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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
3の章 ~星乙女と虚無の鉱山都市~
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新ヒロインは元気系



  ◇



「こ、ここです……」

 スルホンに案内されてやって来たのは、北東地区にある民家の一つ。ここがスルホンの実家だ。石の煉瓦を積み重ねて造られた家屋は、この町では平均的な大きさとデザインだった。

「それで、例のお婆さんってのはどこに―――」

「ちょっとグラたん、それはさすがにせっかちすぎるわよ。まずはスルホンの家族にご挨拶でしょ?」

「うっ……まさかエーテルに常識を諭されるとは」

「ほんとに失礼すぎるわよっ!」

 早速例のお婆さんとやらに会おうとするグラだが、エーテルに諭されてしまった。そのことで本気で落ち込む彼に、エーテルは叫ぶように突っ込む。

「ど、どうぞ……」

 というわけで、スルホンの実家にお邪魔することに。



「た、ただいま」

「あら? スルホンじゃない。帰って来たの?」

 帰って来たスルホンを出迎えたのは、彼女の母親だった。スルホンと同じ亜麻色の髪を一つに纏めた母親は―――当然ではあるが―――彼女とそっくりだった。スルホンが成長すればこうなるのだろうと、容易に想像ができる。

「う、うん……その、色々あって、ちょっとだけ」

 母親相手なのに緊張気味なのは、スチレでのことがあったからか。彼女のことだから、心配を掛けまいとスチレでのことは黙っているつもりで、しかもそのことに罪悪感がある、といったところか。

「それで、えっと、その……お客さん。連れて来たんだけど」

「あら?」

 そんな心情を紛らわすかのように、スルホンはグラたちを母親に紹介していく。

「えっと、スチレで出会った人で、色々お世話になったのと、こっちに用事があるから、案内してきたの」

「あらあら、そうだったの。―――皆さん、娘がお世話になったみたいで、ありがとうございますね」

 スルホンから話を聞いて、母親はグラたちに頭を下げる。そして彼らを座らせ、茶を出して持て成す。

「改めまして、スルホンの母です」

「グラリアクトだ」

「エーテルです」

「ハイドラと申します」

 自己紹介も一通り済ませ、彼らは詳しい事情を話す。……グラの妹がアシッドにいるかもしれないこと、その名をこの近所に住む老婆が口にしていたことなどだ。

「うーん……マレイーナ婆さんなら、今はトレハのほうへ出掛けてるのよね」

 例の老婆―――マレイーナというらしい―――は、現在アシッドにはいないとのこと。彼女が今いるのは、農業都市トレハだ。……農業都市トレハは、大陸北部から北西部を覆う巨大都市だ。農業都市の名に違わず、その広大な土地を利用して農作物を生産している。その生産量は、大陸で消費される作物の七割を占めているとも言われている程だ。

「マレイーナ婆さんは食堂の食材を買い付けるために、しょっちゅうトレハに出掛けてるから……戻ってくるにはまだ掛かるわよ?」

「そう、なんだ……」

 それを聞いて、スルホンは表情を暗くする。折角グラの役に立てると思っていたのに、肝心の老婆がいないので話にならないからな。

「それじゃあ、ナッタについて聞いたことは?」

「それなんだけど、マレイーナ婆さんは北西地区の出身なのよね。こっちに越してきたのは十年位前だし、それより前のことだったら分からないわ。その名前も聞き覚えがないし」

 ならば母親のほうが何か知っていないかと思うグラだったが、こちらも空振り。……これは、そのマレイーナという老婆が戻るまで待ったほうが良さそうだな。

「ごめんくださ~い」

 すると、誰かが家を訪ねて来た。玄関のドアを開け、一人の少女が姿を現す。

「あら、カルバちゃん。もう時間?」

「もう少ししたらかな。……って、あれ? もしかしてスルホンちゃん?」

「あ、カルバちゃん」

 訪ねて来た少女は、スルホンたちと親しそうだ。……焦げ茶色のショートヘアを二つに縛り、三角巾を被った少女だ。歳はグラたちと然程変わらないように見える。屈託なく笑う表情は、その整った相貌も相まって、非常に魅力的だった。その平均的な体躯を覆っているエプロンを見るに、先程まで料理をしていたのだろうか?

「ん? もしかして、お客さん?」

「あ、うん、ちょっとね。スチレでお世話になって……」

 カルバという少女は、グラたちに気づいたようだ。無邪気な足取りで、彼らに近づいてくる。

「ふぅん? そうなんだ。あ、私はカルバ。近くの食堂で働いてるの。よろしくね」

「ああ、よろしく」

 そうして、カルバとも自己紹介をしていくグラたち。……なるほど、食堂で働いているからエプロンを着用しているのか。三角巾もそのためだな。

「へぇー、王都のほうから来たんだ。しかも、セルロとスチレを回って」

「うん。尤も、ハイドラはセルロからだけど」

「セルロに、王都かぁー。私、どっちも行ったことないから、一度行ってみたいなー」

 そしてカルバは、早速エーテルとお喋りしている。……エーテルは同性の友達が少ないらしいが、案外すんなり仲良くなるよな。ハイドラの時もそうだったし。やっぱり男遊びが過ぎるせいなのか。

「あ、そうだ。うちの食堂来る? お昼ご飯まだだったらご馳走するよー」

「そうねー。スルホンのお友達なんだし、それくらいはしないといけないわよね」

 かと思えば、カルバは彼らを食事に誘った。スルホンの母もそれに賛成する。

「確かにお昼はまだだから、助かるけど……」

「いいのでしょうか? ご馳走になっても」

 その誘いに、奥ゆかしいところがあるハイドラは当然として、エーテルまでもが遠慮がちな反応を示す。……エーテルの場合、どちらかというとカルバの態度に押されている様子なのだがな。

「遠慮しなくていいよー」

「……まあ、食わせてくれるんだったら、断る理由もないか」

 しかし、グラには遠慮などないようだった。折角の厚意なのだから、断るのも悪いような気がしていたのだ。

「うんうんー。ほらほらー、早く行こっ」

「あっ……!」

「えっ……!」

 それ故に、カルバはグラの手を引いて、食堂まで連れて行こうとする。……だが、彼女がグラの腕を抱き抱えるように引っ張っているのを見て、エーテルもハイドラも動揺している。

「こ、この子……もしかして」

「き、気のせい、ですよね……」

「ん? どうした?」

「なんでもないわよグラたん」

「そ、そうです、平気ですから……!」

「?」

 カルバの行動に、どことなく不穏なものを感じた二人。果たしてそれは、杞憂なのか、それとも―――

「カ、カルバちゃん……大丈夫、かな?」

 そしてスルホンは、彼女たちとは別の理由で心配になるのだった。……その理由は後程。

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