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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
4の章 ~陸乙女と肥沃なる農業都市~
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鉄血系ヒロイン(熱しやすく冷めやすいという意味で)


「とりあえず、畑の見学しましょうよ」

 広大な農地に圧倒されていたグラたちだが、エーテルの一言で動き出した。畑の中を進み、適当なところで立ち止まった。

「これ、何かしら?」

「芋だな。村で育ててた」

 エーテルがしゃがんで作物を眺めると、グラは彼女にそう言った。このあたりは芋畑になっているようで、畝からは茎がいくつも顔を出している。

「へー。お芋って、ほんとに地面に埋まってるのね。初めて見たわ」

「はい、私もです」

「さすがに、木になってる、なんて勘違いはしないか」

 エーテルたちの言葉に、グラはそう呟いた。……昔、「町の連中は、芋が木になっていると思っている」という話を行商人から聞いたことがあったのだ。そのことを思い出したらしい。

「私はちゃんと学校でてるけど、そうじゃない女の子たちはそんな勘違いしてるわよ? 「芋は木の実の一種」、「小麦粉は花粉」、「赤ちゃんはキャベツ畑から生えてくる」なんて本気で信じてるし。あ、因みに最後のはハイドラね。私がちゃんと教えてあげたけど」

「エーテル様……!」

 エーテルがそう言うと、ハイドラは顔を真っ赤にして叫んだ。……一体、どういう流れでそんな話になったのか。想像しないほうがいいだろうか?

「あの小父様ったら、ハイドラにちゃんと性教育してなかったみたいなのよね。ま、父親には荷が重過ぎるから、仕方ないんだけど」

「エーテル……止めてやれ。ハイドラが真っ赤になって沸騰しかけてる」

 エーテルにからかわれて、ハイドラは頭から湯気が出そうなほどに赤くなっていた。

「最近少しはマシになったと思ったけど、やっぱりまだまだ初心ね」

「お前には羞恥心という奴が足りなさ過ぎるんだ」

「グラたん……私にだって、羞恥心くらいあるわよ。もしなかったら、そもそも服を着て歩いてないし」

「極端すぎるわ」

 奔放すぎるエーテルに、グラは頭痛を抑えるのに苦労した。……もう慣れてきたとはいえ、彼女の言動に振り回されて、精神的に疲弊してしまうのだ。

「それじゃあ、後学のために、ちょっと触らせてもらいますか」

 グラを論破(?)して、エーテルは畑の見学に戻った。初めて見る芋に興味津々のようで、その葉へと手を伸ばす。

「くぉぉおらぁぁあーーー!」

「……!?」

 だがその直後、何者かが大声を上げて、エーテルに襲い掛かった。

「っ……!」

「うぉっ……!?」

 その襲撃を、グラは咄嗟に木刀を抜いて受け止めた。襲撃者は反動を利用し、バックステップで距離を取って、手にした得物―――鍬を構え直す。

「てめぇら……うちの畑に何しやがる!」

 鍬をグラたちに突き出し、襲撃者の少女はそう叫んだ。……長身で、筋肉質な体型の少女だった。丈が短いタンクトップにショートパンツと、露出が多い格好で、そこから覗いている肢体は見苦しくない程度に筋肉がついている。日焼けのためか肌がやや黒くなっているものの、それが逆に健康美を醸し出している。

「さては盗人か!? うちの畑に盗みに入るとは、いい度胸してるじゃねぇか!」

 少女は、その短い赤毛を揺らし、綺麗に整った容貌を憤怒に染めて、再びグラたちに襲い掛かってきた。

「落ち着け、誤解だ」

「何が誤解だ! 泥棒の言うことなんか信用できるか!」

 鍬を木刀で受け止めながら説得を試みるグラだが、少女は頭に血が上っていてまともに取り合わない。

「この阿呆が手を伸ばしたのはちょっと触りたかったからで、決して盗むつもりはなかったんだ」

「うるせぇ! 木刀こんなもんまで用意しといて何をほざきやがる!」

 更には、グラが木刀を装備していることも、彼女の不信感を煽る原因となっていた。やがて、グラの木刀が徐々に押し負けてしまう。

「手荒にはしたくないが……仕方あるまい」

「うぉおっ……!?」

 グラは溜息を吐くと、木刀を握る腕に力を込めた。そして少女を押し返すと、鍬を跳ね飛ばそうとする。

「このっ……!」

「はっ……!」

 鍬を持ち上げさせられ、体勢を崩された少女は、強引に鍬を振り下ろそうとした。だが、その隙を突いて、グラは彼女の懐に潜り込んでいた。

「はぁっ……!」

「ぐぉっ……!」

 そして、その腹に木刀を叩き込んだ。強烈な一撃を受け、少女がよろめく。

「うぉ……らぁーーー!」

 だが、彼女は気合で体勢を立て直した。鍬を地面に突き刺し、グラを睨みつける。

「へっ、やるじゃねぇか……こちとら喧嘩では負けたことがなかったんだけどな、盗人の割に強いじゃねぇか」

「だから誤解だ。畑に盗みに入るほど、食事には困っていない」

「けど、そこの女がうちの芋に手を伸ばしてたじゃねぇか」

「エーテル、ちゃんと謝れ。これ以上拗れると面倒だ」

 強敵との戦いが楽しかったのか、少女は不敵に笑う。だが、未だに誤解が解けていない。なのでグラは、エーテルに謝罪するよう指示した。

「ええ……その、ごめんなさい。芋が生えてるところなんて初めて見たから、つい触りたくなっちゃって」

「お、おぅ……」

 エーテルも同感だったのか、彼女は素直に謝罪した。少女は戸惑いながらも、その謝罪を受け入れる。……楽しさのせいで怒りが収まったのか、エーテルが嘘を吐いていないと分かってもらえたようだ。或いは、謝られるとそれ以上怒れない性格なのかもしれない。

「ったくよぉ……そういう紛らわしいことするなよな」

「それについては謝るしかないんだが、そっちこそいきなり襲ってくることないだろ」

「畑泥棒に慈悲なんてあるもんか」

 それでもなお、すっきりしない様子の少女。確認もせずに襲撃したことをグラに窘められるも、その件に関しては謝罪するつもりはない模様。

「まあ、自分が育ててきた作物を盗まれそうになったんだから、頭に血が上るのも無理ないが、次からは鍬で襲い掛かるのは止めてくれ。俺じゃなかったら、下手すれば死んでる」

「そういやあんた、すっげー強かったな。得物ありだからって、ここまでやる奴は初めてだぜ」

「これでも多少は修羅場を潜ってきてるからな」

 少女に賞賛され、グラは嘆息しながらそう答えた。……これまで彼は、少なからず戦ってきた。キレートの件だけでなく、エーテルと出会う前にも悪人を成敗してきたのだ。今更農家の娘に襲われたくらいでどうにかなるわけがなかった。

「ははっ、面白いなあんた。あたしはオクサ。あんたは?」

「グラリアクトだ」

「グラリ……なんだって?」

「長かったらグラでいい。そこの二人もそう呼んでる」

「おう、よろしくな、グラ」

 そして少女―――オクサと自己紹介をして、彼らは和解したのだった。

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