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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
4の章 ~陸乙女と肥沃なる農業都市~
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R18じゃないので、この辺で勘弁してください

「……ふぅ」

 その頃、グラは。部屋のベッドに腰掛け、そっと息を吐いていた。……妹探しが振り出しに戻り、仕切り直しとしてトレハへと向かうことにした。だが、果たしてそれは正解なのか、グラは悩んでいた。アシッドにはいないだろうということだったが、それでも捜索範囲は依然として広い。何せ、「絶対にここにはいない」と断言できる場所が少ないのだ。マレイーナの証言からアシッドと、エーテルが住民票を確認した王都は除外できるとしても、オガーニ王国には未だ六都市が残っている。セルロやスチレなど、今までに訪れた都市であっても、隅々まで調べたわけではない。もしかしたら、それらの中に、妹がいるのではないか。或いは、その間にある宿場町にいるのか。そう思うと、気が遠くなる。

「まあ、ぼちぼち探すしかないんだけどな」

 元々、妹探しの旅が、一朝一夕で終わるとは思っていない。一年、いや、下手したら数年以上の歳月を費やし、それでも見つからない可能性だってある。寧ろ、今のように場当たり的な探し方では、見つかるほうが奇跡と言えなくもない。それに、彼女は既に十八―――この国であれば、既婚者であってもおかしくない年齢だ。今更生き別れの兄と再会したところで、彼女の生活を壊してしまうかもしれない。自分としては、妹に一目会えればそれでいいのだが、実際に妹を前にした状態で、自分を抑えられる自信はなかった。

「あの、グラ様……よろしいでしょうか?」

「ハイドラか? いいぞ」

「失礼します」

 そんなネガティブ思考に陥っていると、部屋にハイドラが訪ねてきた。……これがエーテルであれば、彼は決して部屋に入れなかっただろう。そもそも、彼女の場合は勝手に入ってくるが。

「どうしたんだ? またエーテルが馬鹿やらかしたのか?」

「あの……グラ様、お願いがあるのですが」

「何だ? 言ってみろ」

 普段、あまり我侭を言わないハイドラが、自分からそう言い出した。故にグラは、折角だからと、彼女の願いを尋ねた。そして、できることならば、それを叶えてやりたいとも思った。

「―――抱いて、ください」

「……何?」

 だが、さすがにそんなことを言われるとは想定していなかっただろう。グラは面食らい、まともに反応できないでいた。

「グラ様……私は、グラ様の女になりたいんです。一番にして欲しいとは言いません。結婚しろとも言いません。ですから……どうかご慈悲を」

「ハイドラ、落ち着け」

「私には、グラ様しかないんです……」

 涙を目に浮かべ、ハイドラはそう訴えた。グラが宥めるも彼女は聞かず、ドレスのボタンに手を掛け始めた。

「ハイドラ、止めろ」

「……私はずるい女です」

 胸をはだけたところで手を掴まれ、ハイドラはぽつりと漏らした。

「グラ様が、こうして迫られれば困ってしまうことも分かっています。そして、本気で迫られれば抵抗できないことも。ですが……私は、それでも、グラ様の温もりを感じたいんです」

 ただひたすらに、グラに思いを伝えるハイドラ。そう言われて、グラの手も力が弱まってしまう。

「それとも、私のような女はお嫌いですか?」

「……確かに、それはずるいな」

 ハイドラの問い掛けに、グラはそう答えた。……無論、グラが彼女のことを嫌うわけがない。だからこそ、彼はハイドラの思いに応えざるを得ないのだ。

「はい。私はずるい女です。グラ様のご寵愛を受け取るためならば、どんなことでもしますから」

「……ハイドラ」

「あっ……」

 グラはハイドラの肩に手を置き、彼女を抱き寄せた。そして、その耳元でそっと囁く。

「……今は、これで勘弁してくれないか?」

「え……?」

 だがそれは、愛の言葉ではなかった。

「お前に対して、不誠実なことをしているのは分かっている。だが、俺にはやるべきことがある。ナッタを―――妹を、見つけ出す。それまで、待ってくれないか?」

 グラにとって、最優先なのは妹の捜索だ。それまでは、恋愛ごとに構ってはいられないのだ。だからこそ、彼は、断腸の思いでハイドラを突き放す。最大限の謝罪を込めて。

「ナッタを見つけたら、ちゃんと答えを出す。だから、それまで待って欲しい」

「……はい。待ってます。いつまでも」

「自分で言っておいてあれだが……いいのか? 必ずお前を選ぶとは限らないんだぞ?」

「構いません。選ばれるように、努力するだけですから」

 身勝手ともいえるグラの願いに、ハイドラは健気にそう答える。

「ですが、その代わりに一つだけ」

「何だ?」

「暫く、このままでいさせてください」

 グラの胸に顔を埋めながらそう言う彼女に、彼は手に込める力を強めることで応えた。

「グラ様……愛しています。例え、あなたが誰のものになろうと、我が身はあなたのために」

 一途な彼女に何もしてやれない自分が歯痒くて。けれど、それを口にするのは憚られた。故にグラは、彼女に自分の温もりを与え続けるのみだった。



  ◇



「……すぅ」

「……眠ってしまったようだな」

 あれから暫くして。ハイドラはグラに抱えられて、眠ってしまった。安心してしまったのだろうか。

「……それで、いつまでそこにいるつもりだ?」

「あら、ばれちゃってたのね」

 グラが声を掛けると、エーテルが部屋に入ってきた。ドアの前にいたようだな。

「魔法を使って隠れてるのならば無理だが、普通にしてればさすがに分かる」

「ふーん。それはそうと、随分と甲斐性のない対応してたみたいね」

「どうせお前が焚き付けたんだろ?」

「まあね」

 グラに追求されて、エーテルはあっさりと認めた。彼女は軽いノリだったが、グラとしては堪ったものではない。

「あまりハイドラに無理をさせるなよ」

「……それ、本人が起きてるときに言っちゃ駄目よ? ハイドラは、グラたんのために私の挑発に乗ったんだから」

「俺のため?」

 エーテルから、彼女を焚き付けた際の状況を聞いた。……グラも所詮は男、女に手を出さずにはいられないと言って、ハイドラはそれが間違いであることを証明するため、グラに夜這いを仕掛けたのだ。

「そんなことがあったのか」

「ま、ハイドラは寧ろ私の言う通りだったほうが良かったんだろうけど……結局、グラたんは甲斐性なしの無責任男だったってことね。賭けはハイドラの勝ちだわ」

「いくらなんでも言いすぎだ」

 目論見が外れて不機嫌なエーテルに、グラは批難の声を上げた。自分としては精一杯の誠意を見せたつもりなのだが、それを甲斐性なしの無責任と呼ばれるのは不本意だった。

「そういうわけだから、私は戻るわね。ハイドラが起きたら、ちゃんと可愛がってあげるのよ」

「頭くらいなら撫でてやる」

「言うと思った」

 そうして、エーテルは部屋を出て行った。残されたグラは、ハイドラが起きるまでの間、彼女の温もりを感じ続けたのだった。

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