表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
5の章 ~海乙女と波乱の貿易都市~
90/132

人は誰しも欠点を抱えている


  ◇



「あちゃ~。ちょっとやりすぎたわね……」

 温泉から出て。エーテルたちは、グラを介抱していた。……女の子たちに密着され続けた結果、グラはのぼせてしまったのだ。

「グラ様……大丈夫でしょうか?」

「大丈夫よ~。ここの温泉はお湯が熱いから~、慣れてないとのぼせやすいの~」

「ったく、情けねぇな……」

 グラは今、シアナに膝枕をされて眠っていた。……最初、誰がその役をこなすかで揉めていたのだが、空気を読まないシアナがさっさとグラに膝枕してしまったのだ。

「それにしても……今なら、グラたんは眠ってるし、脱がしても殴られないわね」

「エーテル様……どうにも懲りていらっしゃらない様子ですね」

「だって、ハイドラも気にならない? グラたんが半裸で眠ってるのよ? ここはパンツを下ろして、寝込みを襲うところでしょ?」

 しかしエーテルは、未だ水着姿のグラ―――彼の股間部分に視線を注いでいた。……そんなだから、グラたちに拒絶されるんだぞ。

「おいおい、なんで寝込みを襲うんだよ? 殺す気かよ?」

「はい~? エーテルちゃ~ん、そういう物騒なことは~、めっ」

「二人とも、胸は大きいのにそういうことは子供なのね。いい? こういう場合の襲うっていうのは―――」

「……誰が、誰を襲うって?」

「グラ様……!」

 オクサとシアナは彼女の言葉を誤解したようで、エーテルはその意味について説明しようとした。だが、丁度そのタイミングでグラが目を覚ました。

「良かった、目を覚ましたのね」

「チャンスをふいにして残念か?」

「ちっ……」

 エーテルの内心を言い当てながら、グラは起き上がった。

「ったく……悪ふざけも大概にしろよ。下手したら死んでたぞ」

「無礼講でいいじゃない。折角の裸の付き合いなんだから」

「無礼講は相手を死なせてもいいって意味じゃないからな」

 開き直るエーテルに、グラは溜息混じりにそう返すのだった。



  ◇



 ……翌日。


「さてと……宿の確保も出来たし、今日からは存分に観光ね」

「何寝惚けたこと言ってるんだ?」

 朝食の席にて。エーテルの言葉に、グラが突っ込んだ。

「これはナッタを―――妹を探す旅だってことを忘れたのか?」

「覚えてるわよ。でも、そればっかじゃあつまらないじゃない。どうせすぐに見つかるわけじゃないんだし、気長に行きましょ」

 彼の言葉に、エーテルはそう答えた。……そもそも、彼女としてはグラの妹探しはついでである。彼との旅自体を楽しむ(+彼の体)のが主目的なのだから、観光を選ぶのは当然である。

「それなら~、後で町を案内するわよ~」

「ほんと? 助かるわ」

「ただ~、午前中はお仕事だから~、ちょっと待っててね~」

「お仕事は何をされているんですか?」

 話を聞いてそう申し出るシアナに、ハイドラが尋ねる。

「気になるなら~、今から見に来る~? 歓迎するわよ~」



  ◇



「いらっしゃいませ~」

 ウェイターの格好をしたシアナが、やって来た客を席へと案内する。……彼女は喫茶店で働いており、主にウェイターの仕事をこなしているようだ。

「なるほど、接客業だったのね」

「意外、ってほどでもないか。割とよくある職業だろうし」

 そんな彼女の働き振りを、グラたちはテラス席から眺めていた。……シアナの仕事が終わるまで、見学がてらここで時間を潰しているのだ。

「それにしても、いい眺めですね」

「ああ。海を一望だなんて、贅沢じゃねぇか」

 一方、ハイドラとオクサは外の景色を楽しんでいた。喫茶店は海辺に位置しており、テラス席からだと港の端から端まで眺めることが出来る。

「どうかしら~? ここの眺めは~、うちの自慢なの~」

 その会話を聞きつけたのか、シアナが仕事の合間を縫ってそんなことを言いに来た。

「確かに、こんな店はなかなかないだろうな」

「―――あっ!」

 すると、エーテルが何かに気づき、海のほうを指差した。

「見て! あの船が……!」

「あっ……!」

 海を見やると、大きな船が港に入ってくるところだった。だが、その船は徐々に傾きだしていた。

「あれはまさか……例の沈没事故なのか?」

「みたいね……あの様子なら今すぐ沈むってことはなさそうだし、その間に乗組員も脱出できるとは思うけど」

 実際に事故を目の当たりにして、グラたちは戦慄した。……話には聞いていたが、それを自分の目で見るのは衝撃的だった。

「シアナ様? どうされました?」

「だ、大丈夫よ~……ちょっと立ち眩みしちゃっただけだから~」

「いや、どう考えても顔色悪すぎだろ。どうしたんだよ?」

 他の客も沈没事故に気づき、店内が騒然となる中、シアナは顔を真っ青に染めていた。気遣うハイドラたちにはそう答えるものの、足は震えているし、顔色は悪いし、どう見ても通常の状態ではない。体調が悪いとしか思えなかった。

「気分が悪くなったのか?」

「大丈夫だから~……軽い貧血だし~、少し休めばよくなるから~」

「シアナちゃん……!」

 そうこうしていると、店の奥から店長らしき女性が現れ、シアナの元に駆け寄った。

「大丈夫? 暫く奥で休んでて頂戴。何なら早めに上がってもらってもいいし」

「ご、ごめんなさい~……」

「大丈夫よ、仕方ないものね。さ、歩ける?」

 店長はシアナに肩を貸し、彼女を店の奥まで引っ張っていった。どうやら、こうなるのは今日が初めてではないようだな。

「……シアナ様、大丈夫でしょうか?」

「ま、平気だろ。さっきの店長がついてるだろうし」

「ええ。念のため、後で声を掛けたほうがいいとは思うけど……グラたん」

「分かってる。……調べるんだろ? あの沈没事故」

 エーテルに言われて、グラは溜息混じりに応じた。……彼にとって、エーテルはこの中で一番付き合いが長い。彼女の言わんとしていることは、なんとなくだが見当がついたのだ。

「調べるのかよ? そりゃ、何とか出来るならしたほうがいいだろうけどさ……妹探しはどうするんだよ?」

「勿論並行してやるさ。こういう寄り道が最終的にはプラスに繋がることもあるものさ。……それに、ナッタが船に乗ってたらと考えたら、他人事じゃなくなるからな」

「グラ様らしいです」

「全くよね。ほんと、シスコンすぎて将来が心配だわ」

 オクサの疑問に、そう答えるグラ。そんな彼に、ハイドラとエーテルは笑顔で頷くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ