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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
4の章 ~陸乙女と肥沃なる農業都市~
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貴族の関係者多すぎじゃないですか……?



  ◇



「なるほど、王国中を旅しているのか」

「はい。先日まではアシッドにいました」

 夕食になって。グラたちはオクサの家族と食卓を囲んでいた。彼らが旅行者なので、話題は自然と旅の話になった。

「アシッドか。たまに食堂の人たちが、作物を買い付けに来るな」

「でも、あたしらはトレハから出たことないんだよな。やっぱあれか? 他の町はもっと建物とかでいっぱいなのか?」

「そうね。あ、スチレでは自動車が走ってたわよ。ギアを使った乗り物で、凄く速いの」

「じどうしゃ?」

 エーテルはスチレの最先端技術を話していたのだが、どうにも反応が悪い。トレハにはギア製品があまりないので、今一ピンと来ないのだろう。

「セルロはとにかく人が多いです。市場は人手溢れ返っていますし。そういえば、セルロの市場でもトレハ産の作物を扱っていました。しゃきしゃきのレタスがおいしかったです」

「王都でも売ってるわね。おいしいからって、みんな近場のものよりトレハ産を買っちゃうのよね」

「んな遠くでも、うちらの野菜が食べられてるってのも、なんだか不思議だな」

 そして話は、トレハの農作物についてとなった。オガーニ王国の農作物は、各都市でもある程度は生産しているものの、シェアの大半はトレハであった。街道が整備され、鮮度を保ったまま運搬できるようになったのも大きい。

「んで、お前らはこれからどうするんだよ?」

「それについてなんだが、一つ聞きたい。ナタリーアクト、或いはナッタという名前に心当たりはないか?」

「ナッタ? いや、聞き覚えないな」

 オクサに問われて、グラは妹のことについて尋ねてみた。しかし、反応は芳しくなかった。オクサだけでなく、家族のほうも同じだった。

「そいつを探してるのか?」

「ああ。妹なんだ、生き別れのな。少なくとも故郷にいないことははっきりしてるんだが、それ以外に情報がなくてな。だから、王国中を旅しているんだ。とりあえず、現状はトレハが一番可能性があると思うんだが……」

「そうだったのか……」

 だが、事情を話した途端、オクサたちの表情が暗くなった。悲しい、というよりは、気の毒そうな、同情するような表情だった。

「何か、知ってるのか?」

「いや、そういうわけじゃねぇけど……」

「どういうこと?」

 そんな彼らに問い掛けるのだが、どうにも歯切れが悪い。そうやって躊躇いながらも、オクサはこう話した。

「実は、トレハは余所から移ってくる奴が多いんだ。土地は広いし、農作業は人手がいるから仕事にも困らない。慣れないときついかもしれねぇけど、食うもんにも困らないしな。……けど、最近、北の地主が変わったんだよ」

「地主といいますと、貴族でしょうか?」

「ああ。五年くらい前に、北のパーヘ公爵家が代替わりしたんだよ。当主が病死して、跡取りが他にいなかったからって、そいつが次の当主になったんだが……」

「パーヘ公爵家……そういえば、現在のパーヘ公爵家当主は極端な血統主義者で有名ですね」

 オクサから出てきた名前に、ハイドラが反応した。……トレハから遠く離れたセルロにも、その名前は伝わっていたらしい。つくづく、貴族のネットワークは広いものだと思わざるを得ない。

「その、なんだ、血統主義者? というか、極端な余所者嫌いなんだよな、そいつ。だから、余所者に対してやたらと厳しいんだよ。トレハに移って来れないように圧力掛けてきたり、余所から来た奴にやたらと重い年貢を要求したり。南のほうは余所から買い付けに来る奴らが多いのと、そこまであいつらの影響力が強くないから平和なほうだけどな。北のほうだと、余所出身の奴らは殆ど奴隷扱いだって話だ」

「なんだと……!?」

 彼女の話に、グラは驚愕した。……パーヘ公爵家は余所から来た者達に対して圧制を強いている。もし、その中に自分の妹がいたらと思うと、胸の奥から怒りが込み上げてくる。

「しかも、ここ最近は特に酷いな。ほら、王様がなんかやらかして騒いでただろ? あれのせいで完全にやりたい放題なんだよな。兵士たちが睨みを聞かせても知らん顔で、どうにもならねぇし」

「っ……!」

 しかも、その暴挙が自分のせいで勢いづいたと聞かされて、グラは拳を握り締める。……王都での件だって、当然ながら見逃せなかった。国王の所業はパーヘ公爵家に勝るとも劣らないほど卑劣だったのだから、止めないわけにはいかなかった。だから後悔するわけにはいかないのだが―――それでも、妹を苦しめてしまったかもしれないという可能性を前にして、平常心ではいられなかった。

「グラたん、落ち着いて」

「そうです。グラ様のせいではありません」

「エーテル、ハイドラ……」

 だが、そんな彼の手を、二人の少女が握った。それで、グラも冷静さを取り戻せた。

「あー、その、あれだ。そんなに気になるなら、調べてみるか?」

「何……?」

 そんな彼らに申し訳なく思ったのか、オクサはそう申し出た。



  ◇



 ……翌日。


「……それで、何でこんなところまで?」

「言っただろ? お前の妹がどうなってるのか、調べるんだよ」

 オクサの家に一泊した後、グラたちは彼女に案内されて、とある場所まで来ていた。広大な農地の中にぽつりと聳え立つ、レンガ造りの屋敷だ。屋敷に近づくにつれ、その大きさにグラたちは圧倒される。……今までにも王城や貴族の屋敷をいくつも見てきたし、この屋敷もそれほど巨大というわけでもなかった。だが、周りに比較対象となる建物がないせいなのか、近づいていくにつれて徐々に巨大化していくような錯覚に囚われるのだ。ここも、貴族の屋敷だろうか。

「ここは、もしかして……」

「ハイドラ、知ってるのか?」

「はい、恐らくですが……トレハの南東で、屋敷を構えている家といえば、一つしか思い浮かびません」

「さすがはお嬢様、って感じだな」

 オクサは門の前で立ち止まると、一度振り返って、こう言った。

「ここはあたしの親父の実家で、小さい頃から遊びに来てるんだ。ここら辺の地主でもあって、南が平和なのもそのお陰だな」

「で、では、オクサ様は―――」

「ああ。あたしは、ジクロ男爵家当主ヘクスニア・ジクロ・トレハの姪だぜ。どうだ、驚いただろ?」

 彼女の口振りで、ハイドラは何かを察した様子。するとオクサは得意げに胸を反らして、そんなことを言った。……トレハの名を持つ貴族。なんと、彼女はその血縁者だったのだ。

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