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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
5の章 ~海乙女と波乱の貿易都市~
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感謝して損はない

「それで、今日はどちらへ?」

「そうだな……」

 その頃。グラとハイドラは、事件の調査に出ていた。港付近の道を、北へ歩いている。

「とりあえず、こいつを役に立てないとな。今日中に目星をつける」

 グラは手元の地図を叩きながら、ハイドラの質問に答えた。

「それは?」

「俺とオクサが調査をしたときに作ったんだ。船が沈んだ地点が書いてある。これを使って、船を沈めた魔法の発動地点を割り出す」

 地図には、無数の×印と、日付や時刻が書かれていた。これで、魔法が発動した場所が分かるのだろうか。

「確か、使われた魔法は特定できるよな?」

「はい。恐らくはアイスランスだと思われます」

「魔法の特徴を教えてくれるか?」

「アイスランスは、氷の槍を生成して射出する魔法です。海属性と月属性の複合魔法で、ドコサの貴族であったクレーノ家であれば開発できるはずです。軍事用に開発された魔法で、軍艦へ搭載されたこともあります。主として、海中から放って敵艦を攻撃するために用いられます」

 グラに尋ねられて、ハイドラはすらすらと魔法の詳細を口にしてみせる。彼女がいたエタール家は月属性魔法の開発を行っていたので、なおのこと詳しいのだろう。

「その魔法を使うのに、必要なギアは?」

「個人で扱う場合ならば別ですが、船を沈めるほどのものであれば、やはり軍艦に搭載されているような大型のギアが必要でしょう。ブースターを詰め込んだ専用のギアでなければ、槍のサイズと速度を確保できません」

「となれば、そのギアはそう簡単には運び出せないわけだな」

 アイスランス用のギアは大型であり、持ち運びは困難。となれば、魔法の発動地点にずっと置きっぱなしである可能性が高い。グラはそこに着目したのだ。

「そして、そんなギアを置いて置ける場所は限られる。人気がない場所なのは当然としても、ちゃんと隠しておけて、かつ遠目からでも見つからない場所。そして、船を沈められるポイント。しかも、それは一箇所だけだと仮定すれは、ある程度絞れてくる」

 その条件に当てはまる地点を、グラは地図から割り出していく。

「ここが、一番の候補だな」

「ここ、ですか?」

 そして、ある地点を丸で囲った。入り江の奥で、港からは見えず、そして船を沈められる地点だ。

「ただ……ここに行くのは考え物だな。奴らが潜んでる可能性が高いし、鉢合わせたら面倒だ」

「ですが、実際に行って見なければ、解決は……」

「ああ。……危険を伴うことになるが、それでもついて来てくれるか?」

「……はいっ! お任せください、グラ様!」

 危険なのは承知の上で、それでも自分を頼ってくれるグラに、ハイドラは心強くそう答えるのだった。



  ◇



「……ここだな」

「そのようですね」

 数十分後。グラとハイドラは、例の地点までやってきていた。潮が引いているときだけに現れる道を進み、切り立った崖に出来た道を通ってここまで来た。幸い、道は舗装こそされていなかったが、歩くのに支障はなかったため、ハイドラでも問題なくここまで来れた。

「この穴……この奥か?」

 崖には大きな穴が開いていて、その奥に道が続いている。この洞窟の先ならば、ギアを隠しておけるだろう。

「ハイドラ、灯りを頼む」

「はい」

 ハイドラはギアに点灯のカートリッジをセットして、周囲を照らした。

「足元が滑りやすいから注意しろよ。後、俺に触ると点灯の魔法が消える。その辺も注意しろ」

「分かりました」

 そうして二人は、慎重に洞窟の中へと入っていった。



「……これか」

 洞窟を進んですぐ、彼らは目的のものを発見した。テーブルサイズの鉄塊、奇妙な直方体だ。いくつかのボタンやレバーも取り付けられている。これが例のギアだろう。

「ハイドラ、確認を」

「はい」

 ハイドラはしゃがみ込み、ギアを調べ始める。やがて、ハイドラは顔を上げ、こう言った。

「……間違いありません。これはアイスランス専用のギアです」

「そうか……なら、決まりだな」

 ここにアイスランスのギアがあるということは、元クレーノ家の者達は、ここから船を沈めていたということだろう。

「破壊したいところだが、奴らと鉢合わせる前にずらかりたいな」

「グラ様、少々お待ちを」

 ハイドラはヘアピンを取り出すと、ギアの隙間に差し込んで、動かした。すると、表面の板が外れ、内部が露になる。

「このタイプのギアは、メンテナンスのため、簡単に開けられる場合が多いんです」

「そうなのか」

「はい。尤も、最近のものは専用の鍵を使うので、旧式のギアにしか使えませんが」

 そして、彼女はいくつかのパーツを取り出してから、ギアを元に戻した。

「これでギアは起動しなくなりました。パーツさえ戻せば問題ありませんが、少なくとも調達するまでは船を沈められなくなりました」

「でかしたハイドラ。よし、一度戻って、ミレーナ侯爵にこの場所を伝えるぞ」

「はい」

 そうして彼らは、洞窟から脱出するのだった。



  ◇



「……しくじったな」

 岐路の途中、彼らは立ち往生してしまった。……行きの際、彼らは干潮時だけ現れる道を通ってきた。それが、今はなくなってしまったのだ。調査をしている間に、満潮を迎えてしまったのだろう。

「この様子なら、奴らと鉢合わせることはないだろうが……どうするか」

「グラ様、もしかすれば、何とかなるかもしれません」

 ハイドラはそう言うと、ギアを取り出して、カートリッジを取り替えた。

「……フリーズ」

 彼女が魔法を発動すると、海面が凍り始めた。やがて、沈んだ道が氷によって再度形作られる。

「これで通れます」

「俺が乗っても大丈夫なのか?」

「魔法は既に止まっていますから、問題ないはずです」

 言われて、試しに片足を氷の上に乗せてみるグラ。だが、氷が砕ける気配はなかった。表面だけではなく、内部もしっかりと凍っているのだろう。

「大丈夫みたいだな」

「はい。では、行きましょうか」

「ああ。滑らないように、慎重にな」

 そうして、彼らは氷の道を歩いていく。最後のほうは若干融けて滑りやすくなっていたが、なんとか転ばずに渡りきることが出来る。

「助かった。いつも、ハイドラには助けられてばかりだな」

「いえ、そんなことは……私は、私に出来ることを精一杯こなしているだけです」

 向こう岸について。そう言うグラに、ハイドラは恥ずかしそうに謙遜していた。……今日だけでも、魔法の知識、ギアへの細工、帰り道の確保など、いくつもの活躍をしていたハイドラ。これまでも、彼女には幾度となく助けられていた。

「いつもありがとう、ハイドラ」

「そ、そんな……照れてしまいます」

 グラからの感謝の気持ちに、ハイドラは顔を真っ赤にして俯くのだった。

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