侯爵邸を後にする。

「……なるほど。持ちつ持たれつ、というわけですか。ならば、こちらも考えねばなりませんね」

 そんな彼らを、ミレーナ侯爵は感慨深そうに見送るのだった。



「お仕事終了よ~」

 その頃。仕事を終えたシアナは、エーテルたちと共に帰路に着いていた。

「グラたんたちも戻ってる頃だと思うし、お夕飯の買い物をして帰りましょう」

「だな。……うぅ、ずっと座りっぱなしで体痛ぇ」

 今日はずっと大人しくしていたせいなのか、行動派のオクサは体が鈍ってしまった様子。肩をぐるぐる回している。

「まあ、ミレーナ侯爵も動いてくれてるし、数日中には決着するはずよ」

「それまでシアナを守りきればいいわけだよな」

「ごめんなさい~……みんなに迷惑掛けちゃって~」

「何言ってるのよ。私たちが勝手にやってることなんだから、シアナは気にしなくていいわ」

 雑談をしながら、彼女たちは買い物を済ませて、家まで戻ってきた。

「グラたん、ハイドラ、戻ってる?」

「思ったよりも早かったな」

「お帰りなさいませ、皆様」

 グラとハイドラは先に戻っていた。ハイドラが彼女たちのために紅茶を入れてくれる。

「それで、そっちは変わりないか?」

「ええ。そっちは?」

「こっちは進展があった。それも、とびきりのな」

 紅茶が運ばれてきたタイミングで、グラは今日の成果を話し始める。……沈没事故を引き起こしている魔法の発動地点を割り出し、ギアを発見したこと。そして、それをミレーナ侯爵に伝えて、兵士を寄越させたこと。

「じゃあ、もう一安心ってとこかしら?」

「まあ、まだ油断は出来ないがな。少なくとも、今後は沈没事故が起こることもないだろう。ハイドラがギアに細工をしてくれたことだしな」

 ハイドラの手によって、アイスランスのギアは機能不全になっている。あのギアは容易に運べ出せないし、そうしようにも、今頃兵士たちが押収しているだろう。

「とにかく、うまくいってるといいわね」



  ◇



「……ここか」

 夕方、例の洞窟では。ミレーナ侯爵の通報で駆けつけた兵士たちが、アイスランスのギアを発見していた。

「誰もいないようだな……」

「洞窟の奥にも人の姿はありません」

「よし、ならばギアだけでも運び出すぞ。これ以上の被害を出すわけには行かないからな」

 リーダーの兵士が、部下に指示を出す。ギアは大型だったものの、使用時は洞窟から出すためか下部にキャスターが仕込まれており、数人掛かりであれば容易に運び出せた。

「途中、足元が不安定になる場所では魔法で補助しながら運ぶぞ」

「はいっ」

 そうして、運搬は順調かに見えた―――が。

「なっ、海が……!」

「大変ですっ……! 海面が上昇しています……!」

「どういうことだ……!?」

 満潮時には沈む道に差し掛かったところで、急に道が沈み始めたのだ。先程干潮になったばかりなので、潮が満ちるまでにはまだ大分あるはずなのだが……。

「くっ……今なら渡りきれるはずだ。ギアを海に捨てて、撤退するぞ……!」

「はいっ……!」

 仕方ないと、兵士たちは運び出したギアを海に捨てて、沈み行く道を駆け抜けた。……そして、残ったのは、沈みかけのギアだけだった。



「……全く、危ないところでしたね」

 兵士たちが去り、ギアだけが残された。その場所に、複数の人影が現れた。

「ああ。危うく、我が一族の悲願が永遠に成就しないところだった」

「まさか、うちらの存在に気づいた上、ここを特定する奴がいるなんて……あの忌まわしいミレーナの奴か?」

「さあ、それはどうでしょうか……どうにも、今は状況が特殊ですから」

 ギアの元へと歩み寄る男たち。その中には、シアナの親戚もいた。……つまり、彼らが元クレーノ家の面々なのだろう。

「そんなことよりも、早くこいつを運び出さないとな」

「ええ。満ち潮の魔法が効いているうちに、船で運んでしまいましょう」

 兵士たちにギアが発見され、彼らは仕方なく、魔法で兵士たちを妨害した。満ち潮の魔法によって海面を一時的に上昇させ、兵士たちがギアを手放すように仕組んだのだ。

「それはそうと、シアナ嬢はどうなってるんだよ?」

「今のところ、あまり乗り気ではないようですね。お誘いしても、ずっとだんまりでして」

「あんな奴、ちょいと強引にすれば簡単だろうに……」

「それがそうでもないんですよね。意外と芯がしっかりしているというか、中々折れてはくれません。それに、最近は見慣れない連中が付き纏っていますし」

 ギアを引き上げながら、彼らはそんな会話をしていた。……どうやら、エーテルたちの存在は、しっかりと抑止力となっていたようだな。

「だが、そんなことに構っていられる状況でもなくなってしまった」

「ええ。……本当ならば、彼女が自分から協力してくださるのが一番なのですが。この際、仕方ありませんね」

 しかし、今まさに、シアナの身に危険が迫っていた。そのことを知る者は、誰一人としていないのだった。

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