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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
4の章 ~陸乙女と肥沃なる農業都市~
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適材適所といえばいいのか、他力本願といえばいいのか


  ◇



「―――ここも空振りか」

 昼食を終え。残る候補を巡り、グラは溜息交じりにそう漏らした。……さすがに、彼もすぐ見つかるとは思っていない。だが、それでも落胆せずにはいられなかったのだ。

「しゃーねー、一旦戻ろーぜ」

「そうだな」

 仕方がないので、彼らは帰ることにした。街を歩いて、オクサの家へと向かう。

「……ん?」

 その途中、グラは妙な光景を目にした。酒場と思しき場所から、兵士が一人、出てきたのだ。それだけならまだいいが、その店はどうにも営業しているようには見えなかったのだ。

「おい、あの店は?」

「ん? ああ、そこのバーは大分前から閉店してるよ。それがどうかしたか?」

「いや、今、あの店から兵士が出てきたんだが」

「兵士が? なんたってそんなとこに兵士がいるんだよ?」

 グラに言われて、オクサが首を傾げた。空き家に兵士が出入りしている、というのは、確かにおかしな話だった。

「―――まあ、詳しいことはエーテルに調べさせればいい。俺たちは戻るぞ」

「ああ」

 芽生えた疑問は棚上げして、グラたちは再び歩き始めた。



  ◇



「おっかえりー! どう? 成果はあったかしら?」

「なんでそんなにテンション高いんだよ……?」

 オクサの家へと戻ったグラを、何故かハイテンションなエーテルが出迎えた。部屋にハイドラの姿はなく、彼女一人だけのようだった。

「どうせグラたんのことだから、適当に怪しいポイントだけ洗い出して、残りは私にやらせようって考えてるんでしょ? だったら、ここからは私の出番じゃない。気合も入るってもんよ」

「それは……さすがというか。まあ、やる気になってくれてるのは歓迎すべきだな」

 そんな彼女に、グラはそう呟いた。……彼女がモチベーションを上げてくれるのはありがたいのだが、自分が他力本願な性格であると言われているようで、癪だったのだ。とはいえ、エーテルの機嫌を損ねるのもあれだったので、細かい不満はぐっと飲み込むことにする。

「それで、どうなの? オクサと一緒に、色々見てたんでしょ?」

「ああ」

 そしてグラは、今日の成果をエーテルに話す。……酒場の場所と店名、それから開店時間に至るまで、オクサからの情報と、自分たちが足を運んで得た感想を事細かに伝える。無論、帰り際に見かけた兵士のことも話した。

「ふぅん……? 兵士が、閉店したはずの店に出入りしてた―――確かに、ちょっと引っ掛かるわね」

 兵士の件は、エーテルも疑問に思ったようだった。

「お前はどう思う?」

「う~ん……可能性の一つとしては、単純に巡回してたってとこなんだけどね。廃屋って不良の溜まり場になりやすいし、老朽化すると危ないから、兵士が巡回するのはあり得る話だわ。ただ―――ううん。こればっかりは、ちゃんと調査しないと、何ともいえないわね」

 グラの問い掛けに、エーテルは首を振った。何か思い当たる節があるようだが、推論を述べるよりも調査を優先したいようだ。

「じゃあ、ちょっと行って来るわね。ハイドラのこと、お願いね」

「それはいいが、ハイドラはどこにいるんだよ?」

「台所よ。会わなかった? 花嫁修業だって、体力が回復してからはずっと家事を手伝ってるわ」

 そう言い残して、エーテルは部屋を出て行った。これから繁華街へと向かうのだろう。

「……ハイドラの様子でも見に行くか」

 残されたグラは、一抹の不安を覚えながらも、ハイドラの様子を見に行くのだった。




  ◇



「……えっと、残ってるのはここだけね」

 深夜。日付が変わる時間になっても未だに賑わい続ける繁華街を、エーテルは一人で歩いていた。……窃盗団のアジトを突き止めるため、酒場を梯子していたのだ。各所で聞き込みをするなど、グラたちよりも突っ込んだ調査もしていたのだが、現状は成果なしだった。

「グラたんが言ってたことも気になるし、調べておいたほうがいいわね」

 最後に向かったのは、グラから聞いた、閉店したバーだった。ここに、兵士が出入りしていたというのだ。

「……っと、姿を消さないと面倒だわ」

 エーテルは一度裏路地に入り、隠形の魔法で姿を消してから、店の入り口を潜った。……当然ながら、店には灯りが灯っていなかった。しかし、扉に鍵は掛かっておらず、入ろうと思えば誰でも入れる状態だった。

「う~ん……見た感じ、おかしなところはないのよね」

 店内に入り、一通り眺めてみるものの、怪しいところは見受けられない。……彼女自身が思った通り、ただの巡回であったのだろうか?

「んしょ、っと……!」

「っ……!」

 だが、突如聞こえてきた声と物音に、エーテルは硬直した。誰もいないはずの厨房から、男が一人出てきたのだ。……エーテルは隠形で姿を消しているので、勘付かれることはない。それでも、反射的に声を潜めてしまった。

「ふぅ……ったく、毎度のことながら、やりにくいったらないな」

 男はそうぼやきながら、店から出て行った。

「……もう、行ったわね」

 男が去り、エーテルはそっと息を吐いた。……だが、これで手掛かりは掴めた。恐らく、この店には地下室があるのだろう。男はそこから出てきたのだ。状況から、彼女はそう結論付けた。となれば、そこを調べない手はない。

「さてと……それじゃあ行きますか」

 エーテルは厨房に入ると、しゃがんで床に触れた。すると、床板の継ぎ目から、僅かにだが光が漏れていることに気づく。そこに指を掛け、物音を立てないように持ち上げた。

「この辺かしら?」

 そして、物音を立てないように細心の注意を払いながら、中へと忍び込む。

「……なるほど、そういうことね」

 中に入って、エーテルは驚愕した。……地下室は思った以上に広く、地上部分よりも大規模だった。おまけに、ギアによって明るく照らされており、室内はまるで昼のようだ。そんな地下室には、大量の野菜が収容されている。また、野菜だけでなく、それらを乾燥させたり、漬物にするなど、加工品も作っているようである。

「ビンゴ、ってとこかしらね?」

 これは最早、疑う余地などないだろう。―――ここが、窃盗団のアジトなのだ。

「盗んだままじゃあ足がつきやすいからって、態々ここで加工してるみたいね。ご丁寧に照明まで用意して」

 しかも、盗んだ野菜の加工場まで兼ねている。照明用の発光ギアで水分を飛ばして乾燥させたり、塩漬けにすることで、隠蔽だけでなく付加価値の向上、更には体積の縮小によるスペースの節約まで兼ねている。組織掛かりで長年続けていた、というのも頷ける内容である。

「……確認も済んだし、さっさと退散したほうがいいわね」

 アジトを発見して、エーテルはそう呟くのだった。

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