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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
4の章 ~陸乙女と肥沃なる農業都市~
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故郷はいずこ


  ◇



 ……翌日。グラたちは宿場町を出て、トレハへと向かった。


「辛かったらちゃんと言えよ?」

「はい。昨日のようなヘマはしません」

 グラに言われて、ハイドラは元気にそう答えた。……昨日の疲労は完全に消えたようで、彼女の足取りは軽かった。後は無理さえしなければ大丈夫だろう。

「それにしても、随分と緑豊かになったわね」

 一方のエーテルは、辺りを見回しながらそう言った。……アシッドは鉱山都市であったため、岩肌が剥き出しの状態であった。しかし、宿場町に着いた頃には、周辺には緑が見え始めていた。道の隣には草原が広がり、或いは木々が生い茂るなど、トレハへ向かうにつれて、その割合は大きくなっていく。

「トレハは肥沃な大地を利用した農業都市ですから、その周辺も植物が育ちやすいようですね」

「自然が豊富なのはいいんだけど、虫が多そうなのがちょっとね……」

「あぁ……確かに、そうですね」

 エーテルの言葉に、ハイドラは同調するように顔を顰めた。緑が多いということは、当然虫も多いということ。それを想像して辟易しているのだ。

「グラたんの田舎はどうだったの?」

「虫か? 確かに多かったな。羽虫なんかは当然として、害虫も多い。油断すると畑の作物が虫食いだらけになるから、こまめに駆除するんだ。俺も手伝わされた」

「うわぁ……」

 グラの話を聞いて、エーテルは身震いした。自分もそれを手伝わされた気分になったのだろうか。

「グラ様が生まれ育った町のこと、もっと聞きたいです」

「町ってほどでかくはないけどな。村だ、村」

 ハイドラの要望を受けて、グラは村のことを話し始めた。

「あの村は、魔神を隔離する場所だったから、当然ながら殆どは魔神か、その子供だったな。長老の話では、魔神を隔離するために貧乏くじを引かされたってだけで、元々の住民は魔神じゃなかったらしいが」

「そうなんだ」

「村の外周は塀で囲まれていて、勝手に抜け出したら死刑ものだって脅かされたな。ま、そのせいで抜け出したのはここ数十年で俺だけみたいだが」

 魔神が村に隔離されるのは、ギアが与えられる五歳のときである。その時分では塀を乗り越えることなど出来ないし、乗り越えれば死刑と言い聞かされて育てば、滅多なことでは抜け出そうとはしない。尤も、グラの場合はその滅多ではなかったようだが。

「村ではみんな畑で作業するか、小さい子供の面倒を見るかだったな。自給自足が基本で、日用品は行商人が持ってきてくれるが、食料は自分たちで作るしかなかった」

「じゃあ、トレハみたいに農業してるってこと?」

「規模で言えば遠く及ばないだろうがな」

 村での自給自足と都市規模での農業を同一視は出来ないが、根本的にやっていることは変わらなかった。

「村はどれくらいの人がいたんですか?」

「百人ほどだな。長老の話では結構多いらしいが、体感的にはそれほどだな。村の全員と顔見知りだし」

「じゃあ、歳の近い女の子とかもいたの?」

「五人はいたな。同年代の男が俺ともう一人しかいなかったから、どっちが誰を嫁にするかで大人たちが騒いでいたな。……尤も、俺は最初から村を抜け出すつもりだったからな。その気はなかったんだが」

 村を思い出して、グラの口調は自然と穏やかに、寂しげになっていく。……抜け出すつもりだったとはいえ、長い間、そこで育ってきたのだ。愛着もあるのだろう。郷愁の念がないわけではなかった。

「じゃあ、グラたんは故郷の女の子たちに期待させるだけさせて、そのまま責任も取らずに捨ててきたわけね」

「人聞きの悪いことを言うな」

「そうですエーテル様。グラ様はエーテル様と違って、そんな無責任なことはしません」

「ちょ、ちょっと待ってハイドラ。それってつまり、私が無責任だってこと?」

「違うのか?」

 だが、エーテルの台詞に突っ込んで、グラはいつもの調子を取り戻す。……彼女が気を利かせたのだろうが、それには触れないでおいた。

「まあ、今の生活は悪くないな。後はナッタを見つければ、完璧なんだが」

「じゃあ、気合入れて探さないとね」

「はい。私も微力ながら、協力致します」

 気持ちを切り替え、彼らはトレハを目指すのだった。



  ◇



 ……夕方。


「やっとか……」

「はい。ですが、エーテル様はまだのようですね」

 半日歩いて、彼らはトレハへと到着した。だが、入場審査で思った以上に時間を食ってしまった。……他の町ではここまで時間を取られたことはないのだが、ここでは何故か数時間も待たされたのだ。

「おまたー」

 そうして、エーテルも合流した。彼女も大分待たされたようだな。

「いやー、こんな放置プレイをされるとは思ってなかったわ。何か問題でもあったのかと思ったわよ」

「こっちは冷や冷やしたぞ」

 へらへらとするエーテルに、グラは溜息混じりにそう言った。……グラのギアは、エーテルが彼の身分を偽装するために製造したものだ。万が一、それがばれたらと思うと、気が気ではないのだ。

「それはそれとして、折角トレハに来たんだから、畑の見学に行きましょう」

「虫はいいのか?」

「え? う、うん……べ、別に、見てるだけなら害はないし、見つけたら即逃げればいいだけだし、大丈夫よ、多分」

 グラの突っ込みにたじろきながらも、エーテルはそう提案した。そうして彼らは、畑のほうへと向かって歩く。……ゲートの近くは繁華街であったが、そこを抜ければ辺り一面が農場になっている。特に立ち入り制限もないので、見学することも容易だった。

「なら行くか。精々眺めるだけになるだろうが」

「ええ」

「はい」

 そうして彼らは繁華街を北へと進んでいく。繁華街は予想以上に大規模であったが、南北方向には短いようで、すぐに抜けることが出来た。

「……でかいな」

「……ええ」

「……はい」

 畑に到着して。その広さに、彼らは言葉も出なかった。……見渡す限りの地平線。それが彼らの抱いた感想だった。背後に広がる繁華街を除いて、地平線が一望できる。

「これを探して回るのは、気が遠くなりそうだな……」

「同感ね……」

「はい……ですが」

 広大な大地に気が遠くなるグラたち。だが、ハイドラは微笑みながらこう言った。

「どれだけの時間が掛かろうとも、私はグラ様の力になり続けます」

「……ああ。頼りにしているぞ」

 彼女の言葉に、グラは静かに頷いた。

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